~ 『100分で名著』 2月27日(月) 22:25 – 22:50 Eテレ 放映 ~
ガンディーは、「無抵抗主義」で有名だが、それだけではなく、数多くのコンセプトを提示しており、そこから学ぶものが多い。
(1)
スワラージとスワデーシー
(2)
富の流出
(3)
チャルカーとガーディー
(4)
よいものはカタツムリのように進む
(5)
一方的な喜捨は怠惰を助長する
(6)
信託の思想
(7)
拡大より持続
(8)
ダルマとトボス
(9)
この木を見なさい
(10)
知足の精神
<詳細>
(1)
スワラージとスワデーシー
「スワデーシー」は、ガンディーが提唱した非常に重要な概念である。
===== 引用 はじめ ( P.96 )
これ(スワデーシシー)は、しばしば「自国産品愛用運動」と訳されるのですが、ガンディーは単に「インドの独立のために、外国製品を排除して自国産品を使え」と言ったのではありません。
===== 引用 おわり
===== 引用 はじめ ( P.96 – P.97 )
「スワラージ」が単なる独立を意味しているのでなく「自己統制」の意味を含んでいたように、スワデーシーも単なる外国排斥運動ではない、深い意味をもっていました。
…
スワデーシーは憎悪崇拝ではありません。それはこのうえなく純粋なアヒンサー(愛)に根ざした無私の奉仕の教理です。
===== 引用 おわり
(2)
富の流出
===== 引用 はじめ ( P.98 – P.99 )
インドは綿花をイギリスに輸出しながら、それを加工した布製品を大量にイギリスから輸入していました。もちろん、原材料よりも加工品のほうが高価ですから、市場の論理でインドの富はどんどんイギリス領に流出していくことになる。… これを「富の流出」と呼んだのです。
…
そこで出てきたのが「スワデーシー」という概念でした。外国製品よりも品質が悪く高価な場合でも、自国産品を買うべきだというのです。
===== 引用 おわり
===== 引用 はじめ ( P.99 )
多くの独立運動家たちは「インドでも機械化を進め、イギリス製品に対抗できる高付加価値商品を大量生産できるようにしよう」と考えました。…
ところが、ガンディーはこれを否定します。 …
… 同じ市場経済の論理で動くなら、インドがまた「もう一つのイギリス」になるだけではないか、と言うのです。
===== 引用 おわり
(3)
チャルカーとガーディー
===== 引用 はじめ ( P.100 )
「スワデージー」の「スワ」は「スワラージ」と同じ、「自らの」という意味。一方「デーシー」は「国」という意味もあるのですが、同時に「土地」「大地」という意味も含んでいます。…「土地の製品」という言葉があるように、自分が暮らす土地との関係を強く意識した概念なのです。
そこから出発して、ガンディーがスワデーシーという概念の中核に置いたのは、手工業や手仕事の重視でした。その象徴となるのが、「チャルカー」と「ガーディー」です。
===== 引用 おわり
===== 引用 はじめ ( P.100 )
チャルカーは、手でカラカラと回して糸を紡ぐ手紡ぎ車のこと。… チャルカーは、そして手で糸を紡ぐという行為は、インドでは忘れ去られていたのです。
ガーディーは手織り木綿布のことを指します。チャルカーを使って自分で糸を紡ぎ、その糸でガーディーを織り、自分で衣服をつくって身につけよう。それがガンディーの提唱した「チャルカーとガーディー」運動でした。
===== 引用 おわり
(4)
よいものはカタツムリのように進む
===== 引用 はじめ ( P.105 )
この鉄道の対極に、ガンディーは「カタツムリ」を置き、「よいものはカタツムリのように進むのです」と言います。
===== 引用 おわり
===== 引用 はじめ ( P.106 )
… ものすごいスピードで進んでいく近代社会が過剰な欲望を生み出し、それがさまざまな社会問題を引き起こしているとガンディーは考えていた。この「過剰な欲望」を排除しなくてはならないという発想が、スワデーシーには色濃く見えるのです。
===== 引用 おわり
(5)
一方的な喜捨は怠惰を助長する
===== 引用 はじめ( P.107 – P.108 )
スワデーシーを考える上で非常に重要なのは、経済と倫理が一体化した論理としてガンディーの中に成立していることです。彼の中で、経済と倫理は絶対に切り離せないものでした。
…
つまり、ガンディーは物質的要求を最大化させるような近代資本主義、あるいは消費主義というものを何らかの形で牽制しなくてはならないと考えていた。同時に、非市場経済的な福祉政策、国家による再配分を非常に重視していたのです。
