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2025年7月25日金曜日

(2665) 【参議院選挙(12)】

 2025年参議院選挙の結果を、4つの視点から評価してみます。

 まず、比例代表 得票率と選出議員数とを指標として取り上げます。選出議員数は、選出された個人の数での評価で、これから国政がどちらに向かっていくかの、大切な指標になります。一方、党自体の評価は、比例代表率 得票率が重要な指標になります。

 その各々に、今回の絶対値、前回からの増減を組みあわせて評価します。

 

1.     比例代表 得票率

1.1.    今回の絶対値

 高評価:自民、国民、参政、立民

 低評価:改革

1.2.   前回からの増減

 高評価:参政、国民、保守

 低評価:維新、自民

2.    選出議員数

2.1.   今回の絶対値

 高評価:自民、立民

 低評価:~

2.2.  前回からの増減

 高評価:国民、参政

 低評価:公明、自民


 例えば、今回の選挙で「自民は信任されなかった」というのは、間違いです。比例代表 得票率から見ても、選出議員数から見ても、今回最も信任されたのは、自民です。一方、「信任が減った、それもかなり減った」というのも事実です。

 評価の仕方により、評価結果は全然違ったものになります。例えば、立民は、今回の絶対値で見ると選出議員数で2位(自民・立民の順)、比例代表 得票率で4位(自民・国民・参政・立民の順)ですが、前回からの増減で見るといずれも偏差値50を下回っています。自民は、今回の絶対値で見るといずれも1位ですが、前回からの増減で見るといずれも最下位です。

 複数の視点に立ち、総合的に評価することが大切でしょう。






(2664) 【参議院選挙(11)】

 比例代表における、各党の得票率が、前回よりどれだけ、増えたか・減ったか(2022年参議院選挙と結果と、2025年参議院選挙とを比較しています)をベースにして、検討します。以下、数字はまるめています。

 各々の極の増減をみると、増えたのは、B極(国民・維新・参政)が9%増、D1極(保守・誠真)が6%増、D2極(れいわ・みらい等)が4%増でした。減ったのは、A極(自民・公明)が16%減、C極(立民・共産・社民)が3%減でした。

 固定票と浮動票とがあるが、先ず固定票を考えます。A・B・C極は、固定票をもっています。その固定票がどこに流れたかを考えます。A極(自民・公明)の16%減とC極(立民・共産・社民)の3%減は、どこにいってしまったのでしょうか。

 A極が減った票の行先は、D1極(保守・誠真)かB極(国民・維新・参政)でしょう。A極は16%減り、D1極は6%増えているので、残りの10%はB極に流れたのでしょう。岩盤だったはずの保守層の固定票が流出してしまったのだと思います。

 C極が減った票の行先は、見当たりません。C極の固定票は岩盤で、A極にもB極にも流出しないでしょう。国民は右傾化(?)しているので、立民とルーツは同じだが、立民の固定票が流出するとは思えません。でも、3%減っています。消去法で、行先はD2極しかありません。でも、固定票は流出していないでしょう。今回の選挙では投票率が向上し、比例票の合計は12%増えており、これが影響していると思います。即ち、A極に批判的な浮動票を従来はC極が取り込んでいたのだが、今回はD2極が取り込んでしまった。その結果、C極からD極に3%流れたという数字になっているのでしょう。多党化にともない、C極はA極の批判票(主として浮動票)を取り込めなくなった、これが、今回C極が苦戦した理由で、A極とは違います。

 B極はA極から10%取り込んだのに、トータルとして9%しか増えていません。消えた1%はC極と同じ理由で、D2極に流出したのでしょう。

 D2極は、れいわを除いて、固定票をあまり持っていないでしょう。しかし、投票率向上で多量に現れた浮動票を取り込む力があった、だから結果として4%増えたのでしょう。ということは、もしも次回選挙で投票率が下がり、浮動票が減ると、れいわを除きD2極は一気に縮む可能性があります。なお、みらいは今回健闘し、ある程度、固定票をつかめているかもしれません。

 票の動きをまとめると、

(1)  A極(自民・公明)からB極(国民・維新・参政)に10%、D1極(保守・誠真)に6%流出した結果、A極は16%減った

(2) C極(立民・共産・社民)からD2極(れいわ・みらい等)に3%流出した

(3) B極(国民・維新・参政)へは、A極から10%流入したが、D2極に1%流出したため、結局9%増えた

(4) B極内で、維新から7%が国民と参政に流出した

(5) D2極は、浮動票を中心に取り込み、4%増となった



(2663) 【参議院選挙(10)】

 比例代表の獲得票数が増えている政党と、減っている政党があります。減っている政党の票は、何処に行ってしまったのでしょうか。それがわかれば、取り返すヒントになるかもしれません。以下、試算していますが、見積もるための仮定が多く、精度は低いと思います。

 自民は540万票を失いました。行先は、保守、誠真、参政、国民と考え、保守と誠真は全票自民から持ち出したものとし、残りは2:1の割合で、参政、国民に流出したと仮定しました。リベラル化した自民を背後にし、自民の票は、参政、保守など、保守色の強い政党に移動しました。立民が、自民が減ったと喜んでいるのが不思議です。落ちこぼれた票を自分では拾えず、より主張の遠い党が拾っています。

 維新は、346万票を失いました。参政と国民に半分ずつ流出したと仮定しました。

 公明は、97万票失いました。池田大作氏が亡くなったこと、会員の高齢化、自民不調の影響などがあるのでしょう。この票は特定の政党には流れないとして貯金箱に入ったとしました。

 共産は75万票、社民は4万票失いました。これらは浮動票の取りこぼしと仮定し、貯金箱に入ったとしました。

 更に、以上を元に、票の増えた政党が、どこから票を得たかを試算しました。



(2662) 【参議院選挙(9)】

 これまで、第1の民意について述べてきたが、第2の民意について考察します。

 基本データを示します。

 党別にみると、自民、国民、参政、立民、公明、維新の順で、当選議員数では2位だった立民は4位に陥落し、国民、参政が2位、3位を占めます。

 極別に見ると、B極(立民・維新・参政)、A極(自民・公明)、C極(立憲・共産・社民)の順で、

大まかに見ると、3:3:2の割合になっています。

 第1の民意と、ずいぶん違っています。「私の言うことこそ民意だ」という発言をする党があります。それが民意であることは確かですが、例えば立憲の場合、第2の民意から言えば、12.5%(8分の1)の民意に過ぎず、その他に87.5%の民意もあります。 



