2019年6月30日日曜日

(1650) 「牧師といのちの崖」 メモと感想

 
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(K0791) 「老後に2000万円必要」問題(5) / 答申の主張から的外れ <高齢期の家庭経済>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k079120005.html
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 昨日、映画を観ました。
 
===== 引用はじめ
 和歌山県白浜町にある観光名所・三段壁で、いのちの電話を運営しているのが牧師・藤藪庸一。
 映画は自殺志願者たちを死の淵から救い、生活再建を目指して共同生活をおくるという独自の取り組みに密着した。
 藤藪は、人生に絶望してやってきた自殺志願者の声に耳を傾ける。借金や人間関係のトラブル、精神的な病など様々な問題を抱え、帰る場所のない人々に教会を開放し、共に暮らしながら、生きていく方法を探していく。
===== 引用おわり
ドキュメンタリー映画「牧師といのちの崖」公式サイト
https://www.bokushitogake.com/
 

メモ

(1)  ずっと死のうとしているわけではない。波がある。死のうとしている時に三段壁にいると危険だ。ともかく、そこから引き離す。死のうと言う気持ちも、その時が過ぎれば和らいでいく

(2)  「明日の朝8時30分から朝食を食べよう」。小さな約束を繰り返していくことが大切だ

(3)  もの凄い寂しさが湧いてきて、寂しくて、寂しくて… このままでは死ねないと思いました

(4)  僕が今日死のうが、明日死のうが、誰も気にしないだろうってリアルな確信を持っちゃったんですよ。その時、死のうと思いました。本当は、気にしてくれていたのですが、それが分からなかった

(5)  昔は親がいなくて自死しようとする人が多かった。最近は、自死しようとする人に、親がいることが多い。同居していることもある。ただ、会話がない
 

感想

(1)  冒頭、三段壁から救出した女性は、2日後には制止を振り切ってバスで去ってしまった。藤藪は、十分フォローできなかったと悔やんだ。私は、その時取材があったのも、原因になっていたと思う。では取材しなかった方が良かったかというと、私はそうでもないと思う

(2)  最後に、撮影された一人が母親のもとに戻り3年後に自死した話が、追加されていた

(3)  多くの命を助けたと同時に、助けられなかった命もあった。目を逸らしてはいけない。助けられなかった命かあっても、働きかけを続ける。凄い使命感と精神力だ
 

6/29()7/5() 1週間限定
連日10:30よりロードショー
元町映画館(神戸市)
https://www.motoei.com/schedule.html


2019年6月29日土曜日

(1649)  小松左京『小松左京スペシャル』(1-2) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K0790)  優しくするってどういうこと? <臨死期><親しい人の死>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k0790.html
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第1回  1日放送/ 3日再放送

  タイトル: 原点は「戦争」にあり--『地には平和を』
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 


【テキストの項目】
(1)  SF作家、小松左京の誕生
(2)  書かなければならない小説
 

【展開】

(1)  SF作家、小松左京の誕生

 小松左京は、1931年に生まれました。1923年の関東大震災に遭った母から、子どもの頃の小松は被災の体系談を聞かされて育ったそうです。千葉の網元だった父の実家も大震災で大きな被害を受けたといいます。
 四つ年上の兄が買ってもらっていた『少年倶楽部』『子供の科学』を、小松も三、四歳の頃から一緒に読んでいたそうてす。中学二年生の時、図書委員を務め、図書館に揃っていた新潮社の『世界文学全集』を繙きました。後に「私の文学観を決めた」とまでいわしめたのが、全集第一巻に収められていたダンテ・アリギエールの長編叙事詩『神曲』でした。
 太平洋戦争が開戦し、入学先の兵庫県立第一中では、空襲と軍事教練に明け暮れる日々を過ごしました。軍事訓練の教官や担任の教官による理不尽な暴力、罵倒に対する怒りを、この時期のことを述べる時に小松は露出しています。
 そして終戦。14歳の小松には「解放感も喜びもすぐにはわいてこず、気だるい虚脱感だけが残った」(『自伝』)。この感覚はやがてアブレゲール(戦後派)特有のニヒリズムに通じていきます。
 