この「再配分」に関連して、ちょっと意外に感じるのが、広い意味で再配分の一部ともいえる寄付、喜捨や慈善についてのガンディーの考え方です。彼は、これらの行為について非常に懐疑的な立場を取っていました。
===== 引用 おわり
===== 引用 はじめ( P.108 )
たとえば「一方的な喜捨は怠惰を助長する」と言っています。物乞いの人に出会ったときに、すぐお金や食事を与えることは正義ではない。特に、身体的なハンディキャップがあるわけでもない人の場合は、金やものを与えることでその人が「物乞いであり続ける」ことを助けてしまうことになる。その人自身がダルマ(役割)を果たす機会を奪ってしまっていることになっているのではないか、、と説くのです。
===== 引用 おわり
(6)
信託の思想
===== 引用 はじめ ( P.109 )
ガンディーが再配分について考えるときに重要視していたのが「神託」の思想です。
===== 引用 おわり
===== 引用 はじめ ( P.109 )
これは、この世のあらゆるものは、真の意味で「私のもの」ではなく、神から一時的に預けられたものに過ぎないという考え方です。自分のものだと思っている金も土地も、神から託されたものなのだから、それを使って一方的な搾取をしてはいけない。「神から預かったもの」として自分たちの所有物を扱いなさい、とガンディーは言うのです。
===== 引用 おわり
(7)
拡大より持続
===== 引用 はじめ ( P.112 – P.13 )
… 彼(ガンディー)が考えたのは、「拡大より持続」でした。
…
これはおそらく、今後世界が直面していくであろう資本主義の行き詰まりに対して、一定のビジョンと道筋を示す思想だと思います。
===== 引用 おわり
===== 引用 はじめ ( P. 113 )
… 資本主義というのは、「外部」を失った瞬間に拡大できなくなります。中国やインドが発展途上国といわれていた時代には、そこが先進国にとっての「外部」でした。しかしいまや中国もインドも大国化している。次なるフロンティアはアフリカぐらいしかあれませんが、それもすぐに発展して「外部」と呼べなくなるでしょう。そうしてついに新しい市場を見いだせなくなれば、経済は失速するしかありません。
===== 引用 はじめ
(8)
ダルマとトボス
最近増えている居場所や子ども食堂がトボス、その背景にあるのが、「ダルマ」でしょうか、
===== 引用 はじめ ( P.114 - P.115)
「ダルマ」については、… 実定法を超えた宇宙全体の法則のようなものであり、自分がその中の有機体において果たすべき役割という意味ももちます。
一方「トポス」は、もともとギリシャ語で西洋的な概念なのですが、「場所」を意味します。それも、単なる場所ではなくて、それぞれの人が意味づけられている場所、その場所に生きる人が「私がここに生きている意味がある」と感じられるような場所がトポスなのです。
===== 引用おわり
(9)
この木を見なさい
===== 引用 はじめ (P.121)
この木は夏には多くの動物に木陰を提供し、小鳥たちに実を分け与える。二酸化炭素を吸い、酸素をはき出す。しかし、この木は『自分はよいことをしている』自意識をもっているのだろうか。
===== 引用 おわり
===== 引用 はじめ (P.121)
この木は何のはからいをもつことなく、その場で自分の役割をただ果たし続けている。このダルマこそが、宇宙を構成するものだ。余計なはからいを捨てて、自分の場所で自分の役割を果たすことの重要性を、この木は伝えているのではないか。
===== 引用 おわり
(10)
知足の精神
===== 引用 はじめ (P.122)
ガンディーは、「知足の精神」ということを言っています。知識と足はつながっていないといけない、その片方だけでは意味がない。つまり、哲学は行動しなくてはいけないし、行動は哲学を伴っていなければならないということです。
===== 引用 おわり
===== 引用 はじめ (P.122)
その上で「われわれはみんな、おのれの持てる力量を人類のために供出しなければなりません」と言っています。そのために生きよということこそ、ガンディーの最大のメッセージだったと思います。
===== 引用 おわり
引用:
中島岳志(2017/2)、『獄中からの手紙』、100分de名著、NHKテキスト
写真:アーシュラム、チャルカーをあしらった旗
3月は、
『宮沢賢治スペシャル』(予定)