(2661) 【参議院選挙(8)】

 政治家は好んで「民意」という言葉を使うが、これほど怪しげなものはありません。

 当然、世の中には(国民の中には)様々な意見があります。誰が、どういう基準で、どの意見が、民意だと決めるのでしょうか。そのような基準はありません。Aという意見とBという対立する意見があるとします。世論調査をしたところ、例えば、7割はAが正しいと言い、3割はBが正しいと言ったとします。では、Aが民意であり、Bは民意ではないのでしょうか。二つの新聞社がそれぞれ世論調査をして異なる結果がでた場合、どちらが民意なのでしょうか。先月の調査結果と今月の調査結果が違ったとしたら、ある日を境に、民意がゴロッと変わるのでしょうか。そもそも、民意を世論調査結果で、決めてよいのでしょうか。

 私は、Aも民意だし、Bも民意だと思います。「ある時点での、ある調査によれば、Aという民意は7割の人が支持し、Bという民意は3割の人が支持した」という表現は正しいと思います。一方、「民意は〇〇」であるという言い方は、出来ません。しかし、政治家はいとも簡単に「彼らは民意を無視している」といった発言します。明確な根拠を示さないままに、自分の思い込みを「民意」という言葉で正当化しています。政治家が「民意」という言葉を使ったら、それは怪しいです。

 さて、政治上の民意をどう決めるかというと、選挙が権威を持ちます。ルールに則り、18歳以上の日本国民に意見を聞き、それに基づき、国会議員が決まります。そのようにして決められた国会議員に、意見を戦わせながら政治上の判断をするよう求めます。間接民主主義は、そういう仕組みになっています。選挙の結果、A党が7割、B党が3割の国会議員を輩出したとして、A党の主張も民意であり、B党の主張も民意です。ただ、結果としてはA党の民意がより強く、政治的な判断に影響を与えます。それでよいと思います。

 参議院選挙で、誰に政治を委ねたいかという民意が示されました(第1の民意)。しかし、もう一つ重要な民意が示されています。どの党に政治を委ねたいかという民意が、比例代表の党派別得票数という形で示されています(第2の民意)。そして、第1の民意と、第2の民意は、驚くほど異なります。


2025年7月22日火曜日

(2660) 【参議院選挙(7)】

補足説明(2)

=====

内閣総理大臣指名選挙の手続は、国会法、議院規則、先例に基づいて、以下の通り行っている:

 

1.    衆議院、参議院双方別々に記名投票を行い、各院一名の指名者を決める(過半数の票を得た議員がその院の指名者になる。そのような議員がいなければ、上位2人による決選投票でその院の指名者を決める)。

2.   両院の指名者が一致していれば、その人物を内閣総理大臣に指名する。

3.   一致してなければ、両院協議会を開く。

4.   両院協議会で両院の意見が一致するか、もしくは出席協議委員の3分の2以上の多数を得た被指名者がでたらその人物を内閣総理大臣に指名する。

5.   そうならなかった場合は、衆議院の優越により衆議院の指名者が内閣総理大臣になる。

以上のように、事実上、衆議院議決で過半数を得た候補が内閣総理大臣に指名される。

===== Wikipedia 『内閣総理大臣指名選挙』より

だそうです。

 

 「内閣が総辞職した場合、又は内閣総理大臣が欠けた場合」、内閣総理大臣指名選挙が行われます。第一回目は各々党首を書くので、現状においては過半数の票を得る議員は出てきません。そこで、上位二人として自民党総裁と立憲民主党代表が残ります。A極(自民・公明)は自民党総裁に投票し、C極(立憲・共産・社民は)は立憲民主党代表に投票するので、結局はB極(国民・維新・参政)が決定権を握ります。彼らは、二者択一か棄権しか選択肢がありません。

 B極が立憲民主党代表を選んだら、自民党は政権を失います。

 

 だから、石破首相は辞められないのでしょう。次の総裁に誰がなるかの内輪の問題ではなく、自民党として政権維持に直結します。自民・公明が過半数を握っている場合は、この問題は起こりません。安倍総理が大敗したときに石破首相が辞任を迫ったのがブーメランとして返ってきたと言われていますが、事情が違っています。

 

 河野太郎氏が「総裁が責任を取らないなら、幹事長が責任をとって辞めるべきだ」と主張しました。何を言っているのだろう?と訝しく思っていましたが、なるほど、これなら「だれも責任を取らない」ことにはならず、かつ、内閣総理大臣指名選挙を避けられます(政権喪失のリスクは避けられる)。ただ、石破首相が継投しても、森山幹事長を失うと、もたないでしょう。 

(2659) 【参議院選挙(6)】

補足説明(1)


(2656) 【参議院選挙(3)】で、

>  アメリカ、イギリス、共産国、独裁国を除けば、どの党も過半数に届かないのは、よくあるケースです。日本では大きな変化に見えますが、決して、異常事態ではありません。良くないことが起こったと心配したり、慌てふためいたりする必要はありません。現実を現実と受け止め、できるだけ混乱少なく、新しい状況で良い政治がおこなわれるよう、前に進むことが大切でしょう。

 

と書きましたが、その前に

>  アメリカとイギリスは2大政党で、交互に政権を担ってきたが、ドイツやフランスやイタリアでは、一つの政党で政権を取ることはできず、連立政権になっています。

と書いています。

 

さらに、(2658) 【参議院選挙(5)】で、

> つまり、3極&3極構造は、更に進むと思われます。従って、3年以内に、3極&3極構造であっても安定した政治運営ができるような仕組みを作らなければなりません。海外で事例が多くあるので研究し、対策していかなければなりません。

と書きました。

 

 ドイツでもフランスでもイタリアでも、政策協定を結び、連立政権で組閣しているようです。日本では、この「政策協定を結び、連立政権で組閣している」ということが出来てない状態で、海外でこのように事例があるかは、私は把握できていません。

 このままで、どうなっていくかは、多分、誰も予想できず、「結局は大混乱に陥る」という意見の通りになるかもしれません。 

(2658) 【参議院選挙(5)】

5.     これからどうなるか? どうすればよいか?

