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2017年5月6日土曜日

(864) 曹操 乱世のリーダーの条件 / 陳寿『三国志』(2)


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~ 『100分で名著』 58() 22:25 – 22:50 Eテレ 放映 ~

 
===== 引用はじめ

乱世の姦雄、曹操が天下取りへ

  献帝を擁立して暴政をふるった董卓が暗殺されたあと、天下取りに最も近付いたのは袁紹だった。

  一方、許に献帝を迎えた曹操は、皇帝の権威を背景に群雄らの人事権を握り、自身も袁紹より上位の官職を手にするとともに、河南(黄河の南側の地域)に拠点を拡大していた。

  その勢力を危険視した袁紹は、曹操軍の十倍とも言われる兵力を率い、許を目指して進軍。

  これを知った曹操は、先制攻撃を仕掛けるべく本拠地・許から北に向かった。

  この両軍が本格的にぶつかったのが、200年の「官渡の戦い」である。

  官渡は黄河の南に位置する、許都防衛の最終ライン。

  曹操軍は、はじめ兵力差から苦戦を強いられるが、荀彧らの情報収集力・分析力を駆使して奇跡の勝利を手にする。

  袁紹に代わる、新たな天下取りの第一人者の登場である。

  勢いに乗る曹操は、こののち袁紹の支配下にあった河北(黄河の北側地域)を次々に平定。

  これは黄河の中・下流域を天下の中心(中原)と考える古代中国の世界観からすると、ほぼ天下を取ったに等しい偉業であった。

  曹操が次に目指すのは、中原の南。

  江東の揚州では、孫権の勢力が拡大・独立しつつあった――。

===== 引用おわり

 

小見出しを一通り洗い出すと次のようになる(番号をふった)

(1)  祖父の大いなる遺産

(2)  「猛政」の実践

(3)  曹操の台頭と三つの施策

(4)  官渡の戦い――天下分け目の戦い

(5)  運動戦と陣地戦

(6)  名士の本領――荀彧の四点比較

(7)  漢解体への挑戦

(8)  英雄か姦雄か

 

<各論>

(1)  祖父の大いなる遺産

曹操は曹騰という、非常に有力な宦官の孫(養子の子)だった。曹操は、経済的な遺産のみならず、人脈という大きな遺産を手に入れた。その人脈を通じて、モデルとなった橋玄との出会い、世評、新しい人脈を獲得し、また、自身が名士社会の仲間入りできた。

 
(2)  「猛政」の実践

洛陽北部尉の任に就いた曹操は、権勢の有無に関わらず、法を犯した者を厳罰に処し、悪質な者は杖で叩き殺すなど、「猛政」を展開した。また、青洲済南国の国相として赴任すると、汚職の横行する様を見て管轄下の県の長官の八割を追放、ここでも「猛政」を行って綱紀を粛正した。

 
(3)  曹操の台頭と三つの施策

曹操の躍進の背景には主に三つの要素があった。第一に、曹操軍の主要部隊・青洲兵を獲得したこと。第二に、献帝を保護し擁立したこと。第三に、屯田制を実施し軍勢を動かすための経済力を確保したこと。

 
(4)  官渡の戦い――天下分け目の戦い

黄河を境に袁紹と曹操が中原を分けていたが、曹操陣営の方が疲弊して余力がなく、また敵が多かった。十対一という兵力差は、実情からあまり外れていないだろう。

 
(5)  運動戦と陣地戦

兵力差がある戦闘において、『孫子』では運動戦を常道とする。運動戦とは、陽動などを用いて常に戦局を動かしながら、局地的に兵力差の解消される局面を作り出す作戦である。官渡の戦いの前哨戦となった白馬の戦いは、まさに運動戦の典型といえる戦闘だった。続く官渡の戦いは、陣地戦の典型だった。曹操は不利を覆し、これらに見事に勝利した。

 
(6)  名士の本領――荀彧の四点比較

官渡に籠城中の曹操から撤退の相談を受けた荀彧は、「①度量、②謀略、③武略、④徳行に優れる曹操が、天子を奉じて正義の戦いを起こすのであるから、袁紹に負けるはずがない」といった文章を送り、曹操を励ました。

 
(7)  漢解体への挑戦

曹操は、「唯才是挙」(才能のみを推挙の基準とせよ)との方針を打ち出し、漢の人材登用制度「郷挙里選」(「孝」「廉」など儒教的徳目に適う人間性を前提としている)に異議を唱えた。また、これまで尊重されなかった「文学」を称揚することで、その相対化を目指した。

 
(8)  英雄か姦雄か

あまりに先進的な人物は、周囲に警戒感を与え、大半の人はついてゆくことができない。曹操は許劭から「君は治世の能臣、乱世の姦雄である」という印象的な評価を得た。

 

出典:

渡邉義浩(2017/5)、 陳寿『三国志』~真の「英雄」とは何か~、「100DEで名著」、NHKテキスト

地図:【200年頃】

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