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2019年1月22日火曜日

(1488)  (40) 岡倉天心『茶の本』 / 「明治の50冊」

 
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岡倉天心『茶の本』
 
1.   書いてあること
1.1.  日本人の生き方の本質に迫る
1.2.  物質主義に陥った欧米の人々に反省を迫る
 
2.   スタンス
2.1.  相手の文化背景を踏まえ、かつ相手の論理で説明する
2.2.  相手にこびることはない
 
3.   世界での受け止められ方
3.1.  時代背景
3.2.  ペンギン・ブックス双書に加えられた
 
4.   今日的意義
 
 
【展開】

 
1.   書いてあること

1.1.  日本人の生き方の本質に迫る
 天心は本書において、茶道を道教~禅の流れの中に位置づけ、日本人の美意識は茶道を核に形成されてきたと説く。茶道、さらには茶道から派生した華道を語りながら自然と融合した日本文化、日本人の生き方の本質に迫ってゆく。

1.2.  物質主義に陥った欧米の人々に反省を迫る
 それだけではない。返す刀で、物質主義に陥った欧米の人々に反省すら迫るのだ。
 《物々交換の精神がいたるところにはびこっている。名誉だの貞節だのといって、善と真実を切り売りして得意になっている売り子を見よ。人はいわゆる宗教ですら買う》
 

2.   スタンス

2.1.  相手の文化背景を踏まえ、かつ相手の論理で説明する
 天心の英語力と欧米の知識人と対等に渡り合える教養には舌を巻いてしまいます。そして、相手の文化背景を踏まえ、かつ相手の論理で説明する天心の方法は、現代の私たちにも学ぶところが多い。

2.2.  相手にこびることはない
 ただ、相手の論理に立つといっても、天心の場合は相手にこびることではありません。
 たとえば最終章の千利休の死を描いた場面で、「heaven(天国)」に旅立ったと書かず、「the unknown(見知らぬ世界)」に旅立ったと慎重に言葉を選んでいる。
 

3.   世界での受け止められ方

3.1.  時代背景
 19世紀中葉以降、欧州ではジャポニスム(日本趣味)が流行した。日本から流出した浮世絵や1867年に開催されたパリ万博に日本政府が出品した美術工芸品がきっかけだった。20世紀初頭になると、日本は大国ロシアを打ち負かし、列強の一角に名を連ねるようになる。日本人はどんな文化を持った民族なのか、欧米の知識人は日本への関心を高めていった。そんな折に登場した本書は、時間をおかずスウェーデン、ドイツ、フランス、スペインなどでも翻訳された。

3.2.  ペンギン・ブックス双書に加えられた
 2016年、世界の名作が採用される英国のペンギン・ブックス双書に『茶の本』は加えられた。欧米においても、いまなおその価値が失われていない証しだろう。
 

4.   今日的意義

 「日本には、欧米人とは違っても、日本人なりの生き方の原則があるのだと主張していることに意義がある」(大日本茶道学会会長で、本書を翻訳解説した『岡倉天心「茶の本」をよむ』(講談社学術文庫)の著者である田中仙堂(せんどう)さん)
 世界の荒波にいや応なく引きずり出された日本を背負い、欧米に対して堂々と日本文化の普遍的価値を説いた天心の気概はいまも輝きを放っている。
 


【プロフィル】岡倉天心(おかくら・てんしん)
 文久2(1863)年、横浜に生まれる。本名・覚三(かくぞう)。東京開成学校(現東京大)で政治学・理財学を学び、米国の東洋美術史家、フェノロサの助手となって美術品収集を手伝う。明治23年に東京美術学校(現東京芸術大)初代校長、31年に同校を辞して日本美術院を創設。37年、ボストン美術館に迎えられる。主著に『東洋の理想』『日本の目覚め』。大正2年没。
 


<引用>
岡倉天心『茶の本』 平和の精神と輝く気概
【明治の50冊】 (40) 産経新聞(2019/01/07)
 
(40)岡倉天心『茶の本』 平和の精神と輝く気概
https://www.sankei.com/life/news/190107/lif1901070008-n1.html

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