 都議選で注目を浴びた石丸伸二氏が率いる地域政党「再生の道」は、政治信条が明確でなく泡のような存在でした。一方、参政は主張が明確で、地域組織もしっかり作っています。全選挙区で善戦しており、勢いは続くでしょう。

 また、参議院選挙では、非改選の75人(自民62人・公明13人)があるから、今回は47人(自民39人・公明8人)でも半分近くまできました。しかし、3年後は激減するでしょう。公明も、池田大作氏が亡くなり、高齢化もあり、加速度的に党勢は弱まるでしょう。

 つまり、3極&3極構造は、更に進むと思われます。従って、3年以内に、3極&3極構造であっても安定した政治運営ができるような仕組みを作らなければなりません。海外で事例が多くあるので研究し、対策していかなければなりません。

 でも、果たして今の自民で、できるでしょうか?この事態を治め良い方向に向かわせる働きかけができる政治学者はいるのでしょうか?

(2657) 【参議院選挙(4)】

4.     保守層は、どこに行くのか?

 自民は、リベラルな方向に走り、墓穴をほり、議席を失い続けています。リベラルな政策をとったところで、リベラルが自民に投票することはなく、保守層がどんどん抜け落ちています。リベラルな姿勢を見せると野党の攻撃が和らぎ、保守的な姿勢を見せると野党の攻撃が先鋭化します。自らを守るために、岸田首相や石破首相は、自民を捨ててきたのではないでしょうか。

 その保守層を取り込むために、維新と国民は融和的な動きをしてきました。自民に腹をたてた保守層が一部流れたようですが、居心地は悪いと思います。維新は独自色を出そうとし、国民は連合から支持を受けている政党です。そこに現れたのが参政で、保守層にとっては、居心地がよいでしょう。

 全選挙区に候補者を立てた参政が、自民の票をだいぶ奪っているようです。自民が参政に直接負けることがなくても、票を奪われ他の候補に後れを取って落選したケースが多くありそうです。一方、リベラル化に反応して自民から維新に緊急避難した人たちが、参政に回帰したのが、維新が今回伸び悩んだ理由の一つではないでしょうか。

 選挙結果について意見を聞かれたC極(立民・共産・社民)の党首は、自党については語らず、自民が過半数を割って信任を失ったと語っているが、それは自党の努力ではなく、参政などが自民の票を奪ったからでしょう。C極の票は増えていません。

 ところで、選挙区の結果を見ると、自民単独では負けたものの、自民+参政なら、計算上は当選するところが多あるようです。参政は、自民から票を奪っただけではなく、独自の、そして比較的若い保守層を掘り起こしてようです。自民と参政が票を食い合って共倒れになった面もあるが、保守層の底辺を固めているようにも見えます。C極(立民・共産・社民)としては、A極(自民・公明)が減ったと浮かれている場合ではないように思います。


(2656) 【参議院選挙(3)】

3.     政局はどうなるか

 アメリカとイギリスは2大政党で、交互に政権を担ってきたが、ドイツやフランスやイタリアでは、一つの政党で政権を取ることはできず、連立政権になっています。A極(自民・公明)が過半数を割ると政局が不安定になるとされているが、決して悪いことではないでしょう。

 参議院だけを見ると、

自民+立民+国民=144

自民+立民+維新=141

自民+立民+参政=137

 いずれでも、過半数を制します。国民も維新も参政もキャスティングボード(議会において2大勢力が拮抗していずれも過半数を制することが出来ない時に、第三の少数勢力が決定権を握る状態のこと)を握れます。B極の3党からすれば、A極(自民・公明)との交渉次第で、自党の主張を通せるチャンスがあります。

 一方、A極(自民・公明)から見れば、選ぶことができるようになりました。先には国民に振り回されていた自民だったが、選択肢が増えたことにより、国民があまりに無理な要求をしてきたら、維新や参政に乗り換えることもできるようになりました。

 アメリカ、イギリス、共産国、独裁国を除けば、どの党も過半数に届かないのは、よくあるケースです。日本では大きな変化に見えますが、決して、異常事態ではありません。良くないことが起こったと心配したり、慌てふためいたりする必要はありません。現実を現実と受け止め、できるだけ混乱少なく、新しい状況で良い政治がおこなわれるよう、前に進むことが大切でしょう。

 A・B・Cの3極構造と、B極の中の国民・維新・参政の3極構造の並立(3極&3極構造)は、A極(自民・公明)にとっても、そんなに悪い状態ではないと思います。


(2655) 【参議院選挙(2)】

2.     「与党過半数割れ・政権選択」選挙だったのだろうか?

 

2.1.    「与党過半数割れ」選挙ではなかった

 確かに、与党が過半数割れになりましたが、それは古い発想です。3極体制に移行した選挙となりました。象徴的なのは、B極(国民・維新・参政)合計の議席数(56)が、C極(立民・共産・社民)合計の議席数(47)を上回ったことです。

 2極の時は、立民が自民を攻撃し自民からこぼれた票は、無投票になるか野党側に移りました。しかし、3極になった今回では、立民が自民を攻撃しその票がこぼれたのですが、それがB極に流れてしまいました。

 国民の玉木代表が「対決より解決」というのはその通りだと思います。与党・野党の発想で野党が与党に対決しても、自党の票に上積みされない状況になってきました。自民が自滅しつつあるにもかかわらず、C極(立民・共産・社民)は批判・対決姿勢が表立ち、どう解決しようとしているかが見えにくいので、票が伸び悩んでいるのだと思います。

 

2.2.   「政権選択」選挙ではなかった

 与党が過半数割れになれば、政権が変わるというのも古い発想です。

 まず、立民が共産と手を握っている以上、首班指名でB極(国民・維新・参政)が立民の党首に投票することはありえないでしょう。立民自ら選んだ道なので、しかたありません。B極(国民・維新・参政)としても、立民と組むと、次の選挙に響きそうで、選択する余地は、ないでしょう。

