◆ 最新投稿情報
=====
(K1314) (鏡現象・人形現象)懐かしい人と楽しくおしゃべり(1) / 認知症の人の不可解な行動(49) <認知症>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/12/k1314149.html
=====
☆☆
要するに、芸術作品の素晴らしさを心から受容できるのも、その知識や態度、構えなどの出会いの前提となるものを家庭や学校から学んでいる、言い換えれば芸術と出会うための「遺産」があるからだと言うのです
☆☆
第1回 7日放送/ 9日再放送
タイトル: 私という社会
【テキストの項目】
(1) 好きで選んだはずなのに
(2) 農村の優秀少年、パリへ
(3) まずは実態を知ろう
(4) 先鋭な階級意識
(5) ブルデュー社会学の焦点
(6) 「稲妻の一撃」の否定
(7) 難解な理論と文体
(8) 同じ写真に対する反応の違いはどこから?
(9) 眼は歴史の産物である
(10)ハビトゥスとは何か
(11)普遍的に応用可能な規則
(12)ハビトゥスはどこで構築されるのか
(13)分類し、分類される
【展開】
(1) 好きで選んだはずなのに
(2) 農村の優秀少年、パリへ
(3) まずは実態を知ろう
(4) 先鋭な階級意識
以上は、既に書きました。
(5) ブルデュー社会学の焦点
大雑把に言って、社会学には大きく二つの視点があります。ひとつは、全体的な現象を見るという視点です。もうひとつは、その問題の中で人びとが実際に何をやっているかを調べる視点です。ブルデューはこの両方をやろうとしました。
ブルデューが『ディスタンクシオン』において焦点を当てたのも、人びとの文化の受容と実践という、日常的な行為です。その分析を通して、趣味と社会構造との密接な関係を明らかにし、趣味や嗜好という非常に個人的な領域が、いかに社会によって規定されているかを明示したわけです。
さらに、人間の自由とは何か、あるいはもっと言えば、人間とはそもそも何なのか、という問いに正面から取り組みました。
(6) 「稲妻の一撃」の否定
すばらしい芸術や音楽との、突然の出会い。それは魂を震わすような、ドラマティックな瞬間です。彼はこの出会いの瞬間、何か霊的な、偶然の、心と心とが直接ぶつかり合うような触れ合いを「稲妻の一撃」と言い換え、そしてあっさりとそれを否定します。「芸術作品との出会いというのは、普通人々がそこに見たがるようなあの稲妻の一撃といった側面などまったく
もってはいない」。芸術作品に自然に出会うということそれ自体が幻想だというわけです。この偶然の神話の否定が、『ディスタンクシオン』全体を貫いています。
私たちの日常的な文化的行為、すなわち趣味は、学歴と出身階層によって規定されているというのです。
(7) 難解な理論と文体
『ディスタンクシオン』に限らず、ブルデューの著作を読みづらくしている原因のひとつに、その複雑でややこしくて晦渋な文体があります。
おもしろい話が残っています。アメリカの哲学者ジョン・サールが、君はどうしてあんなに難解な書き方をするのかとフーコーに聞いたところ、フランスで認められるためには理解不可能な部分が10%はなければならないと答えたというのです。驚いたサールがのちにブルデューにこの話をしたところ、「10%ではだめで、少なくともその二倍、20%は、理解不可能な部分がなければ」と語ったそうです(共加藤晴久『ブルデュー
闘う知識人』講談社選書メチェ)。
(8) 同じ写真に対する反応の違いはどこから?
ブルデューは、老婆の節くれだった手の写真(添付図)を見せて、人びとがどんな反応を示すかを調査しました。『ディスタンクシオン』には、人びとが実際に言った言葉が紹介されています。最も貧しい階層に属するパリの労働者は「このおばあさんは、きっと働きづめだったにちがいない。(中略)ああ、これはどう見ても男爵夫人やタイビストの手じゃないね」など、倫理的な共感を示しています。一方、学歴の高いパリの上級技術者は「これはとても美しい写真だと思います。まさしく労働の象徴だ。私はフロベールの年とった召使女を思いだしますね」と言っている。反応がまったく違うわけです。
(9) 眼は歴史の産物である
「眼」とは歴史の産物であり、それは教育によって再生産される。
つまり、純粋無垢な眼など存在しないというわけです。私たちの眼、つまり見たものに好感を持ったり嫌ったりする姿勢(性向)は、私たちそれぞれが享受してきた社会環境、つまり歴史によってつくられるとブルデューは主張します。
ブルデューは、私たちの行為だけでなく、態度や能力、主観的な判断や評価、無意識の感覚や身体所作までも、社会や歴史によって規定され、構築されたものとして捉えます。それが彼にとつての「人間」の本質なのです。この人間の本質を描くためにブルデューが導入したのが、「ハビトウス」「界」「文化資本」という独自の概念です。
以降は、後日書きます。
(10)ハビトゥスとは何か
(11)普遍的に応用可能な規則
(12)ハビトゥスはどこで構築されるのか
(13)分類し、分類される
<出典>
岸政彦(2020/12)、ブルデュー『ディスタンクシオン』、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
0 件のコメント:
コメントを投稿