【 読書 ・ 100分de名著 】 エドガー・アラン・ポーは「推理小説の父」として知られているが、それだけではありません。今回は、ポーの作品群の中から代表的な四作を取り上げ、ポーの多様で魅惑的な作品世界を読み解いていきましょう。
「100分de名著」 エドガー・アラン・ポー『(スペシャル)』が、3月7日(月)から始まります。Eテレ。
放映は、 月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、 水曜日 午前 05:30~05:55
及び 午後 00:00~00:25
講師は、巽孝之(アメリカ文学者、慶應義塾大学名誉教授)
【はじめに】 文学ジャンルの開拓者
エドガー・アラン・ポーといえば、まず何よりも「推理小説の父」として知られています。1814年に発表した短編『モルグ街の殺人』が、世界初の推理小説とされているからです。我が国における推理小説の始祖・江戸川乱歩の筆名がポーにあやかっていることは、ご存じの方も多いでしょう。このポーには、いくつもの誤解があります。
(1)
ポーは推理小説家である
それは、ポーの、ほんの一面に過ぎない。本質は、マガジニストであり、多くのジャンルの開拓者である
(2)
ポーの人物像。アルコールや麻薬の中毒で、屋根裏に籠って一心不乱に小説を書き、あちこちで喧嘩沙汰を起こしたというイメージが広く知られている
それは、遺著管理人を任されたポーの友人ルーフアス・グリズウォルド(ポーに対する個人的な恨みがあったとされます)によって過度に誇張されたものです。
(3)
ポーは、アメリカを代表的な作家ではない
アメリカ文学の黄金時代を「アメリカン・ルネッサンス」と命名した、ハーヴァード大学教授のF・0・マシーセンは、ポーを「代表的作家」から締め出しました。マシーセンの尺度がアメリカ北部の民主主義的な作家や詩人に限定されていることも、一つの理由として考えられます。
ポーは、詩人として出発し、奇怪幻想のゴシック・ロマンス、空想科学小説すなわちSF、海洋冒険小説、風刺小説、戯曲、評論などなど、あらゆる文学ジャンルに手を染め横断し改良し再発明し、時にまったく新しく開発した、いわばジャンルそのものの専門家でした。
今回は、ポーの作品群の中から代表的な四作、唯一の長編『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』、短編小説のお手本とも言える『アッシャー家の崩壊』、アメリカ・ロマン派の名作『黒猫』、世界初の推理小説『モルグ街の殺人』を取り上げます。それでは、マガジエストであるポーの多様で魅惑的な作品世界を読み解いていきましょう。
<全4回のシリーズ> いずれも3月
【はじめに】 文学ジャンルの開拓者
第1回 7日放送/ 9日再放送
タイトル: 「ページの彼方」への旅--『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』
第2回 14日放送/ 16日再放送
タイトル: 作家はジャンルを横断する--『アッシャー家の崩壊』
第3回 21日放送/ 23日再放送
タイトル: 「狩るもの」と「狩られるもの」--『黒猫』
第4回 28日放送/ 30日再放送
タイトル: ミステリーはここから生まれた--『モルグ街の殺人』
<出典>
巽孝之(2022/3)、エドガー・アラン・ポー『(スペシャル)』、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
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