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2017年6月7日水曜日

(896) 鎌倉時代の仏教(三) 栄西・道元・日蓮 / 仏教と儒教(6)


 鎌倉時代には、中国の影響を受けて禅宗がさかんになってくる。栄西の臨済宗と道元の曹洞宗が成立し、武家などを中心に広まり、また墨絵や茶道等さまざまな文化を生み出していった。

 特に道元は『正法眼蔵』などの著作を残し、「身心脱落・脱落身心」という悟り体験の立場に立って独自の世界観を描いている。

 一方、日蓮は末世の日本においては、為政者が『法華経』によることによって国家・社会は正常・安穏になることを激しく訴えた。最澄の教えを独自に磨き上げて新たな教理を展開したが、その核心は、天台思想の最高と目される一念三千を証する歓心が、『法華経』の題目を唱える唱題に実現するとしたことにある。

 これら鎌倉時代でもやや後に現れた、日本仏教独特の思想内容を理解することを目標とする。

 

【構成】

 日本の禅宗
1-1 臨済禅の世界

 道元の思想
2-1 身心脱落の悟り
2-2 修証一等の禅

 日蓮の思想
3-1 日蓮の著作と思想
3-2 『観心本尊抄』の思想

 

<各論>

 日本の禅宗
 日本の禅宗には、現在、次の三宗があり、いずれも中国にその源流があるものである。

   臨済宗
 栄西 … 大応国師、大燈国師、関山禅師 … 白隠
 公案修行を特徴としている
 専門僧堂として、京都の建仁寺、南禅寺、天龍寺、大徳寺、妙心寺、等々、
  鎌倉の建長寺、円覚寺、さらに地方の諸寺がある

   曹洞宗
 道元 … 瑩山紹瑾
 只管打坐を標榜している
 永平寺と総持寺の二大本山の制を採っている

   黄檗宗(今日では臨済宗と連携しつつ活動している)
 隠元
 禅浄双修の風も有するなど独特なものがある
 宇治の万福寺が本山である

 
1-1 臨済禅の世界

 現在中心になっている禅は、いわゆる看話禅の系統であり、公案を用いて修行していくものである。公案とは、師家(専門僧堂=修行道場において、最高の指導者として修行者を導く老師)が修行者に与える問題であり、多くは古来の禅問答の意旨のありかを問うものである。

 

 道元の思想

 道元は14歳にして「本来、仏であるなら、どうしてあらためて発心・修行したりするのか」との根本的な疑問を持つに至った。以後、ひたすらこの問題の解決に向けて、精力的に行動し、25歳にして悟りをえることになった。

 
2-1 身心脱落の悟り

次の説明が分かりやすいので引用する。

===== 引用はじめ
「身心脱落」とは

道元の用語で、体も心も一切の束縛から解き放たれるということです。道元が宋の如浄禅師のもとで修行し、それによって身心脱落することで、悟りの印可証明を得たとされています。

 道元が中国の景徳寺において如浄禅師のもとで修行をしている時の話です。夜の坐禅に眠ってしまった僧を如浄が叱りました。その言葉を聴いた道元は即座に悟りを得て、夜明けに如浄の部屋に行き、焼香礼拝します。如浄がなぜかと問うと、道元は「身心脱落しました」と答えました。すると如浄は「身心脱落、脱落身心」と言い、道元の悟りの境地を賞賛したということです。
===== 引用おわり
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1279288617

 
2-2 修証一等の禅

 只管打座の立場の背景には、修行はそのまま悟りそのものであるという自覚がある。修証一等の教えとは、修行と悟りは一つであるという思想である。坐禅は修証一等であるがゆえに、悟ったら終わりというものでない。

 

 日蓮の思想

 30歳の頃、法華経こそが最勝であるとの考えを固めるに至ったと推測される。36歳の頃、日本が混乱に陥っているのは、正法を忘れ去って邪宗に帰しているからだとの確信を得た。


3-1 日蓮の著作と思想

 『立正安国論』『開目抄』『観心本尊抄』を三大部といい、これに『撰時抄』『報恩抄』を加えて五大部という。『立正安国論』で、法華経に基づく政治を実践する以外にこの世の救済はありえないとした。『開目抄』は「人開顕」の書といわれ、日蓮が末法時代の真の救済者であるとの立場を明確にしようとした。『観心本尊抄』は「法開顕」の書といわれ、日蓮の教義の根本となる書である。
 

3-2 『観心本尊抄』の思想

 『観心本尊抄』は日蓮の主著であり、観心こそが日蓮にとっての仏道の究極である。観心とは、自己の心に地獄界から仏界までの十界が具わっていること、ひいては自己の一念に三千が具わっている見ることだという。

 

引用
竹村牧男、「第六章 鎌倉時代の仏教」(三)栄西・道元・日蓮
竹村牧男・高島元洋編、仏教と儒教~日本人の心を形成してきたもの~、放送大学教材(2013)

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