(2)  書かなければならない小説

 『地には平和を』ではもし1945815日に、一部の陸軍将校と近衛師団参謀が起こしたクーデターが未遂に終わらず、成功してしまっていたら・・・という反実仮想の状況が描かれています。
 『戦争はなかった』では、大東亜戦争の記憶、太平洋戦争の記録が跡形もなく消えてしまった世界に、主人公がある日突然投げ込まれます。
 『地には平和を』では誤った歴史が非現実として除斥の対象となりますが、『戦争はなかった』では正しい歴史が非現実として排除されてしまう。筋立ては正反対ですが、テーマは通底しています。戦後の現実に対する深い懐疑です。
 

<出典>
宮崎哲也(2019/7)、小松左京『小松左京スペシャル』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

2019年6月28日金曜日

(1648)  視聴率の弊害

 
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(K0789) 「老後に2000万円必要」問題(4) / どこがおかしいのか <高齢期の家庭経済>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k078920004.html
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 視聴率が参加になる数値なのは、まちがいはない。

===== 引用はじめ
 もろもろ問題点もあるのかもしれないが、参考になる数値なのはまちがいない。ドラマ『家政婦のミタ』が40%を超え、『半沢直樹』がそれを超えた視聴率をたたき出した時は、実際多くの人びとがこれらの作品に熱中していた。40%の数字に見合った反応が、そこいら中にあふれ返っていたと思う。
===== 引用おわり
https://www.huffingtonpost.jp/osamu-sakai/tv-rating_b_7481414.html
 

 同時に、視聴率には二つの大きな弊害があると思う。
 
 
 一つ目の弊害は、「視聴率は低いが良質な番組」が駆逐されてしまう。また、視聴率を高めるなければならないという制限で、番組制作が歪められることである。
 
===== 引用はじめ
 他局を真似し、視聴率が取れれば同じネタを繰り返す――。こうした「お手軽な」姿勢は、やがてニュース現場の記者やディレクターにも影響し、人気取り優先のネタ選び・取材が幅を利かせ、ニュースの意味も分からぬ人たちが伝え手となってしまった。
 その結果、ニュースの価値判断を自らできないという状況が深刻になっている。テレビは速報性が重要なのに、速報よりもある程度視聴者が知っているニュースを優先するという、本末転倒な価値観が幅を利かせている。
===== 引用おわり
https://diamond.jp/articles/-/139791?page=4
添付写真は、このサイトから転載した。
 
 娯楽番組は、視聴率を指標にして良いだろう。見ていてつまらなければ、視聴率が下がる。つまらないけれど生き残るべき娯楽番組はないだろう。しかし、テレビの使命は娯楽番組の供給だけではない。娯楽番組でない番組については、視聴率以外の指標が必要なのではないか。


 二つ目の弊害は、視聴が視聴率に引っ張られてしまうことである。友人との話で話題にするのは、視聴率の高い番組だろう。視聴率の低い、相手が見ていないような番組を話題にしても盛り上がらない。その結果として、どの番組を見るかを自分で決めなくなってしまう。評判の番組を単に渡り歩いてしまう。これは、主体性の放棄にほかならない。

2019年6月27日木曜日

(1647)  小松左京『小松左京スペシャル』(1-1) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K0788)  生き続けることの苦しさ <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k0788.html
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第1回  1日放送/ 3日再放送
  タイトル: 原点は「戦争」にあり--『地には平和を』
 

【あらずし】
===== 引用はじめ
 昭和2010月末の志賀山中、15歳の少年である河野康夫は、学徒で編成された本土防衛特別隊「黒桜隊」の少年兵として米軍の本土上陸作戦に抵抗する戦いの中にいたが、本隊よりはぐれ、1人山中をさまよっていた。そして絶望的な戦いの中で食糧を得るために米軍の弾薬集積地を襲うが、撃たれて瀕死の重傷を負う。最期を悟り、手榴弾で自決しようとするが、謎の人物に助けられた。彼は自らを「Tマン」と名乗り、「この歴史は間違っている。したがって本来の歴史に修正するのだ」と康夫に告げる。「日本人が全て悠久の大義に生きることのどこが間違っている」と反撥しなおも自殺を図る康夫だが、Tマンの言う「本来の歴史」が実際に起こり得ると悟って戦慄する。
 やがて、本来の歴史に修正された戦後世界で、康夫は妻子と行楽に訪れた志賀高原で、黒い桜を象った見慣れぬエボナイト製の胸章を見つける。彼はそれを手にしたとき、「この世界」について何故かおぞましい腐臭を感じるのであった。
 この作品は、815日の終戦を決めた御前会議でクーデターが発生し、主戦派が政権を奪取することで本土決戦が起こる「もう一つの歴史」を作ろうとした5000年後の世界から来た時間犯罪者と、それを阻止しようとした時間パトロールの物語である。
===== 引用おわり
Wikipedia『地には平和を』
 