 次に、内閣不信任案を出せば、政権交代のための選挙に持ち込めますが、いまの勢いからすると、立民が伸び悩むか縮み、国民や参政が伸びそうです。野党第一党である立民が、不信任案を提出するとは思えません。

 B極(国民・維新・参政)のどこかがA極(自民・公明)と連立を組むとは考えにくいです。特に、今回伸びた国民と参政は、今後とも伸びしろがあるので、連立に入るのは今後の党勢拡大の妨げになるでしょう。維新も、連立に入ると埋没してしまう恐れがあるので、なかなか決心できないでしょう。

 大連立(自民と立民が組む)は、ありそうにありません。

 石破首相は、予想通り居座りを決めたようです。自民の中に不満があると聞こえてきます。反石破の首相候補を一本化して進めれば、可能性があると思うが、バラバラなのでできないでしょう。野党であるB極(国民・維新・参政)やC極(立民・共産・社民)は陰ながら石破首相をサポートしています。石破首相が続く限り、自民の自己崩壊が進むからです。普通なら飛びつくような石破首相のスキャンダルも、黙って見過ごしました。石破首相は、当面継続になるのではないでしょうか。


(2654) 【参議院選挙(1-2)】

1.3.    構成

 A極とC極が減ってB極が増え、結果として、B極(国民・維新・参政)がC極(立民・共産・社民)を上回りました。

 その結果、与党・野党の2極構造が、A・B・Cの3極構造に移行しました。

 55年体制終焉の、最後のステージに入りました。


 3極の状態を図に示しました。円の面積は、人数に比例します。

 第2極(C極)の立民と共産は調整し、一人区を中心に協力関係にありました。立民と共産と社民は近い関係にあります。一方、第3極(B極)の国民、維新、参政は、競合関係にあり、協力していません。第3極(B極)の中には、さらに、国民、維新、参政の3極があります(3極&3極構造)。

 


(2653) 【参議院選挙(1-1)】

1.     参議院選挙2025結果(各党の獲得議席 全確定)

1.1.    4つの極に分けて整理したものを表に示します

 A極:自民、公明

 B極:国民、維新、参政

 C極:立民、共産、社民

 D極:れいわ、保守、N党、みらい、無所属


1.2.    増減(図示)

 A極(自民・公明)が19人減り、C極(立民・共産・社民)が4人減りました。

 B極(国民・維新・参政)が27人増え、D極(その他)が4増えました。

 従来の既成政党(A・C)の減少と欠員(8人)を、新興勢力のB極とD極が吸収しました。

 単純に言うと、A極とC極が負けて、B極が勝ちました(党別に言うと、自民が大幅減、国民と参政が大幅増、公明と共産が減、立民と社民と維新が横ばい)。




 


2025年5月29日木曜日

(2652) 米の販売価格は下がらないだろう

 随意契約による備蓄米の放出が始まった。

 「62日にも店頭に『5キロ2,000円』の米が並び、市場競争を促し、銘柄米も含む市場全体の価格抑制を図る」ということだが、そんなことは起こらないと思う。

 

 価格の「3層化」が進むと言われている。

  備蓄米(随意契約) 2,160円程度を予測

  備蓄米(競争入札) 3,500円前後

  銘柄米       4,400円超

(いずれも5kg 税込み)

 これは起こるが、備蓄米(競争入札)や銘柄米は値崩れしないだろう。

 

 理由は三つある

(1)高く買った米を安くは売れない

(2)米は生鮮食料品ではないので、急いで売る必要はない

(3)備蓄米(随意契約)は直ぐなくなり、次は出てこない

 

 今回放出される備蓄米は、約30万トンで、年間国内需要量の5%程度だという。

365日 × 5% = 18

 仮に、備蓄米(競争入札)と銘柄米とが全く売れず、備蓄米(随意契約)だけが売れるとして、18日間待てば、備蓄米(競争入札)はなくなる。

 今回の放出が完了すると備蓄米の在庫は半分の30万トンまで減り、すぐ、底をつく可能性がある。即ち、「二の矢はない」。あっても小規模になる。

 

 零細な町の米屋は、米が入手できずに困っている。つまり高値で買ったコメの在庫は、わずかである。

 原価の高い米を抱えこんでいるのはJA農協で、彼らは体力があるから、18日間売れなくても、大きな問題はない。高く買ったものを値下げして売ると赤字が出る。彼らは、値下げするわけがないと思う。私なら、そうする。じっと待つ。

 決論として、値崩れは起こらない。一時的に安い備蓄米(随意契約)が市場に出回るが、備蓄米(競争入札)と銘柄米の値段は、ビクともしない。「バーゲンセール」で終わる。

 

 小泉農相は、スピード感がある。この短時間で、よくぞ進めた。また、石破首相が3,000円台といっているのに、2,000円台で勝負しにきた。その判断は良いと思う。

 ただ、備蓄米(随意契約)『効果』があるのはせいぜい1月程度で、すぐ「昔話」になってしまうだろう。

 

 根本的な解決の片鱗も見えていない。1か月程度の「執行猶予」期間に熟考し、根本的・永続的な解決方法を編み出せるか、小泉農相の手腕がこれから試される。

 

写真は、https://www.sankei.com/article/20250528-L7UTTYN47NMNBGY2S7BV47OFBE/



2025年5月28日水曜日

(2651) 関税(自動車産業を念頭) ~ 素人談義 ~ その11

1.   アメリカのトランプ政権によるハーバード大学の留学生の受け入れ認定の取り消し措置をめぐり、阿部文部科学大臣は今後、措置が実施に移される事態などに備え、日本国内の大学に対し学生の受け入れなどの支援策を検討するよう求めていく考えを示しました。

2.   東京大学では、留学生を一時的に受け入れる方針で、一部の授業の受講を認めるほか、授業の単位が認定されるように履修証明書を発行する予定だということです。

3.   また、大阪大学や北海道大学が受け入れる方向で検討しているほか、東北大学や東京科学大学、早稲田大学も支援に向けた検討を始めているということです。

===「米ハーバード大の措置で文科相国内大学で受け入れ検討を」より。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250527/k10014817781000.html

 

