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2021年1月22日金曜日

(2221)  カール・マルクス『資本論』(4-1) / 100分de名著

 

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晩年の思想は、『資本論』には編まれませんでした。晩年の自然科学研究や共同体研究の足跡を示す新資料も踏まえつつ、資本主義が自然破壊を止められない理由と、ポスト資本主義社会の可能性を展望します

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第4回  25日放送/ 27日再放送

  タイトル: <コモン>の再生 - 晩期マルクスのエコロジーとコミュニズム

 

 

【テキストの項目】

(1)   資本の略奪欲は自然にも及ぶ

(2)   修復不可能な亀裂

(3)  「複雑さ」の破壊

(4)  『資本論』に編まれなかった晩年の思想

(5)   エコロジーへの傾斜

(6)   原古的な共同体に見た理想

 

(7)   富をシェアする「コミュニズム」

(8)  「脱成長」という第三の道

(9)  「コモン」=商品化への抵抗

(10) 各地で動き始めた「アソシエーション」

(11) 今こそマルクスに学ぶ

 

【展開】

(1)   資本の略奪欲は自然にも及ぶ

 「人間の労働力の寿命を問題にしない」資本は、自然の寿命も顧慮しません。人間と自然の物質代謝は循環過程なわけですが、資本は、人間だけでなく、自然からも豊かさを一方的に吸い尽くし、その結果、人間と自然の物質代謝に取り返しのつかない亀裂を生み出す、とマルクスは『資本論』で、繰り返し警告しています。

 資本による掠奪の問題を掘り下げ、「土地」の疲弊と「労働力」の消耗は同源であると指摘しています。どちらも、元凶は、際限のない増殖を目指す資本の「盲目的な掠奪欲」と断じています。また、「商品」の消費地である都市の生活は豊かになりますが、その裏で、地方の農村は土壌疲弊というツケを払わされ、貧しくなっていきます。

 

(2)   修復不可能な亀裂

 資本主義の終わりなき運動は、世界中を商品化していきます。グローバル化の結果、一国内の「都市と農村の対立」は、国境を越えて拡大していきます。ところが、資本主義は価値の増殖を「無限」に求めますが、地球は「有限」です。資本は、常にコストを「外部化」しますが、地球が有限である以上、「外部」も有限なのです。その結果、「物質代謝の亀裂」は、最終的には取り返しのつかないところまで、深まってしまいます。

 ソ連崩壊後、資本主義のグローバル化がますます加速したことで、環境危機もグローバル化し、この危機と無関係でいられる場所は、地球上にはもはや残っていないというところまできています。それが「人新世」なのです。

 

(3)  「複雑さ」の破壊

 生態系のシステムは複雑に絡み合っているので、どこか一か所に不具合が生じると、連鎖して、あちこちに不具合が生じてしまいますが、資本主義は、そうした複雑さや相互連関には無関心です。商品というのは、あらゆるものに値札をつけることで、すべてを比較可能で、交換可能にしてしまいます。それは便利でもありますが、そのような単純化はしばしば極めて暴力的なものとなります。本来、比較不可能な富を一つの抽象的な尺度で測ってしまうのですから。

 本来の循環過程と資本の価値増殖過程は、まったく異なる論理で営まれているので、二つの過程の間に大きな乖離が生じてしまうのは避けられません。人間と自然の物質代謝に「修復不可能な亀裂」が生じる前に、革命的変化を起こして、別の社会システムに移行しなければいけない。

 

(4)  『資本論』に編まれなかった晩年の思想

 マルクスは、「資本論』第二巻の草稿に、こう綴っています。資本主義に代わる新たな社会において大切なのは、「アソシエート」した労働者が、人間と自然との物質代謝を合理的に、持続可能な形で制御することだ、と。アソシエートするとは、共通の目的のために自発的に結びつき、協同するという意味です。しかし、「どうやって」それを具現化し、「亀裂」を修復するのか、については『資本論』には具体的に書かれていません。

 晩期マルクスの思想に肉薄するには、エンゲルスの編集した『資本論』を読むだけではなく、マルクス自身が書いた草稿に立ち返り、さらに、第二巻・第三巻を完成させるために、彼がどんな研究をしていたのかを知る必要がある。

 

(5)   エコロジーへの傾斜

 悪筆で知られるマルクスが遺した手書きの研究ノートを丹念に読み解いていくと、従来のイメージとはまったく異なる『資本論』の核心が見えてきました。 … 1868年以降のマルクスの研究ノートをみると、過剰な森林伐採によって気候の変化が起こり、土着の農業と文明が危機に瀕していると指摘したドイツの農学者、カール・フラースの著作に大きな影響を受けていることがわかります。そして、自然からの掠奪を批判し、「持続可能」な森林との付き合い方を求めたフラースの主張に、マルクスは「社会主義的な傾向」を見出していました。

 つまり、晩年のマルクスは、来るべき ポスト資本主義社会の姿を、地球環境の持続可能性の問題とからめて構想しようとしていたのです。

 

(6)   原古的な共同体に見た理想

 もう一つ、晩年のマルクスが熱心に研究していたことがあります。マルクスが興味を持ったのは、マルク共同体をはじめとする原古的な共同体では土地が共有物として扱われ、人々が「平等」に暮らしていたということでした。

 自然科学と共同体を同時進行で研究していたマルクスは、やがて自然の「持続可能性」と、人間社会における「平等」の連関に気づいていきます。つまり、平等な社会を作るには、同時に持続可能な社会を築いていかなければならない。持続可能な社会でなければ、社会の平等も続かないということです。富が偏在すれば、そこに権力関係が生じ、それを利用した人間や自然からの掠奪が始まってしまうからです。

 

 以下は、後に書きます。

(7)   富をシェアする「コミュニズム」

(8)  「脱成長」という第三の道

(9)  「コモン」=商品化への抵抗

(10) 各地で動き始めた「アソシエーション」

(11) 今こそマルクスに学ぶ

 

<出典>

斎藤幸平(2021/1)、カール・マルクス『資本論』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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