【テキストの項目】
(1)  SF作家、小松左京の誕生
(2)  書かなければならない小説
 



<出典>
宮崎哲也(2019/7)、小松左京『小松左京スペシャル』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

2019年6月26日水曜日

(1646)  小松左京『小松左京スペシャル』(0) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K0787) 「老後に2000万円必要」問題(3) / 世論・経済界は何を言っているか <高齢期の家庭経済>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k078720003.html
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 7月の「100de名著」 小松左京『小松左京スペシャル』が、71()から始まります。Eテレ。

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
講師は、宮崎哲也(評論家)
 


<全4回のシリーズ>  いずれも5月

【はじめに】  戦後日本SFとは何だったのか--小松左京を通じて
 
第1回  1日放送/ 3日再放送
  タイトル: 原点は「戦争」にあり--『地には平和を』
 
第2回  8日放送/ 10日再放送
  タイトル: 滅びとアイデンティティ--『日本沈没』
 
第3回  15日放送/ 17日再放送
  タイトル: 深層心理と宇宙をつなぐ--『ゴルディアスの結び目』
 
第4回  22日放送/ 24日再放送
  タイトル: 宇宙にとって知性とは何か--『虚無回廊』
 
【はじめに】  戦後日本SFとは何だったのか--小松左京を通じて

 

 小松左京は、星新一や筒井康隆と並んで「SF御三家」と呼ばれ、戦後のSF界の基礎を築き、その可能性を大きく押し広げる偉業を成し遂げた人物です。
 SFに「サイエンス・フィクション、即ち空想科学小説」という訳語を当てるだけではすみません。「サイエンス」を「合理的に体系化された諸学」、即ち近代以降の自然科学、社会科学、人文(科)学の総体を示すと解釈し、SFとはその総体を主題とする小説であると見做す考え方もあります。
 今日のSFは「トランスサイエンス」の領域、つまり「サイエンス」が未だ答えを出せない問題域に入っていると言われています。また、SFは哲学や宗教、もっといえば人間の実存の問題を問うこともできます。

 
 『地には平和を』で小松は、自身の戦時や敗戦直後の生々しい体験を、物語を通じて、普遍的、抽象的な問題に変換して見せています。

 
 『日本沈没』は、上下巻合わせて460万部にも及ぶベストセラーです。その構想のスケールの大きさ、道具立てのリアルさ、そして物語の背景にある問題意識の深さは、発刊から45年以上を経た今日でも少しも古色を帯びていません。単なる「近未来小説」とは違って、SFの強みが遺憾なく発揮された作品であったがために、多くの読者を得たといえるでしょう。
 
 宇宙の構造と人間型知性のあり様、そして個の存在の意味を繋ぐ「物語」としてのSF。これは小松SFのメインストリームである、いわば「宇宙構造探索系」の作品に共通する根源的なテーマです。『ゴルディアスの結び目』『虚無回廊』は、この系列にある作品です。
 


 「SFの視点にたてば、あらゆる形式の文学を、――神話、伝承、古典、通俗すべてのものを、相互に等価なものと見なすことができる。このことはやがて<文学の文学性>を、実体概念でなく、機能概念として見る味方に導く」(小松左京『拝啓イワン・エフレーモア様』)
 

<出典>
宮崎哲也(2019/7)、小松左京『小松左京スペシャル』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

 

2019年6月25日火曜日

(1645)  どういう人へのアドバイスなのか

 
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(K0786)  認知症診断を早く受けることを勧める理由 <脳の無健康>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k0786.html
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 Facebook友達の赤木 美津子さんが「他人の目や考えを意識しすぎてしまう人の為のちょっと気持ちが楽になる10のアドバイス」を紹介していました(6/21)。興味深い内容なので引用します。