 消極的な位置づけではなく、積極的な位置づけで評価したい。

 消極的な位置づけとは、単に困る学生を助けようとすること。

 アメリカは、世界中から留学生を引き受けることにより知を独占しつつあり、これに対抗するのが、積極的な位置づけ。受け入れられる数に制限はあるが、日本人だけでなく、外国人留学生も受け入れて欲しい。アメリカが独占していた知的人材を取り返そう。他国も同じ動きをすれば、アメリカの知の空洞化が進む。自国主義に走り世界に貢献しようとしないアメリカに知を独占させてはいけない。

 トランプ大統領の暴挙を愚挙にしよう。

 

 古い話だが、石油ショックのとき、エネルギーを海外に依存している日本は、苦境に陥ったが、日本が地道に開発したエネルギー技術や省エネ機器は、その後、世界の市場を席巻した。

 

 少し近い話では、コロナは中国発で自身も大きな被害を受けた。その一方、コロナ支援(中国には豊かな経験がある!?)をするとしてイタリアを取り込み、中国製のワクチン(効果は薄く、副作用が大きいようだが、ファイザー等を買えなかった国からは喉から手を出したいほど欲しい)を提供するといってアフリカ、中南米、アジア諸国などを取り込み、「コロナ」をチャンスに変えた。中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」はこのようにして進められている。

 さらに、怪しげなコロナワクチンを大量に売り、日本には大量のマスクを売り、しっかり儲けた。

 今回のトランプ関税でも、反アメリカの機運に乗じて、「中国圏」を広げようとしている。報道では、トランプ関税で苦境に陥っているように書いている。そういう面もあるが、同時に彼らはチャンスととらえている。実に、したたかだ。

 

 日本では、トランプ関税で被害を受ける中小企業を支援しようという動きがあり、勿論必要なことだが、消極的な位置づけに留まっている。同時に、積極的な位置づけ、トランプ関税を苦しみながらも克服した時、日本の自動車産業がより一層輝く未来を拓きたい。トランプ関税をチャンスとして捉え、日本の未来のために何をすればよいか、知恵を絞らねばならない。今の政治家には、そういう発想に乏しいようだ。

 

 すべてのピンチは、チャンスになる可能性を秘めている。

 「トランプ関税があり、それを克服した結果、日本の自動車産業は、一段と素晴らしいものになった」と近い未来に胸を張って言えるよう、これも古い言葉かもしれないが「産学官連携」して、明るい未来を築いてほしい。



2025年5月25日日曜日

(2650) 自民党は、米の販売価格を値上げしようとしていたのだろうか

 独占禁止法というのがある。「この独占禁止法の目的は,公正かつ自由な競争を促進し,事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。市場メカニズムが正しく機能していれば,事業者は,自らの創意工夫によって,より安くて優れた商品を提供して売上高を伸ばそうとしますし,消費者は,ニーズに合った商品を選択することができ,事業者間の競争によって,消費者の利益が確保されることになります」(公正取引委員会HP)

 

 現行は大手集荷業者を対象とした一般競争入札で、備蓄米が放出されており、全国農業協同組合(JA全農)が9割超を落札していた。まさに、「独禁法違反状態」にある。

 JA全農が一般競争入札で高値をつけたら、他の業者は手出しできない。流通の9割を支配すれば、価格も自在に設定できる。高値で買っても、それ以上の高値で売れ、中間マージンも自由に設定でききる。

 経営に苦しむ米農家から高値で買うなら、それ自体は悪くはない。しかし、米農家から安値で買い取った米(備蓄米)を高値でJA全農に売り、国が儲けて、何をしようとしているのだろうか。米価格の上昇で、米離れが懸念されている。

 

 族議員(特定の政策分野に精通して関連する省庁の政策決定に強い影響力を及ぼし、関連業界の利益を擁護してそれらの代弁者の役割も果たす国会議員の俗称)(Wikipedia)がいて、農林族(族議員の一。農作物の生産や輸入量調整など、農業政策に対し影響力をもつ。農林水産省とのつながりが深い)もいるそうだが、彼ら専門家は何をしているのだろうか。

 彼らは「政策分野に精通」することにより「関連業界の利益を擁護し」、その見返りを票として返してもらう人々だ、と考えると合点がいく。彼らは、日本の農業をよくしていくことに関心がないのだろ。

 

 一方、野党は何をしているのだろうか。「独禁法違反状態」を何故、放置しているのだろうか。自民党離れしているJA全農の票の「おこぼれ」をいただくためには、JA全農の利益に反することを言いたくないのかもしれない。考えすぎだろうか。

 

 政府は備蓄米を小売業者に直接売り渡すことも検討しているが、「配送ルート」を確保できるのかは懸念材料だ。また、多くの小売業者には精米設備がなく、玄米のまま仕入れた備蓄米の取り扱いも困難だ(産経新聞 2025/05/24)。随意契約には、公平性の問題もつきまとう。

 

 野党は江藤拓農林水産大臣を攻撃することに熱心で、それも悪くはないが、もっともっと優先順位の高い課題があるだろう。ここで良い提案をすれば評価も高まるチャンスだと思うのだが、日本の農業を支えるための、知恵も関心も能力もないのだろうか。私の「誤解」をあらためるような行動をとってほしい。

 

 小泉農林水産相は「随意契約」をさかんに言っているが、諸問題の解決とセットにならないと、解決には向かわない。就任早々には難しいかもしれないが、同農林部会長も務めていたそうだ。配送ルートについては、検討しているようだ。困難に立ち向かってほしい。

 

 米不足、米価高騰は悪いことだが、これを機に日本の農業政策が良い方向に向かえば、「禍転じて福となす」ともなりえる。

 

 添付図は、日本農業新聞「備蓄米放出 随意契約でどう変わる?」より。

https://www.agrinews.co.jp/news/index/307967 



2025年5月12日月曜日

(2649) 関税(自動車産業を念頭) ~ 素人談義 ~ その10

 赤沢氏、一人でよいのだろうか、と疑問に思っている。05/02の写真を見ると、アメリカ側が3人、日本側が1人だった。アメリカで開催しているので、たまたまだったのだろうか。

 

 交渉範囲は、多面にわたる。赤沢「経済再生担当大臣」は多分、適切な肩書なのだろうが、カバーしきれないのではないか。問題は、それだけではない。

 

