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2017年5月16日火曜日

(875) 子どもと家庭教育 / 子供・若者の文化と教育(3)


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子どもと家庭教育

 子どもの第一次社会化の場としての家族の役割に注目し、しつけや育児の特徴そしてその多様性を社会的格差の視点から捉える。たとえば、貧困家庭における子どもの十分な育ちや虐待の問題、その一方で高階層家庭における幼児早期教育や小学校受験、いわゆる「お受験」志向などを具体例として紹介する。

 

<構成>

 はじめに

 現代日本の家庭教育の特徴

(1)  子ども優先規範
(2)  性別役割分業
(3)  高まる育児不安

 多様化する家庭と子どもの成育環境

(1)  社会的格差・貧困と子育て環境
(2)  貧困層の家族と子どもの成育環境
(3)  高階層の家族と子どもの成育環境

 まとめ

 

<各論>

 はじめに

子どもは、家族におけるしつけや社会化(第一次社会化)を通じて、当該社会の文化(言語・知識・価値・規範・行動様式など)や安定したパーソナリティを習得するものと考えられてきた。しかし、家族関係・親子関係の多様化を背景に、「家族」や「親子」に関する客観的な定義は解体しつつある。

 
 現代日本の家庭教育の特徴

現代日本の家庭教育(育児やしつけを含む)の三つの特徴を考察する。

(1)  子ども優先規範

「子ども優先規範」(「夫や妻は、自分たちのことを多少犠牲にしても、子どものことを優先すべきだ」という子育てに関する意思や規範)への賛同者が年々増加している。また「三歳児神話」(「子どもは3歳までは、常時家庭において母親の手で育てないと、子どものその後の成長に悪影響を及ぼす」と考える家族規範・意識)を支持する声は非常に多い。

(2)  性別役割分業

「母親の専業育児化」が進んでいる。母親たちは食事の準備・後片付けから読み聞かせやしつけなどの「世話」、幼稚園・保育園への送迎やそれ以外の場面での子どもの遊びなど「送迎・見守り」、食事・買い物・入浴など親子で一緒に行う「共同行動」など、多種多様な育児を一手に引き受けている。母親の専業育児化は男親(父親)の育児役割からの疎外を意味する。

(3)  高まる育児不安

育児不安とは「子どもや子育てに対する蓄積された漠然とした恐れを含む情緒の状態」を指す。「父親の協力的な育児参加」「人づきあいや近所づきあい」「就労を含めた社会的活動への参加」は母親の育児不安を軽減させる上で大きな効果をもつ。

 
 多様化する家庭と子どもの成育環境

(1)  社会的格差・貧困と子育て環境

昨今の社会的格差の拡大や貧困層の増大に伴い、家族のあり方や子どもの社会環境も多様化し、一部の家族では育児不安の高まりや子ども虐待など危機的な問題も発生している。

(2)  貧困層の家族と子どもの成育環境

貧困層の家庭においては、父母や祖父母の世代から、「低学歴→不安定就労→失業・借金→心身の健康状態の悪化→虐待・離婚→家庭崩壊→施設入所」という貧困と虐待の再生産が多くみられる

(3)  高階層の家族と子どもの成育環境

国立・私立小学校を志望する保護者の社会環境は、父・母ともに学歴が高く、世帯収入も高く、専門・技術職あるいは管理職といった上層ホワイトカラー層でその多くを占められている。

 
 まとめ

もはや多くの家族がひとつの理想像を追求し、達成できる時代ではなくなった。それだけ日本の家族は多様化し、家族成員の個人化も進んでいる。

 
引用
小林誠、「第3章 子どもと家庭教育」
竹内清・岩田弘三編(2011)、子供・若者の文化と教育、放送大学教材
 

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