 私が思ったのは、「どういう人へのアドバイスなのか」ということです。タイトルはそれを踏まえて、「他人の目や考えを意識しすぎてしまう人の為の」「ちょっと気持ちが楽になる10のアドバイス」となっています。前半を忘れることが多く、これを忘れたアドバイスは、該当しない人にとっては的外れで、「小さな親切、大きなお世話」になってしまいます。
 
 添付図の右側が「10のアドバイス」で、それに対応する資質を想定して私が書いたのが左側です。左側の資質をもつ人にとってはありがたいアドバイスだが、そうでない人にとってはあまり役に立ちません。下手をすると違う資質を持っている人の「偏り」を助長してしまうこともあります。「アドバイスを言う」のは簡単ですが、相手にとって役立つアドバイスになっているのは、むしろ稀かもしれません。
 

 因みに、赤木 美津子さん「やっぱり6用?」とコメントしています。

 エニアグラムのタイプ6の意味です。
===== 引用はじめ
タイプ6<ニックネーム:忠実な人>


 タイプ6このタイプの人は、真面目、誠実であることを大切にし、周りと仲良くしたいという気持ちを人一倍強く持っています。何事に対しても忠実で誠実であり、責任感が強く、互いに支えあうシステムややり方で、協力的に、一所懸命に働きます。
 何事によらず、誤ったことをしてしまうのではないかという不安の感情をもち、不安の感情に対処するために自分の外側にあるものに頼ろうとします。規則や規範を尊び、何かのグループに属しようとし、権威ある人物に従順で、組織から命じられたことは忠実に実行しようとします。
 そのため、自分から積極的に物事を決めることはしようとせず、ずるずると結論を引き延ばす傾向が見られます。豊かな感情の持ち主なので、タイプ2と見誤られることがあります。
 このようなことから私たちは「忠実な人」(THE LOYALIST)と呼びます。
===== 引用おわり
https://www.enneagram.ne.jp/about/about_type
 

 上の説明を見て自分もそうだと思う方、「10のアドバイス」にピンとくる方、あるいは左側の「資質」が当てはまる方は、タイプ6かもしれません。
 


<出典>
他人の目や考えを意識しすぎてしまう人の為のちょっと気持ちが楽になる10のアドバイス
http://karapaia.com/archives/52275171.html?fbclid=IwAR2iDm_iRLbTXr2A4UyWcsgojhkjJHxIR4z9uJY9HjBJOx56WozTdaGhV_g


 

2019年6月24日月曜日

(1644) 【来月予告】『小松左京スペシャル』。【投稿リスト】シュピリ『アルプスの少女ハイジ』 / 100分de名著

 
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(K0785) 「老後に2000万円必要」問題(2) / 野党は何を言っているか <高齢期の家庭経済>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k078520002.html
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【来月予告】 『小松左京スペシャル』 / 100de名著
 
 2019年7月号 (100de名著)    テキストは、6月25日発売予定(NHK出版)
『小松左京スペシャル』。講師:宮崎哲弥(評論家)
 
 神なき時代の「神」を求めて
 
 宇宙全体のなかで、この「私」の存在にはどんな意味があるのか? 人知を超えた「何か」は存在するのか? かつては宗教的テキストがになったこれらの問題意識に、小松左京はSFという形式で挑んだ――。「地には平和を」『日本沈没』『虚無回廊』「ゴルディアスの結び目」等から、その壮大な試みに迫る!
 


【投稿リスト】 シュピリ『アルプスの少女ハイジ』

公式解説は、
https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/88_heidi/index.html#box01
 
 
私が書いたのは、

 
(1619) シュピリ『アルプスの少女ハイジ』(0) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/05/16190100de.html
 

(1621) シュピリ『アルプスの少女ハイジ』(1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/16211100de.html
 

(1628)  シュピリ『アルプスの少女ハイジ』(2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1628-2100de.html
 

(1635)  シュピリ『アルプスの少女ハイジ』(3) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1635-3100de.html


(1642)  シュピリ『アルプスの少女ハイジ』(4) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1642-4100de.html
 


<出典>
松永美穂(2019/6)、シュピリ『アルプスの少女ハイジ』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

