◆ 最新投稿情報
=====
(K1336) 日本での議論 / コロナ禍「命の選別」直面(2) <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/12/k1336-2.html
=====
☆☆
何でも好き勝手にできるとか、どんな自分にでもなれるということではありません。持って生まれたものに方向づけられ、生きる社会の構造に縛られ、それでもその中でなんとか必死に生きている。自由とはそういうもの
☆☆
第4回 28日放送/ 30日再放送
タイトル: 人生の社会学
放映は、 月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、 水曜日 午前 05:30~05:55
及び 午後 00:00~00:25
【テキストの項目】
(1) 境界と境界感覚
(2) あらゆる行為者は合理的である
(3) 「闘争」や「利得」が意味するもの
(4) 他者の合理性
(5) 「他者の合理性」を描く日本の社会学者たち
(6) なぜ立ち上がらないかをまず理解する
(7) 社会には複数の合理性が存在する
(8) 幻想に逃げず現実を直視する
(9) 不自由を知るという自由
【展開】
(1) 境界と境界感覚
(2) あらゆる行為者は合理的である
(3) 「闘争」や「利得」が意味するもの
(4) 他者の合理性
以上は、既に書きました。
(5) 「他者の合理性」を描く日本の社会学者たち
人はハビトウスによって傾向づけられ、構造や社会条件に縛られながらも、その中で一生懸命に生きています。ここ最近、このように全体の構造を意識しながら、そこで生きる個人の生活史を聞き取ったり参与観察をしたりして、人生の社会学を書く社会学者が日本語圏でも増えています。以下に紹介する調査研究は、直接ブルデューに影響を受けているわけではありませんが、とても近いことを述べていると思います。
丸山里美、『女性ホームレスとして生きる――貧困と排除の社会学』
打越正行、『ヤンキーと地元――解体屋、風俗経営者、ヤミ金業者になった沖縄の若者たち』
石岡丈昇、『ローカルボクサーと貧困世界――マニラのボクシングジムにみる身体文化』
(6) なぜ立ち上がらないかをまず理解する
ブルデューの問いかけは現実的です。知識人たちの中には民衆にロマンを抱く人も多いのですが、ブルデューは非現実的な認識にいたる手前で踏みとどまります。人びとが圧政に苦しむ社会でも、楽天的に「やがて下からの革命が起こるだろう」とは考えません。逆に、民衆は「愚かな」人々だから、ただ苦しみに甘んじているのだ、とも考えません。
そこには彼らのハビトゥスがあり、相応の合理性があるのだとブルデューは考えます。「いったいどうして民衆は革命を起こさないのだ?」ではなく、「革命を起こさないことの理由があるはずだ。まずはそれを丁寧に理解しよう」というのが、ブルデューを貫く信念なのです。
(7) 社会には複数の合理性が存在する
この社会には、複数の合理性が存在しています。他者の行為というものは、傍から見ると「なぜそんなことをしているのか」と疑間に思うことがありますが、その人の立場になってみるとわかることがある。「私の合理性」とは違った合理性があるのです。しかし、ここで「私はあなたを完璧に理解できた」と言ってしまうのも、ある種の暴力でしょう。他者を完全に理解することは無理だと思います。
他者の合理性とは、「その状況だったら僕でもそうします」という話です。そのとき何を媒介にして理解が可能になるのでしょうか。感覚や感情などではなく、もっとも広い意味での合理性によって、ではないでしようか。
(8) 幻想に逃げず現実を直視する
それでも大きな歴史全体の歩みとしては、私たちの社会は一歩ずつ前進していると信じています。そのことを高らかに謳い上げたりはしないけれど、心のどこかにそっと、そんなかすかな希望を置いています。
そして、ブルデューもきっと同じだったのではないかと思います。ですから彼は、幻想を持つことなく社会を直視することができた。社会学を通じて、幻想に逃げることなく希望を持とうとしたのがブルデューなのです。
(9) 不自由を知るという自由
私たちは、自由とは何の規則にも従っていないことだと考えがちですが、何の規則にも従わないことはそもそも私たちには不可能です。有限の規則から無限の行為を算出していくこと、それこそが私たちに与えられている自由なのではないでしょうか。
ですから、自分の置かれている状況を理解すること、自分を規定する構造の正体を見極めることが、自由になる条件だとも言えます。私たちはハビトゥスによって分類される存在ですが、幸いにしてその分類図式自体を認識することができます。それは、人間が持ち得る自由のひとつではないでしようか。
<出典>
岸政彦(2020/12)、ブルデュー『ディスタンクシオン』、100分de名著、NHKテキスト(NHK出版)
0 件のコメント:
コメントを投稿