画面の説明

このブログは、左側の投稿欄と右側の情報欄とから成り立っています。

2020年12月30日水曜日

(2199)  カール・マルクス『資本論』(1-1) / 100分de名著

 ◆ 最新投稿情報

=====

(K1340) (詐欺被害)あの人が勧める商品なら買いたい(2) / 認知症の人の不可解な行動(54) <認知症>

http://kagayakiken.blogspot.com/2020/12/k1340254.html

=====

 

☆☆

第1回では、マルクスの理論的土台となる「物質代謝論」を軸に、自然との関係で人間の「労働」について分析し、モノに振り回され、大事な物(例えば、社会の「富」)を失っていく私たちの生活について考察します

☆☆

 

第1回  4日放送/ 6日再放送

  タイトル: 「商品」に振り回される私たち

 

 

【テキストの項目】

(1)  「労働」--人間だけが行うもの

(2)  『資本論』は「富」から始まる

(3)  「商品」の正体

(4)  「資本」が森を囲い込む

(5)   目先の金儲けを止められない

 

(6)   必要な物より「売れそうな」モノ

(7)   モノに使われ、振り回される人間

(8)  「民営化」という名の囲い込み

(9)   社会の「富」が危ない!

 

【展開】

(1)  「労働」--人間だけが行うもの

 家、洋服、食べ物などを得るために、人間は積極的に自然に働きかけ、自然を変容し、自らの欲求を満たしていきます。こうした自然と人間との循環的な過程を、マルクスは生理学の用語を用いて、「物質代謝」と呼びました。そして、自然を規制し、制御する行為こそが、「労働」だとマルクスは考えたのです。

 人間と他の生き物との間には、決定的な違いがある。それは、人間だけが、明確な目的を持った、意識的な「労働」を介して自然との物質代謝を行っているということです。

 マルクスは、人間の意識的かつ合目的的な活動である労働が資本主義のもとでどのように営まれているかを考察することで、人間と自然の関係がどう変わったかを明らかにし、そこから資本主義社会の歴史的特殊性に迫ろうとしたのです。

 

(2)  『資本論』は「富」から始まる

 資本主義社会における労働は、「商品」を生み出す。けれども、裏を返せば、資本主義以外の社会における労働が生み出す富は、必ずしも商品として現れるわけではない。

 貨幣では必ずしも計測できないけれども、一人ひとりが豊かに生きるために必要なものがリッチな状態、それが社会の「富」なのです。例えば、きれいな空気や水が潤沢にあること。これも社会の「富」です。緑豊かな森、誰もが思い思いに憩える公園、地域の図書館や公民館などがたくさんあることも、社会にとって大事な「富」でしょう。知識や文化・芸術も、コミュニケーション能力や職人技もそうです。

 資本主義社会では、商品にならない富は、奪われ、無くなっていきます。

 

(3)  「商品」の正体

 私(=解説者)が子どもの頃、飲料水は「商品」ではなく、水道からタダで飲める物でした。ペツトボトルに入った水が「商品」として定着したのは、ここ20年くらいのことです。このように、ありとあらゆる物を「商品」にしようとするのが、資本主義の大きな特徴の一つです。

 もちろん、資本主義以前の社会にも商品はありました。しかし、…日常の生活に必要な物は基本的に自分たちで作ったり、みんなで集めてきたり、分け合いながら暮らしていました。

 巷には、魅力的な「商品」があふれています。お金を出せば何でも手に入るようになったことで、私たちの暮らしは「豊かになった」かのようにも見えます。しかし、まさに商品化によって社会の富が「貧しくなっている」ことを、マルクスは一貫して問題視したのです。

 

(4)  「資本」が森を囲い込む

 かつてコモンだった森や水は、誰もがアクセスできるという意味で「潤沢」な「富」でした。しかし、これは資本主義にとつて非常に都合が悪い。お金を出し買わなくても、生活に必要な物が手に入るなら、商品を作っても売れないからです。だから、コモンを解体して独占し、あるいは破壊までして、買わなければいけないモノ、つまり「商品」にしようとするのです。

 とはいえ、人々を閉め出して森を独占したとしても、そこに生えている木を伐採し、製材しなければ「商品」になりません。「商品」にするためには「労働」が必要です。この労働を担ってくれるのが、森から締め出され、薪を買うためにお金を必要としている人々。資本による囲い込みは、資本にとつて二重の意味で好都合でした。

 

(5)   目先の金儲けを止められない

 マルクスは、「商品生産が全面化された社会」――つまり、ありとあらゆる物が商品化されていく資本主義社会では、物を作る目的、すなわち労働の目的が他の社会とは大きく異なると説いています。

 資本主義以前の労働は、基本的に「人間の欲求を満たす」ための労働だったとマルクスはいいます。具体的欲求を満たすための生産活動には、一定の限界があるものです。

 しかし、資本主義社会では「資本を増やす」こと自体が目的になっていて、利潤追求を止められない。アマゾンのCEOジェフ・ベゾスは、世界一の大富豪ですが、資産が2,000億ドルを超えても 引退する気は全然なさそうです。

 

 以下は、後日書きます。

(6)   必要な物より「売れそうな」モノ

(7)   モノに使われ、振り回される人間

(8)  「民営化」という名の囲い込み

(9)   社会の「富」が危ない!

 

<出典>

斎藤幸平(2021/1)、カール・マルクス『資本論』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)




0 件のコメント:

コメントを投稿