2019年6月23日日曜日

(1643)  勇気の系譜 第一部 使命(3) 村山元宏さん

 
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(K0784)  存在感がなくなる(3) 別の選択肢。「高級老人ホーム」とは <見守り>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k0784-3.html
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 村山は、県警によると、地震直後に町役場から南西約1キロの大槌交番にいたが、町役場に急行。ほかの警察官とともに住民を避難誘導しているところ、津波に流された。
 「今、流れる屋根の上にいる。濁流に呑(の)み込まれた。命の危険を感じる」。村山は当時、切迫した内容の無線を伝えていた。自らの命が危ぶまれるその状況でも、村山は、漂流している住民を流れる屋根に引き上げて救助したという。
 地震発生から数日後、村山の遺体が町役場から数百メートル離れたブロック塀付近で見つかった。警察学校で教官時代の村山の教え子だった機動隊員が発見したという。遺体は、部下だった小笠原が村山の自宅に送り届けた。
 
 あれから8年。小笠原は村山の死を通して「警察官の存在とはなにか」と常に自問している。
 人を助けて命を落とすのと、助けずに命が助かるのと、どちらがいいのか。きっと正解なんてないんでしょうね。警察官というのは、自分の身に迫った危険と、助けなきゃいけないという気持ちをてんびんにかけたとき、自然と助ける方をとってしまう。特に課長はその気持ちが強かったんだと思います
 
 東北管区警察局によると、東日本大震災で殉職したり行方不明になったりした警察官は岩手、宮城、福島の3県警で30人。国家公安委員会規則は、警察職員の職務倫理の基本を次のように定めている。
 「誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕すること」
 
 未曽有の災害に直面しながら、最後まで誇りと使命感を実直に貫き通した村山。小笠原は、肌身離さず持ち歩く警察手帳に、村山の名刺をしのばせている。
 警察官という仕事が好きだった人。今でも一緒に仕事をしたいと思っています
 


 ホームから転落した客を助けようとした李秀賢さん、敗戦濃厚の沖縄に赴任した島田叡さん、住民の避難活動で津波にのまれた村山基宏さんは、いずれも他者のために自らの命をなげうった。
 分断が進み、異なる意見の他者を排除しようとする不寛容さが増す現代社会。使命感を持って生きた3人に学ぶことは多い。
 


<言葉>
誠実は、人間の保ちうる最も高尚なものである
   ジェフリー・チョーサー(詩人)
もっとも尊重せねばならぬのは、生きることにあらず、よく生きることなり
 ソクラテス(哲学者)
 
このシリーズ(第一部) 終わり
 
<出典>

【勇気の系譜 第一部 使命】 村山元宏さん(上)(下)
(上)東日本大震災 殉職した警察官


   避難誘導、津波に巻き込まれ   産経新聞(2019/06/04)
https://www.sankei.com/affairs/news/190603/afr1906030035-n1.html
 
(下)元部下、名刺を肌身離さず
   警察官の誇り 使命感貫いた   産経新聞(2019/06/05)
https://www.sankei.com/west/news/190604/wst1906040029-n1.html

 

2019年6月22日土曜日

(1642)  シュピリ『アルプスの少女ハイジ』(4) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K0783) 「老後に2000万円必要」問題(1) / 「老後に2000万円必要」問題とは何か(1) <高齢期の家庭経済>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k07832000120001.html
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第4回  24日放送/ 26日再放送


  タイトル: 再生していく人びと
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 


【テキストの項目】
(1)  クララの到着
(2)  ペーターの心の闇とクララの自立
(3)  ペーターへの教訓――心の中の小さな番人
(4)  新しい家族
(5)  喪失と再生――人間性回復の物語
 

【展開】

(1)  クララの到着

 クララが、おばあさまと一緒にアルムの山小屋にやってきました。フランクフルトの屋敷からほとんど外に出たことがないクララにとって、空も山も木も花も、何もかも生まれて初めてのものばかりで、すっかり夢心地です。「新しい力が湧いてくるかもしれませよ」とおじいさんが提案し、クララは4週間アルムで過ごすことになりました。
 クララとハイジは籠から放たれた小鳥のように喜び合いました。開放的なアルプスの対自然のなかで「命を吹き込むような」清らかな空気を吸い、明るい太陽を浴び、おいしい山羊のミルクを飲み、滋養たっぷりのチーズやバターを食べて――。
 

