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2016年12月22日木曜日

(729) 「措置制度から契約制度」は、行政の責任を減らす


 措置制度から契約制度へ

===== 引用(知恵蔵2015の解説) はじめ

    措置制度は、福祉サービスを受ける要件を満たしているかを判断し、また、そのサービスの開始・廃止を法令に基づいた行政権限としての措置により提供する制度。

    これに対し契約制度は、利用者が福祉サービスの提供者(事業者)との契約に基づいてサービスを利用する制度である。

    措置制度の下では利用者側の意向が尊重されにくいという構造が指摘され、社会福祉基礎構造改革以降、全体としては措置制度から契約制度への移行が加速している。

    しかし、保護の必要がある子どもの福祉などの分野では多様な議論がある。

(中谷茂一 聖学院大学助教授 2008)

===== 引用 おわり (原文は、箇条書ではない)


 

これを読むと、措置制度の下では利用者側の意向が尊重されるので、とても良い制度だということになる。どうも、そうとは言い切れないのが現実のようだ。

 

現物給付から現金給付へ

===== 引用 はじめ  P.18

… 介護保険と医療保険にはきわめて重要な違いが存在した。

 … 2つの社会保険の違いは、これまでの社会保障論の系譜に即していうと、現物給付と現金給付の違いにあった。

 医療保険は、よく知られているように、現物給付の原則にたったものである。日本の医療保険は、保険を給付するものを療養とか手術といった具合に指定し、被保険者である患者に対して、医療サービスの現物を給付するという原則にそって制度化されたものである。

 だが、介護保険には、在宅介護サービス費だとか施設介護サービス費といった介護費用の一部給付、すなわち現金給付の原則を採用している。

===== 引用 おわり (段落は変えた)

城 仁士、「do for から do with へ。高齢者の発達と支援」、ナカニシヤ出版

 

介護保険が契約制度(現金給付)になったことにより、介護労働者自身の裁量に委ねられなくなり、この制度下で提供できるものは、マニュアル化・定型化されたものに限られるようになり、社会サービス労働の専門性や知的熟練を発揮する場が減ることになる。

 

==== 引用 はじめ  P.19

 問題なのは、社会サービス労働が一般のサービス市場と同じ契約関係に委ねられて、本来の課題を達成しうるかどうかにある。

 一般のサービス市場で売買関係が成立するのは、取引対象であるサービスそのものの内容が、その他の商品と同じように、あらかじめ予見可能、つまり一定の定型性をもって確かめられている場合である。これは、サービスが定型化されているケース、つまりサービス労働がある程度マニュアル化されていて、その利用者が利用以前に予測・予見可能な場合にあてはまる。

===== 引用 おわり

同上

 

介護保険制度の導入により、行政の役割は現物給付から現金給付へ変わった。その結果、行政は何を給付するかは考えなくてよく、保険で集めた金と税金とを回せばよいことになり、行政の責任は減った。

 老人福祉のみならず、障害者福祉、児童福祉も、さらに医療制度も現金給付化する流れがあり、行政の責任はますます限定されていきそうである。

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