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2016年6月2日木曜日

(526) 「ピンピンコロリ(PPK)」信仰と「生涯現役」信仰


「ピンピンコロリ」信仰と「生涯現役」信仰は、すこぶる評判がよい。他人の「信仰」に口出すのはどうかと思うが、私は、この二つが高齢期の人生設計を誤らせ、将来、本人や周りの人が困る可能性が高いと思う(困らない可能性もある)ので、あえて書いておく。

 

 「ピンピンコロリ」信仰

 ピンピンコロリとは、病気に苦しむことなく、元気に長生きし、病まずにコロリと死のうという意味の標語。略してPPKとも言う(wikipedia)。

 
 先ず、最初に断っておくが、PPKが悪いと言っているのではないし、PPKの努力が無駄だと言っているのでもない。PPKを目指してPPK運動を展開したり、実践したりすることが素晴らしいことは、否定する余地がない。

 
 いくらPPK運動をしてもPPKが叶わない可能性が十分にある、ということを言っておきたい。平均で言うと、平均寿命と健康寿命との差は、男で9.13年、女で12.68年である。これは「介護が必要だったり、日常生活に支障が出る病気にかかったりする期間であり、自立して過ごせない期間」を示す。

 
 PPK運動によって、非自立期間を短縮することは十分に期待できるが、ゼロにできるかどうかは怪しい。10年まではいかなとしても、5年とか3年とか1年とかの自立できない期間がある可能性は想定すべきである。努力の甲斐なく、10年やそれ以上になってしまうことも、十分ありえる。確率論になるが、これを無視した「高齢期の人生設計」は好ましくないと考える。

 

 「見たくないものは、無いものとする」という悪魔のささやきが、PPKの陰に隠れてやってくる。PPKが悪いと言っているのではない。そのまぎれてやってくるヤツが良くないと言っている。

 「その時に考える」と思いたいのはよくわかるが、「その時」には自立できなくなっており、自分で解決できる余力はあまり残っていない。だから、そうなる前に準備が必要だろう。

 
 現在の日本では「ピンピンコロリ」で死にたい人が多いが、実現されないことが多いそうである。医者から教えてもらった典型的を紹介する。

脳溢血などで倒れると、誰かが助けを呼んでくれて、救急車が病院に運んでくれて、そうとう重症でも医者は命を助けようと親切にチューブにつないでくれる。一度つながれたチューブが外されることはまずなく、その後、命を永らえる。

だれ一人悪い人はいない。みんなで力を合わせ「ビンビンコロリ」を「防いで」くれる。誰をも非難できない。

 

 模範的な生き方をしてもなお、自立できない期間は覚悟すべきだろう。
 
 「いっそ、好きな酒を飲みまくって、食べたいもの物だけを食べまくって、煙草も吸いまくって、運動など面倒なことはせず、不規則な生活をして、早死にしてやる!」と自堕落な生活を送ったら、脳溢血で倒れ半身不随のまま何年も「ネンネンコロリ(NNK=長期の寝たきりになって亡くなる)」の生活を余儀なくされるような事態に陥る可能性が高い。そう簡単には、死ねないのが、日本のありがたいところである。

 

「生涯現役」信仰
これについては、二つの視点から、よく考えてみることを勧めたい。

 
一つ目は、すでに述べた「PPK」で生涯を全うできる可能性は低く、長短はあるが、どうしても最後の何年かは、自立できない可能性を覚悟せねばならないことから発生する課題である。
 
そうなったら「生涯現役」は放棄し、ベッドで横たわり世話を受ける覚悟なのか、それでもなお「現役」を続けられる準備をしているのか、という問である。その期間は、男女で差はあるが、平均すると10年程度である。
 
平均と言うことは、それより短い人もいるが、長い人もいる。「生涯現役」という(甘い)言葉は、(忘れてはならない)この期間を忘れさせてくれる。

 
 
二つ目は、「生涯現役」=「生涯働いている」ととっている人が多いようだが、それで良いのだろうかという疑問である。


それも立派な生き方で、価値観、人生観がからむところなので、「それはいけない」とは、言ってはならないだろう。しかし、それでも。


  先ず二つの考え方がある。
A:「生涯現役」=「生涯働いている」
B:「生涯現役」≠「生涯働いている」

 
「AとBをちゃんと比較して、Aを選ぶ」のは良い。「Bを見ず、評価せず、Aを選ぶ」のはどうか、と私は疑問を呈しているのである。

 

 元気な今現在の満足感を重視するなら、「ピンピンコロリ」信仰、「生涯現役」信仰は、結構なことである。
 
 でも、人生は長くなっている。トータルの人生の「生活の質」を重視するなら、「ピンピンコロリ」信仰、「生涯現役」信仰は、私としては、お勧めできない。

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