(2)  ペーターの心の闇とクララの自立

 よそ者のクララが来てからというもの、ハイジが相手にしてくれないことに「内心の怒りが最高潮に達していた」ペーターは、目の前にある車椅子に気づくと我を忘れて突進し、力まかせに急な坂へと突き落としました。素朴で優しいアニメのペーターとは大違いです。少年ペーターの心の闇が大きくなっていく様子が描かれています。
 山登りを諦めかけていたハイジとクララですが、おじいさんがクララを片腕で抱き、牧場に着きます。クララは、自分の心のある変化に気づきます。ふいに、自分のことは自分でしたいという、大きな願いが湧きおこってきました。
 クララの両脇をハイジとペーターが支え、何度か試しているうちに、とうとうクララは自分の足で前に進むことができるようになりました。
 

(3)  ペーターへの教訓――心の中の小さな番人

 クララのおばあさまも、お父さんのゼーセーマンさんも、車椅子に座っていないクララを見て驚き、ハイジに支えられて歩いているのを見て感動しました。
 車椅子を突き落としたペーターは、警察官に捕まって監獄に入れられると、ビクビクしています。すべてお見通しのおじいさんから事情を聞いたクララのおばあさまは、ハイジをクララにとられてしまったペーター少年の腹立ちを推し量り、咎めないことにしました。
 「悪いことをしてそれが誰にもバレないと思ったら大間違いで、神様はちゃんとごらんになっている。そして、誰でも心のなかに、神様が入れておいた小さな番人がいて、その番人は普段は眠っているけれど、その人が悪いことをすると目を覚まし、小さな棘でちくちく心のなかをつつくので、その人は痛くてじっとしていられなくなってしまう」。ペーターは自分が今まさにその通りの目に遭っていることに気づき打ちのめされます。
 「神様は、誰かが悪いことをしようとしても、それをすばやく御手のなかに引き取って、痛めつけられるはずたった人のために、よいことに変えて下さるの」と続けます。クララはきれいな花が見たいのに、連れて行ってもらう車椅子がなくなったから、がんばって歩けるようになったと言うのです。
 

(4)  新しい家族

 クラッセン先生は、ハイジの父親になって、自分の子どもとしてあらゆる権利を引き継がせたいと言います。深く心を動かされたおじいさんは、先生の手を強く握りしめるのでした。
 クラッセン先生は、フランクフルトを引き払ってデリフにやってきました。自分の住む部屋と、おじいさんとハイジの冬の間の住まい、それと山羊小屋を用意するための工事を進めます。
 クララのおばあさまは、もう決してハイジをフランクフルトに連れて行くようなことはなく、むしろ自分たちのほうからハイジに会いに毎年アルムにくることにしたのだと、ペーターのおばあさんに説明しました。
 クララは、生涯で一番楽しい思い出を与えてくれた美しいアルムとの別れを惜しみながら、お父さんとおばあさまに迎えられて、スイスイの旅に出ました。
 「ハイジ、讃美歌を私に読んでおくれ! あとはもう、賛美して、天におられる神様がわたしたちにしてくださったすべてにお礼を申し上げるしかないという気持ちだよ」。ペーターのおばあさんの感謝の言葉で、物語は幕を閉じます。
 

(5)  喪失と再生――人間性回復の物語

 ヨハンナ・シュピリの『ハイジ』という作品は、故郷や家族の喪失から再生する人々の物語として読むことができます。それはとりもなおさず人間性回復の物語であり、またクララに見られるように、本来持っていた生きる力を取り戻す物語でもあります。そういう意味でも希望に満ちた作品ですから、大人の読者の心にも響くのです。
 このように『ハイジ』には、百四十年前の話であるにもかかわらず、現代にも通じる要素がたくさん詰まっています。
 

<出典>
松永美穂(2019/6)、シュピリ『アルプスの少女ハイジ』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

2019年6月21日金曜日

(1641)  勇気の系譜 第一部 使命(2)  島田叡さん

 
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(K0782)  個人Blog 6月中旬リスト <サイト紹介>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k0782-blog.html
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 昭和20年1月上旬の早朝、大阪府内政部長だった島田は、府知事の池田清から沖縄知事就任の打診を受けた。前任者は「出張」と称したまま、本土から戻っていなかった。
 しばしの沈黙の後、島田は何事もなかったような表情で受諾した。動揺したのは池田の方だった。池田は、島田が家族と相談することを想定し、あえて出勤前に伝える気遣いも見せていた。
 