 「日本の立場」といっても、一つにすっきりまとまっているわけではない。国内でも利害関係があり、複雑だ。それを一人で伝えるには、無理がある。二人おれば二つの立場から、三人おれば三つの立場から発言できる。

 また、交渉過程で、言葉尻をとらえて突っ込まれた時、当の本人では反論しにくく、窮地に追い込まれることもある。その時、もう一人いたら、助け舟を出せる。

 複数対一人では、複数人が絶対有利である。なぜ、こんなことになってしまったのだろうか。

 

 今回の交渉団代表は、赤沢氏が自ら手を挙げたと聞く。政治家としては、一大カケだと思う。大成功だと将来、総理大臣になれるかも知れないが、失敗と見なされたら、政治生命が絶たれる恐れもある。

 私の想像だが、勇気をもって手を挙げたのは赤沢氏一人だったので、一人になったのではないか。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉では、複数の日本政治家が動いていた。今回の体制は、いかにも貧弱で、なさけない。赤沢氏の資質を言っているのではなく、体制を言っている。

 

 一方、複数の複雑な代表団になると、互いに手柄争い、責任のなすり合いに頭が行ってしまい、日本国を代表してアメリカに対して国益を主張できなくなるのではないか。今の政治議論を聞いていると、与党・野党にかかわらず、そのような雰囲気で動いている。理念がない。もしそうなら、もう、国家の体をなしていない。

 

 こう考えると、かなり絶望的な気分になってきた。

 

 時々ニュースを見るだけで、綿密にフォローしていないからかも知れないが、一人では危ないという論調は聞こえてこない。

 

 因みに、日本側として大勢写っている04/17の写真もあるが、あれは全部、部下だ。代表は一人としても、それに意見を言えるような人が加わっているのが必要だが、それが、いない。

 

写真は、以下より

https://times.abema.tv/articles/-/10176420?page=1

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1861942






2025年5月6日火曜日

(2648) 関税(自動車産業を念頭) ~ 素人談義 ~ その9

(1) 228日、トランプ大統領とゼレンスキー大統領が、ホワイトハウスで会談して合意文書に署名する予定でしたが、激しい口論となって見送られていました。

(2) 426日には、フランシスコ教皇の葬儀が行われたバチカンで、トランプ大統領とゼレンスキー大統領が会談し、両国の関係改善を印象づけていました。

(3) 430日、アメリカとウクライナの両政府は、ウクライナ国内の鉱物資源の開発を共同で行うとする経済連携協定に署名しました。

 

 「安全の保障」は得られず、鉱物資源の制約も受け、ウクライナとしては不満だろうが、最悪を考えればずいぶん良いし、積極的な意味もある。

 

=====

 欧米のメディアによると、米国は合意の署名が見送られた2月末以降、 ①米国側がウクライナ資源の独占的な開発権や基金運用の決定権を持つ ②米国は過去の軍事支援額に達するまで資源開発で得られた利益を受け取る―などと定める、より自国側に有利な合意案をウクライナに提示した。

 この合意案に署名すれば、ウクライナは経済的自立性を失う上、欧州企業の受け入れが困難になり、目標とする欧州連合(EU)加盟が不可能になると指摘された。専門家からは米国の合意案を「帝国主義時代よりひどい」と評する声も出た。

 

 ↓

 

 ウクライナの発表によると、最終的な合意では同国資源の所有権はウクライナにあると規定。さらに米国は合意に基づき設立される基金への拠出義務を、金銭でなく軍事支援によっても果たせると定められた。米国が新規軍事支援に乗り出す可能性が生じた。

=====(産経新聞 202/05/02

 

 「fight or flight 」(戦うか逃げるか)、ゼレンスキー大統領は戦いを選んだ(選んでしまった?)。ひどい目にあったが、これしかなかっただろう。受け入れれば、植民地支配をうけることになっていた。はもはや失うものがなかったので戦うしかなく、結果として、最悪は免れた。ゼレンスキー大統領は、戦うことを示したことにより、トランプ大統領から政治家として評価されたのではないか。良い方向に向かう、一つのきっかけになったと思う。

 そして、アメリカはウクライナ国内に権益をもった。言い換えると、失うものができた。これは、ウクライナの安全に大きく寄与すると思う。プーチン大統領は、トランプ大統領が得たものを損なうような行動ができなくなった。

 

 この過程を日米の関税問題に当てはめると、どうなるか。

 日本は、アメリカと闘うことによって失うものがあまりにも多いので、戦うという選択肢はない。逃げる訳にもいかないので、モゾモゾするしかない。それはしかたがない。

 一方、やりとりを見ていて思うのだが、トランプ大統領が石破首相を尊敬するとは思えず、バカにするだろう。今後のことを考えると、その損失が大きい。石破首相がいつまでもつかは分からないが、しぶとく頑張っている。

 参議院選挙まで、自民党内には石破おろしがあるだろうが、野党は石破首相を応援している。主張すれば、節操なく何でも受け入れてくれるし、石破首相が継続している限り、自民党の岩盤支持者は去り、自民党支持率は下がり続け、野党にとっては参議院選挙で有利になる。 










2025年5月3日土曜日

(2647) 関税(自動車産業を念頭) ~ 素人談義 ~ その8

 トランプ大統領の言動パターンが固まってきて、読みやすくなってきました

 一つの特徴は、正反対のことを自信顔で話すパターンです。トランプ大統領が言っていることと反対の仮説を立てると、うまくいくケースが増えるでしょう

 

例1 中国との交渉

トランプ大統領が言っていること: 中国はアメリカとディールしたがっている

実際(多分): 早くディールしたいのはトランプ大統領で、周主席は待ちの姿勢

 

 高関税をかけあって、米中双方の中小企業がこれからどんどん倒産していく。どんどん倒産しても、周主席もトランプ大統領も気にしない。中国は、トランプ関税がなくても経済的に行き詰っていて、中小企業に構っておられない。トランプ大統領を支えているのは、多額の寄付金を出している大企業であり、こちらは大切にするが、貧乏な中小企業は、どうなってもよい。中小企業の倒産が続いても、二人は直接には影響されない。ここまでは似ている

