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2018年6月22日金曜日

(1276)  いまこそすべてはよい / アルベール・カミュ『ペスト』(4-1) / 100分de名著

 
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第4回  25日放送/ 27日再放送

  タイトル: われ反抗す、ゆえにわれら在り
 


【今回の目次】

(1)  共感と幸福――夜の海水浴
(2)  タルーの最後の戦い――いまこそすべてはよい

(3)  記憶による勝利
(4)  (ノン)という人間――『ペスト』から『反抗的人間』へ
 

【展開】 今回の投稿は、(1)(2)
 
(1)  共感と幸福――夜の海水浴
 
A)   共感
 平和に到達するためにとるべき道について、タルーは共感だという。共感はフランス語ではsympathue(サンパティ)、語源的には「共に苦しむこと」という意味を含んでいる。
 
B)   夜の海水浴
 「友情のしるしに」とタルーが言い、リウーと海水浴をすることになった。ペストの厳戒下、人目を避けて夜の海を泳ぐことになった。
 
C)   幸福
 「リウーは、足の指の下にごつごつした岩肌を感じながら、奇妙な幸福に満たされていた。タルーのほうを振りむくと、友の静かで真面目に顔の上にも同じ幸福が感じられた。だが、その幸福は何も忘れたわけではなかった、殺人のことも」。この場面は、一面的な不幸に閉じこもらない、リウーとタルーの開かれた感性を物語っている。一連の海の描写は、カミュらしい名文だと言われている。
 


(2)  タルーの最後の戦い――いまこそすべてはよい
 
A)   開門へ
 12月の寒さのなかでも、ペストは腺ペストから肺ペストという病理状態に移行しながら、消滅することなく進行していた。年末、何人かの絶望的な患者たちが突然病気から脱した。1月の上旬、それまで効果を得られなかった医師たちの処置が、にわかに奏功しはじめ、ペストはその力を急速に弱めていった。1月25日、県によってついに疫病の終息が宣言された。
 
B)   タルーの発病
 タルーは、発熱して寝込んでしまい、しだいにペストの症状を示しはじめた。夜明けにいったん収まった病勢は、正午にかけてまた高まっていった。
===== 引用はじめ
 リウー夫人は、タルーがずっと自分を見つめているのに気づいた。夫人は彼のほうに身を屈め、枕を直してやり、それから身を起して、濡れてもつれたタルーの髪にしばらく手を当てた。すると、夫人の耳に、消えいりそうな声が、遠くからやって来るように、こう聞こえてきた。ありがとう、いまこそすべてはよい、と。
===== 引用おわり
 
C)   いまこそすべてはよい
 文学的な読み方をすれば、この「いまこそすべてよい」という言葉は、ドストエフスキーの『悪霊』の登場人物キリーロフのセリフ「すべてよし」(*)から来ているとも考えられます。
(*)
===== 引用はじめ
 何もかもいいです。… 人間が不幸なのは、ただ自分の幸福を知らないからです。それだけのこと、断じてそれだけです。断じて! それを自覚した者は、すぐ幸福になる。… すべてがいい、すべてが! すべてがいいということを知っている者は、すべてがいいのです(『悪霊』第二部第一章、米川正夫訳)
===== 引用おわり
 
 
<出典>

中条省平(2018/6)、アルベール・カミュ『ペスト』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)
添付写真:1957年のカミュ。ノーベル賞受賞を称えられるカミュと妻フランシーヌ


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