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2016年12月3日土曜日

(711) 「構造主義」の誕生 /レヴィス=トロース「野生の思考」(1)


~ 『100分で名著』 125() 22:25 22:50 Eテレ 放映 ~

 
正直に言って、難解な本である。

 
===== 引用 はじめ

『野生の思考』(やせいのしこう、仏: La Pensée sauvage)は、1962年にフランスの人類学者・クロード・レヴィ=ストロースによって発表された著作をさす。…
この著作は、パリで出版された当初から、1960年代にわたって、人類学の研究にとどまらず構造主義思想の勃興を促した。レヴィ・ストロースは、自然環境において具体的な事物を一定の記号として扱う思考、すなわち野生の思考を本書の主題に据えて、それを文明社会において発達した科学的思考と対比しながら、考察を進めた。

野生の思考とは、ありあわせの素材を用いて入り用の物を作る場合(ブリコラージュ)に例えられ、器用人の思考様式と特徴づけられる。それは、眼前の事象を考える際に、その事象と別の事象との間にある関係に注目し、それと類似する関係性を持つ別の事象群を連想しつつ、それらを再構成することである。そして、それらの事象に異なる意味を与え、新しい「構造」を生み出せる。それは、理論と仮説を通じて考える科学的思考と基本的に同質なものである。両者の相違については、科学的思考が用いるものが「概念」であるのに対して、野生の思考が用いるものは「記号」である。
===== 引用おわり
Wikipedia 『野生の思考』

 
「文明社会において発達した科学的思考」が行き詰っていて、それを打破する「構造主義思考」として注目されているようである。

 
===== 引用 はじめ  P.7

現代に直結し、未来にも大きな力を持つであろう思想を『野生の思想』は内蔵しています。十九世紀にそうした意味を持った本がマルクスの『資本論』であるならば、二十世紀はレヴィ=ストロースの『野生の思考』がそれにあたるのではないでしょうか

===== 引用 おわり

 
その鍵になるのが、「構造」である。

                                                                                       
===== 引用 はじめ  P.6

「野生の思考」が挑んだのは、十九世紀のヨーロッパで確立され、その後人類全体に大きな影響力をふるってきた、「歴史」と「進歩」の思想です。レヴィ=ストロースは近現代史をつくりあげてきたこれらの思想に反旗を翻し、「歴史」に対して「構造」という考えを打ち出しました。

===== 引用 おわり
 

文化は、西欧だけのものではなく、アジアやアフリカ、オセアニア、南北アメリカなどに生きてきたいわゆる「未開社会」にも人間は文化を形成してきた。

彼らは「歴史」「進歩」に取り残された人ではなく、「歴史」よりも「構造」を重視する人であり、「歴史」の外に出ている。

「進歩」「歴史」に囚われ「構造」を見失った現代、「未開社会」を観察することにより、「構造」を再発見することができる。それは、現在にも、未来にも通じるものである。
 

 
 
 
 
レヴィ=ストロースが『野生の思考』に至るまでの、紆余曲折の道のり

(1) 美的感覚が研ぎ澄まされた子供っだった、青春時代にはワグナーの音楽を通じて神話にも親しんだ(P.13

(2) 植物学(色や形の中にあらわれている小さな差異を認識して分類同定していく学問)や地質学(遠く離れた場所に同じ地層の断面がふたたびあらわれてくる)にも興味をもった(P.13

(3) 哲学を学んだが、人類学に興味を持ち、民族学へ転身してフィールドワークした(P.14 – P.15

(4) 美しい秩序をもったタンポポの花を見ているうちに、突然「構造」の考えを思いついた(P.16

(5) エンゲルスの『反デューリング論』から「自然界の運動と人間精神の運動を一つながりとしてとらえようとする唯物論」の考えを学んだ(P.17

(6) ヤコブソンと出会い、構造言語学の革命的な方法をたちまち吸収して、自家薬籠中のものとした(P.20

(7) 言語をはじめあらゆるコミュニケーションには発信者と受信者がいて、共通のコード(符号)を使って「メッセージ」を伝達する。それがコミュニケーションの基本であるとヤコブソンは考えた。レヴィ=ストロースは、「親族」というものを(ヤコブソンの意味で)コミュニケーションの一形態として理解するという発想で『親族の基本構造』を書きあげた(P.21

(8) 「弁別」システムの考えから、「自然」と「文化」という重要な概念を着想した。自然は、言語でいえば連続的な音響世界にあたり、文化は、そこから少数の要素を取り出して、相関・対立させ、「構造」をつくる。この構造を「変換」したり、組み合わせたりすることによって、人間の文化は形成されてきた(P.23

(9) ロシアで発達した構造言語学の基本的な姿勢に共感を持った。「隠喩」(メタファー)や「換喩」(メトミニー)を通じて、全体が共鳴し合っている小宇宙をつくるのが詩で、そこでは人間の言語のベースであり、日常言語が言語の基礎ではないという考え方である(P.24

(10) 構造言語学を親族構造の分析に適用した。交換とコミュニケーションの体系として親族を理解し、その内部を「構造」によって細密に分析した。さらにそれを数学の「群論」の考えで統一的に表現することに成功した

(11) 構造主義の方法を、より広い人間の文化の領域に適用していく意欲的な研究に着手した。一つは「神話」の研究、もう一つは「トーテミズムの再検討」である(P.26 , P.27

(12) 「神話」の研究は、『神話論理』(ミトロジック)四部作という、巨大な仕事に結実した(P.27

(13) 「トーテミズムの再検討」においては、自然界の中から少数要素を取り出し、相関と対立によって「構造」をつくりだしている心のメカニズムのあざやかな一例が、トーテミズムの本当の姿であることを明らかにした(P.31

(14) ここに「分類」と「変換」の体系としての人間文化というものが浮かび上がった。ここから人間の「心の中」へと深く入り込み、「野生の思考」が書かれていった(P.31

 
引用:
中沢新一(2016/12)、レヴィス=トロース『野生の思考』、100de名著、NHKテキスト

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