 中小企業やその周辺の人たちの不満が、これからもどんどん高まっていく。周主席は問題なく、抑え込める。しかし、アメリカでは、不満が支持率の低下につながり、投票行動にも反映する。ディールが進まないと、トランプ大統領の基盤が確実に、徐々に崩れていく。中国の方は、よくわからない

 いずれにせよ、この取引は、「取引しよう」と先に言った方が不利になる。両方とも、じっとして、相手が先にアプローチしてくるのを我慢比べで待っている。周主席を先に動かさせるカードは、トランプ大統領は、持っていない

 

 

例2

トランプ大統領が言っていること:日本は選挙を控えて、早期に解決したがっている

実際:早期に解決したがっているのはアメリカで、日本は待ちの姿勢

 

 日本では参議院選挙が近づいており、アメリカに中途半端な妥協をすると、自民党は大敗する。選挙が近づいているので、中途半端な妥協で早期解決はできない。焦って解決しようとすることはない。トランプ大統領に強く言って変わるとは、もはや誰も思っていない。日本は、関税合戦はしない方が良い。日本ばかりでなく、多くの国が「柳に風」(相手の言動に逆らわず、うまく受け流す)戦術をとり始めた。それで良いと思う。日本は少し、まじめすぎるような気はするが(トランプ大統領にはWin-Winはなく、Win-Loseしかないだろう)

 自動車関税でトランプ大統領の言うままになると、日本は衰退してしまう。妥協する余地はないだろう。妥協しないのが理由で、政府の支持率が下がるとは思えない。だから、トランプ大統領が自動車関税を引き下げない限り、日本は動かないだろう。強いカードを先に出しちゃったので、日本に高い自動車関税を認めさせられるようなより強いカードは、トランプ大統領は持っていない

 日本との交渉がうまくいかない限り、その他の国との交渉が進まない。焦るのは、トランプ大統領だ。日本は、何十年とアメリカのいじめをかいくぐってきた経験と実績がある。そのノウハウは、官僚に受け継がれている。石破首相が官僚をうまく使っている限り、変なことにならないと思う。首相には、下手にリーダーシップを取らないでほしい。気がかりなのは、そこだけだ。時間はかかるが、良い方向に向かうだろう

 

写真の出所は、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250327/k10014761851000.html 



2025年4月29日火曜日

(2646) 関税(自動車産業を念頭) ~ 素人談義 ~ その7

=====

 …トランプ米大統領の支持率が、歴代大統領の同時期と比べて過去最低の39%になったと米紙ワシントン・ポストが27日報じた。トランプ氏は、政府機能の縮小や関税政策によって「個人や金融市場に顕者な混乱を引き起こした」(同紙)と厳しい評価を突きつけられた。

 主な政策では経済政策への不支持が61%。最近の金融市場の混乱も67%が支持せず、関税政策は64%が支持しなかった。

===== 産経新聞 2025/04/19

 

 「トランプ大統領の関税政策は米国民に損害を与える」と日本の素人や、アメリカでデモしている人が言っているだけではない。米国民の64%が関税政策を支持しないとはっきり数字で出てきた。この影響は大きいだろう

 

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 中間選挙では与党が議席を失う傾向が歴史的に強く、これにリセッションが重なれば、2026年の選挙では議会主導権が民主党に移る公算が大きいと、共和党のストラテジストはみている。そうなればトランプ氏の2期目後半の政権運営にも影響が及ぶ可能性がある。

===== https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-04-27/SVDX7ZT0G1KW00

 

 さて、トランプ大統領はどう動くか。私は次の三つだと思う

(1)  直近では、報道はフェイクだと主張する  既に反応している

(2)  短期的には、成果を誇示するため、日本を含めた諸外国への圧力を強める

(3) 中・長期的には、支持率を気にして(おくびにも出さない)、政策を調整する

 

 他国の首脳が何かを言っても藪蛇になるのは何回も見てきた。トランプ大統領に影響を与えるのは、他国の首脳ではなく、自国民の支持率だろう

 なのに、皆、トランプ大統領を説得しよう、納得してもらおう、と躍起になっている。必要なことではあるが、限界がある。圧力を強めようとしている今、がっぷり四つに組んでいる場合ではない。もう一つ別に大切なことがあるだろう

 アメリカ国民に、働きかけることだ。直接、政府が働きかけると、また、トランプ大統領が怒る。だから、政府は表立っては動かず、陰で働きかける。いわゆる情報戦の一種であるが、偽情報を流す必要はない。正しい情報をアメリカ国民に広げればよい

 

 (偽情報流布を含んだ)情報戦で、いつも日本は完敗している。「日本は戦略性がない」とたびたび批判される一つだろう。偽情報から日本を守り、非政府機関も含めた情報提供により日本を強くする、そのような戦略性を身に着ける。今回を機に、そのような戦略性強化の動きは、できないだろうか

 添付図の出所は、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250429/k10014792231000.html

  


2025年4月28日月曜日

(2645)「本当」が観える

考えて、考えて、考え疲れて、考えられなくなって。

「本当」が観えるのは、それからだ。そこに考えはない。

 

「本当」は、「考え」から観えず、「考えない」からも観えず、

「考えのむこう」から観える。

しかし、「考えのむこう」なら観える、というものでもない。

 

あと一つ、必要なものがある。

詩人 谷川俊太郎から言葉を借りれば、

「陽炎(カゲロウ)のようなゆらめときめき」

ではないか。

 

考え抜いて疲れたとき、

「陽炎(カゲロウ)のようなゆらめときめき」を感じ取りやすくなる。

ただし、考え抜いて疲れたとしても、それだけでは感じ取れない。

 

さらに一つ必要なのは、

「本当」を知りたいという、渇きだと思う。

 

=====

以上は、私の言葉。以下は、引用

=====

 

 陽炎

     谷川俊太郎

柔毛(ニコゲ)のようにけぶる春の木々に眼を憩わせ

空へとつづく地の静もりに耳を溶かし

陽にあたためられたせせらぎから匂い立つ

かすかななまぐささにおのが息をまぜ

私の感じたほどのことはもうすでに

数限りない人々が感じとってきたこと

私の考えたほどのことはもうすでに

数千年前の誰かが考えていたこと

けれどその珍しくもない束の間の

誰でもないこの私のこころとからだの

陽炎のようなゆらめきときめき

歓びの次に怖れが怖れの次に執着が

だがそのように名づけるそばから崩れてゆく

刻々にくり返す波として私は生きている

明日を知らないこのからだも

今日ならたしかに知っているのだ

子らの歌う素朴な調べにもかくれている

昔ながらの至福なら



2025年4月24日木曜日

(2644) 関税(自動車産業を念頭) ~ 素人談義 ~ その6

仙藤博文さん > さて、そんな戦略を日本国政府は持ち合わせているだろうか?

