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2019年4月6日土曜日

(1565)  マルクス・アウレリウス『自省録』(2-1) / 100分de名著

 
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(K0706) 「寄り添うしかない」に逃げる / 「寄り添いに求められるもの」(3) <後見と電話相談>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/04/k07063.html
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第2回  8日放送/10日再放送

  タイトル: 「他者」と共生する
 


【テキストの項目】
(1)  カッシウスの裏切り
(2)  過ちは無知から
(3)  現実を超えて
(4)  賞賛を求めない
(5)  怒りや悲しみから自由になる
 


【展開】

(1)  カッシウスの裏切り

 カッシウスは、アウレリウスが急死したという誤報に接し、後継者に名乗りをあげて挙兵しました。結局、蜂起直後にカッシウスは部下に惨殺され反乱はすぐに終息しましたが、謀反の知らせを聞いたアウレリウスは、カッシウスを許すつもりでいたのです。
 許すだけでなく、過ちを犯した人を愛せ、といっています。なぜなら、それは「人間に固有のこと」、つまり自然に即して生きることにつながるからです。
 

(2)  過ちは無知から

 ストア哲学では、人が過ちを犯すのは、何が善で、何が悪であるかを正しく判断できないからだと考えます。ここで、悪とは自分にとってためにならないという意味で、道徳的な意味は含まれません。
 人は「心ならずも」過ちを犯します。これは「誰一人として悪を欲する人はいない」(プラトン『メイン』)としたソクラテスに由来します。
 また、「自覚し意識して協力している者も、気づくことなく協力している者もいる」が、「我々は皆、一つの目的のために協力している」。我々は「協力するために生まれてきた」のです。互いに対立することは自然に反します。
 過ちに対しては、「怒らずに、教え、そして示せ」「人間は互いのために生まれた。だから、教えよ。さもなくば耐えよ」。ここで耐えるとは、怒りの感情を抑えてて我慢してするという意味ではありません。「できるならば、教え改めさせよ。しかしできないならば、これ(他者の過ち)に対して寛容がお前に与えられていることを覚えておけ」
 

(3)  現実を超えて

 哲学は、現実を追認することに終始してはいけないと私(=著者 岸見)は考えています。フロイトは、人には攻撃本能があるといっていますが、そのことを指摘するだけでは現状を変えることはできません。
 ともあれ、戦いに明け暮れ、人間同士が殺し合う現実や人間の醜い部分を目の当たりにしていたにもかかわらず、アウレリウスが寛容と共生の思想に到達し、生涯揺らぐことがなかったことに大きな意味があると思います。
 

(4)  賞賛を求めない

 賞賛を自分の部分として持たない人は、自分の価値を自分で認めることができるので、他者からの賞賛を必要としません。賞賛は評価ですが、そのような人は評価と自分の価値は別物であることを知っており、評価されたことで自分の価値が高まるものでもなく、反対に、評価されない、さらには批判されたからといって自分の価値が低くなるものでもないことを知っています。
 ほめることは今も重要と考え、家庭や学校のみならず、企業でもほめて伸ばすことの必要性を説く人がいます。しかし、ほめられて育った人は、自分の価値、自分の行動の価値を自分ではわからなくなってしまうことがあります。
 

(5)  怒りや悲しみから自由になる

 怒りや憎しみといった情念から自由になることができれば、周囲の人から何をいわれたか、何をされたかによって心がざわついたり、怒り狂ったりということはありません。
 また、他者が犯した過ちは無知によるものだと思えば、怒りからも自由になれます。
 実際にどうすればいいか。アウレリウスは次のように書いています。
  判断を取り去れ。そうすれは、「害された」(という判断)は取り除かれる。「害された」を取り去れ。「害された」が取り除かれる
  私が彼ら(過ちを犯す人)の誰からも害を受けることはありえない。誰も私を醜悪なもので包み込むことはできないからだ
  他人が何かをするかしないかには何も求めない
 
 情念から自由になったイメージを次のように描いています。
  情念から自由な精神は城壁である。なぜなら、人間はこれにまさる難攻不落なものを持たず、そこに退避すれば以後揺るぐことのない者として生きることになるからである
  絶えず波が打ち寄せる岬のようであれ。岬は厳として立ち、水の泡立ちはその周りで眠る
 


<出典>
岸見一郎(2019/4)、マルクス・アウレリウス『自省録』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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