 池田に対し、島田はこう伝えたという。「私が断れば、誰かが代わりに行く。それはできない」
 昭和20年4月、米軍が沖縄本島に上陸するが、島田が赴任したのはその約3カ月前。米軍の上陸を目前にしての赴任は死を意味していた。
 
 島田は沖縄に赴任後、県民約10万人の疎開を陣頭指揮し、食糧難の打開策として台湾米の入手に奔走した。官尊民卑の風潮が強い中、疎開の大切さを訴えるため村々まで分け入り、住民と泡盛を酌み交わした。最終局面を前に精神論を振りかざし、手をこまねくのではなく、知事として沖縄のためにやるべきことを尽くした。
 
 その後、日本軍は追い詰められ、島田は6月、ガマの中で県庁を解散する。その場にいた職員らに「女、子供に米軍は手を出さない。捕虜になりなさい」「生きて復興のためにがんばってくれ」と話し、摩文仁(まぶに)と呼ばれる地域で消息を絶った。
 島田の知事在任期間はわずか5カ月ほど。遺骨も見つかっていない。
 

 島田については、戦意高揚を鼓舞したとして一部で評価に懐疑的な見方もある。一方、戦後の混乱期だった昭和26年、沖縄県民らが資金を出し合い、島田が消息を絶った沖縄・摩文仁(まぶに)に島田らをまつる「島守の塔」を建立している。終戦から74年。島田が「島守」として今も語り継がれていることは事実だ。
 


<言葉>

困難は人の真価を証明する機会なり
   エピクテトス(哲学者)

わが行く道に茨多し されど生命は1つ この外に道なし この道を行く
 武者小路実篤(作家)
 

<出典>
【勇気の系譜 第一部 使命】 島田叡さん(上)(下)
(上)覚悟の沖縄赴任 最後の官選知事
   「生きよ」激戦地で消息絶つ   産経新聞(2019/06/02)
https://www.sankei.com/west/news/190602/wst1906020005-n1.html
 
(下)終戦74年 「島守」として今も
   沖縄県民に愚直に寄り添う   産経新聞(2019/06/03)
https://www.sankei.com/west/news/190602/wst1906020013-n1.html

2019年6月20日木曜日

(1640)  就職氷河期と、ひきこもり・親族殺人

 
      最新投稿情報
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(K0781)  存在感がなくなる(2) 二つの接し方 <見守り>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k0781-2.html
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 Facebook友達の伊達 泉さんから ~ 例の「就職氷河期」世代?ですかね。 ~ とコメントをいただきました(1639)。長くなるので、稿をあらためました。
 
 どちらに関する質問かわからないので、両方書きます。
 
(1)  ひきこもり
 就職氷河期の影響を無視できません。
 
===== 引用はじめ
  全国の40~64歳のうち、推計61万千人がひきこもり状態であることが内閣府の平成30年度の調査で分かった。
 内閣府が27年度に実施した調査では、15~39歳の若年のひきこもりは54万1千人と推計された。
===== 引用おわり
(K0775)  老人ホームの91歳孤独死(3) / サ高住と有料老人ホームの違い <見守り>http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k0775-913.html
 


(2)  親族殺人
 直接データはないのですが、「就職氷河期に集中している」とは言えないと思います。
 
===== 引用はじめ  箇条書き形式にした
動機は、
   「憤怒」が191(45.7%)で最多
   「怨恨」の48(11.5%)
   「介護・看病疲れ」の31(7.4%)が目立った。次いで、
   「異常酩酊・精神障害(疑いを含む)」の18(4.3%)
   「子育ての悩み」の17(4.1%)
   「生活困窮」の11(2.6%)など
===== 引用おわり
産経新聞(2019/06/06 )
 
 多様な動機があり、就職氷河期 固有のものではありません
 


(3)  「就職氷河期」差別?

 「就職氷河期」について度々触れていますが、当然、色々な人がいます。私が書くときは、わざわざことわりはいれていませんが、「一般論として、他の世代と比較して、このような特徴がある」ということを意味し、個々の個人がどうとは言っていません。
 しかし聞く人によっては、「就職氷河期の人は(みんな)こうだ」という取り方をしてしまい、差別につながる危険性があります。
 ただ、ここまで気にすると何も書けなくなります。誤解や差別にならないよう注意を払いながら、書き続けます。