【 読書 ・ 100分de名著 】唯一の長編『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』。SFの起源の一つともされる本作品の主人公アーサー・ゴードン・ピムは冒険心やみがたく捕鯨船に密航。ところが、船員の反乱、暴風雨との遭遇…と数々の困難。
第1回 7日放送/ 9日再放送
タイトル: 「ページの彼方」への旅--『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』
SFの起源の一つともされる本作品の主人公アーサー・ゴードン・ピムは冒険心やみがたく捕鯨船に密航。ところが、船員の反乱、暴風雨との遭遇…と数々の困難にぶつかる。なんとか生き残ったピムは救出されたものの、そのまま南極探検に向かうことに。その果てに驚くべき光景を目にすることになるのだった。さまざまな壁にぶつかる主人公の旅自体が、作家ポー自身の人生と重なる。ピムが最後に遭遇する真っ白な瀑布は、自分を解雇したホワイト氏への揶揄でもあり、物語の成立条件そのものを飲み込み「ページの白」の彼方へと読者を送り込む仕掛けとも読めるのだ。第1回は、ポーの人生と創作過程を象徴するピムの冒険行を読み解き、「ポーにとって文学とは何か」という根源的なテーマを解き明かしていく。
https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/blog/bl/pEwB9LAbAN/bp/paM8wbQ0R9/
【テキストの項目】
(1)
ポー唯一の長編
(2)
「ほんとうの話」という仕掛け
(3)
スリリングな冒険への船出
(4)
カニバリズムを描いた場面
(5)
大岡正平『野火』への影響
(6)
極地への旅
(7)
真っ白なページの彼方に
【展開】
(1)
ポー唯一の長編
『ピム』は、ポーの生涯唯一の長編小説です。 … 小説の主人公ピムの漂流記は、まさしく作者ポーその人が体験した文学上の漂流記として読むここができるかもしれません。
というのも、この小説は海洋冒険ものの体裁をとってはいますが、そのジャンル的枠組は、実のところ物語の展開にしたがつて千変万化します。その中には空想科学小説的なところもあるし、ゴシック・ロマンス的な、現代のホラーに通じるおどろおどろしい場面もあるし、推理小説的なところもあります。さらには悲劇・神話・法螺話・風刺・旅行記・心理小説・象徴主義文学と、そのいずれでもあり、いずれでもない、いやそれらすべてが相互侵犯し合っているとしか思われないような、いたって不思議な作品なのです。
(2)
「ほんとうの話」という仕掛け
海洋冒険ものは、当時人気のあったジャンルの一つでした。ポーより十歳年下の作家ハーマン・メルヴィルも、自身が捕鯨船の船乗りだった経験を生かして、このジャンルを得意としました。この時代の読者にとつて特に肝心なのは、それが実際にあった話であるという触れ込みです。
現実の作者(ポー)が、実在とされる作中人物(ピム)の書いた文章の中に登場し、ピムの語った話をポーが書いたことになっています。このように手の込んだ仕掛けを施すことによって、これから語られるのはにわかには信じられないような話だけれど、ほんとうにあつたことなのだと、読者を説得しています。
(3)
スリリングな冒険への船出
… これに懲りない二人は、未知の海への大冒険にますます心を奪われ、計画の相談を重ねました。そしてバーナード船長と息子オーガスタスが乗り組む古い捕鯨船グランパス号の、船室の床下の船倉にピムが隠れて、密航に出ることになります。
ところが何日か後には様子を見にくるはずのオーガスタスは、いつまで待ってもやってこず、ピムは窮屈で真っ暗な船倉に閉じ込められたまま、不安と恐怖に追い詰められ、異常な精神状態となります。そこへある手段で、オーガスタスから一枚の手紙が届くのですが、間の中で辛うじて解読できたのは「血だ―生き延びたかったら、そこでじっと引きこもっているがいい」と、血で書かれたメツセージでした。サスペンスに満ちた推理小説的な展開です。
以下は、後に書きます。
(4)
カニバリズムを描いた場面
(5)
大岡正平『野火』への影響
(6)
極地への旅
(7)
真っ白なページの彼方に
<出典>
巽孝之(2022/3)、エドガー・アラン・ポー『(スペシャル)』、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
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