(Facebookでのコメント)

 

 日本国政府は、勿論! 持ち合わせていないだろうが、欧州の民主主義国家など、ほとんどの国も持ち合わせていないでしょう。何故なら、戦略を立てるためには「読み」(こう言えばトランプ大統領はこう動くだろう)が必要だが、ほとんど読めません。「直言すれば怒り出す」ことだけは確かそうですが、その「読み」だけでは戦略は立てられません

 

 もっとも良い戦略を組めそうなのは、プーチン大統領だと思います。彼の場合、「自分がトランプ大統領の立場だとこうするだろう」と自省すれば、それはかなり高い確率でトランプ大統領の行動と一致するだろからです

 

 では、何故、欧州の民主主義国家には読めないのでしょうか。道徳観が違うからです。もっと正確に言うと、トランプ大統領に道徳はないからです。代表的なのは次の二つです

・「他人に迷惑をかけてはいけない」という道徳は、トランプ大統領に皆無です

・「ルールは守らなければならない」という道徳も、トランプ大統領に皆無です

 

 トランプ大統領は、次のような行動をとっています

 

他人への思いやりがない

  アメリカからの支援援助停止でウクライナの人が何人死んでもかまわない。トランプ大統領から見れば、悪いことが起こるのは全部ゼレンスキー大統領の責任で、自分には関係ない

 

ルールについては、大統領は次のような原理で動いているようです

  既にあるルールは、自分勝手に変えてよい(GATTIMFはアメリカの利益を損なうので、守らなくてもよい)

  新しいルールを決めるのは自分で、他の人がどう言おうと関係ない

  自分で合意したルールでも守らなくてよい(安倍元首相と交わした合意を守る気はない)、他の人の決めたルールなぞ、なおさら守らない

 

 欧州の民主主義国家のリーダーは、先の二つの道徳を兼ね備えているから、選ばれました。だから、その前提で発想しがちで、そうである限りトランプ大統領の行動を読めません。アメリカ国民は、道徳を持ち合わせていない人を大統領に選びました

 

 また、特に、専門家は戦略を立てられません。何故なら、彼らは過去の事例から学び、理論を構築するが、トランプ大統領には、過去の事例が当てはまらないからです

 

 しかしながら、ようやくトランプ大統領の行動事例が積みあがってきたので、戦略を立てられるようになってきました

 

 トランプ大統領への対応は、次のように(トライ&エラー・仮説検証)組み立てていくとよいと思います

  トランプ大統領の行動をよく観察する

  仮説を立て、なんらかの対応をするが、失敗する。どのように、何故、失敗したかを分析し新たな仮説を立てる

  以上を繰り返しながら、知見を深め、正解を探り出す

 

 日本は、伝統的に戦略が苦手で、戦略の無いまま行動してきました。色々あったが、何故かこれまで、生き延びてきました。それは「トライ&エラー・仮説検証」を駆使してきたからだと思います

 

 日本は、戦略性に欠けるからこそ、戦略の通じないトランプ大統領にいち早く対応できる可能性があります。しょっぱなから「トライ&エラー・仮説検証」から入っているからです

 

 赤澤大臣が、「優先順位をそちらで決めてくださいよ」と言ったり、もらったキャップ(「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」帽子)を嬉しそうにかぶっていたり、と批判されています。戦略思考からすれば当然の批判です

 

 でも、恥も外聞もなく、見栄も誇りもなく、相手の懐に飛び込んで交渉するのは、いかにも日本的だと思います。案外、トランプ大統領にはうまくいくかもしれません(石破首相に戦略性を期待しても無理だから、ここに期待するしかありません)

 

 うまくいく保証はありませんが、どの国も同じで、日本が後れを取っているわけではありません。ロシアも今は上手に付き合っているが、いつ手のひら返しされるか分かりません。ただ、トランプ大統領がロシアでのビジネスを期待している限り、ロシアは大丈夫で、プーチン大統領はそのことを十分理解して、うまく立ち回るでしょう。イスラエルは安泰でしょう。この二つの国は例外、同じようにはなれません)

 

 トランプ大統領は、敵に対しては厳しいですが、子分には柔和に対します(対日本でのトランプ大統領の現状・いつ激変するか予想できない)。子分が役立たずだとみなせば、義理も人情もなく切り捨てます

 

 なお、トランプ大統領への戦略を立てるのに最も大切なキーワードは、「ソシオパス」でしょう

 

=====

平たく言うと、ソシオパスとは「反社会的な行動をためらわない、良心が欠けた人」です。臨床心理士のベサニー・ジュビー氏によると、ソシオパス、またはサイコパスは「反社会性パーソナリティ障害」をもつ人を指します。

 

ハーバード大学医学大学院助教授のロイス・チョイ・ケイン氏によると、反社会性パーソナリティ障害の特徴は「個人的利益や快楽のために違法行為、欺瞞行為、搾取的行為、無謀な行為を行ない、良心の呵責を感じない」で、以下の傾向があるそうです。

 

  衝動的に行動する

  自分の行為が他者に及ぼす悪影響に関心を示さない

  請求書の支払いをしないなど、社会的・金銭的な責任を果たさない

  他者への共感に欠ける

  パートナーを利用・虐待する

  相手や社会を責めて自分を正当化する

=====

https://studyhacker.net/what-is-sociopath

 

関連参考図書

世界で最も危険な男 「トランプ家の暗部」を姪が告発

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%A7%E6%9C%80%E3%82%82%E5%8D%B1%E9%99%BA%E3%81%AA%E7%94%B7_%E3%80%8C%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97%E5%AE%B6%E3%81%AE%E6%9A%97%E9%83%A8%E3%80%8D%E3%82%92%E5%A7%AA%E3%81%8C%E5%91%8A%E7%99%BA