2018年4月30日月曜日

(1224) 「生きがい」に出合うために/ 神谷美恵子『生きがいについて』(0) / 100分de名著

 
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(K0365)  若年性認知症就業(1) ~ その意味するところ <脳の健康><インクルーシブ社会>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2018/04/k0365-1.html
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5月の「100de名著」、神谷美恵子『生きがいについて』が、5月7日()から始まる。
Eテレ。

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 

<全4回のシリーズ>  いずれも5月

はじめに  「生きがい」に出合うために

第1回  7日放送/ 9日再放送
  タイトル: 生きがいとは何か

第2回 14日放送/16日再放送
  タイトル: 無名のものたちに照らされて

第3回 21日放送/23日再放送
  タイトル: 生きがいを奪い去るもの

第4回 28日放送/30日再放送
  タイトル: 人間の根底を支えるもの




 「生きがいとは、‥‥である」といった明確な定義は示されていない。
 
1.   「生きがい」とは、生きる意味であり、将来への期待であり、今、ここで行われる挑戦であり、また、知らない間に育んできたものの現われでもある
 

2.   「生きがい」は作り上げるものではなく発見すべきものである

2.1.  「生きがい」は人間が努力して一から作り上げるものではなく、発見すべきものである
2.2.  「生きがい」の発見は、自分が何か大きなものに包まれているという実感から始まる
2.3.  その「大いなるもの」をさまざまな言葉で表現している。「大地」もその一つである。それを「自然」と書くこともある

3.   私たち一人ひとりが、自分で心の底から「生きがい」だと感じられるものに出合うことが最も重要である
 
4.   「生きがい」と呼ぶべきものは、人間が、生きようと強く感じるときよりもむしろ、生かされていると感じるところにその姿を現す
 
5.   「生きがい」は、社会や人が作り出すものであるより、もっと深い意味で「自然」が与えてくれるものである
 
6.   野に一輪の花を見るように、また、さえずる鳥の声を全身で引き受けようとするときのように、私たちが隣人の言葉と向き合うとき、眠れる「生きがい」が何ものかによって照らし出される
 
7.   「生きがい」は、悲しみや苦しみの経験の中で芽吹き、花開かせる
 
8.   人は、大地の上で生きているのではなく大地に「生かされて」いるのではないか。「生きがい」とは、大地が与えてくれているものを発見することなのではないか
 
 

 同じことを繰り返し述べているようで、微妙に違う。
 

 最も繰り返されているのは、「人間が努力して一から作り上げるものではなく」(2.1)、「社会や人が作り出すもの」(2.5)でない、ということである。では、人はどのように「生きがい」と出会うのかというと「発見すべきものである(2.1)」。つまり、「生きがい」は、どこかに既にあるのである。
 
l  発見は、自分が何か大きなものに包まれているという実感から始まる(2.2)
l  自分で心の底から「生きがい」だと感じられるものに出合う(3)
l  生かされていると感じるところにその姿を現す(4)
l  もっと深い意味で「自然」が与えてくれる(5)
l  眠れる「生きがい」が何ものかによって照らし出される(6)
l  悲しみや苦しみの経験の中で芽吹き、花開かせる(7)
l  大地が与えてくれているものを発見する(8)


 このすべてに「自然」「大地」「土」が関係してくる。
 

 「悲しみや苦しみの経験の中」が、何故「自然」に関係するのか。
詩人である志樹逸馬の「土壌」と題する作品「土壌」に「悲しみを腐敗させていく」というフレーズがある。

===== 引用はじめ
 悲しみは、落ち葉のように「土」に舞い降りる。 … 私たちは、それは「土」が新生するためになくてはならないものであることを知っています。ここでの「土」は、世界そのものを示しています。この世界は、個々の人間のそれぞれの悲しみによって支えられ、育まれるというのです。
===== 引用おわり
 


 大切なキーワード「生かされる」も、「自然」と関わっている。

l  人間が、生きようと強く感じるときよりもむしろ、生かされていると感じるところにその姿を現す
l  人は、大地の上で生きているのではなく大地に「生かされて」いるのではないか。
 


 最後に、そもそも「自然」とは何か。

===== 引用はじめ
 社会をはなれて自然にかえるとき、そのときにのみ人間は未来の人間性にかえることができるというルソーのあの主張は、根本的に正しいに違いない(神谷)

 ルソーは、悩める同時代人にむかって、自然に還れと言いました。それは、原始的な生活をすることを意味しません。自然とのつながりを感じながら生きることを指します。
 ここで見過ごしてはならないのは、ルソーと神谷が、人間もまた「自然」の一部であることをよく理解しつつ、そう述べていることです。山川草木や花鳥風月との真の関係を取り戻すとき、私たちは同時に、本来の自分も他者との関係も取り戻すことが出来る。
===== 引用おわり
 


出典
若松英輔(2018/5)、神谷美恵子『生きがいについて』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)
添付図は、この本からの転載


 

(1223)  衣笠さんを悼む ~ 最もしびれた言葉

 
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(K0364)  健康なら現金還元 <高齢期の家庭経済>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2018/04/k0364.html
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 衣笠さんが亡くなった(4/23)。たくさんの報道があったが、私が最もしびれた(心を奪われてうっとりとする)言葉は、「1球目はファンのため、2球目は自分のため、3球目は西本君のためにスイングしました」。
 
===== 引用はじめ
 印象的なのは、長嶋茂雄さんのコメントである。
 「巨人戦で死球を受けたときには、カープのベンチを自らなだめながら笑顔で一塁に向かう姿が忘れられません。芯が強く、優しい心を持っているいい男、ナイスガイでした」
 
 その象徴的なシーンが昭和54年8月、巨人の西本聖投手から受けた死球だろう。左肩甲骨を骨折しながら次戦に代打で出場し、江川卓投手の速球に、フルスイングで3球三振する。
 「1球目はファンのため、2球目は自分のため、3球目は西本君のためにスイングしました」という当時の衣笠さんの名言を、各紙は再掲した。
 
 付け加えれば、翌月の再戦で衣笠さんは、西本投手から豪快に逆転3ランを放っている。これこそが彼の真骨頂だったろう。
===== 引用おわり
 


 亡くなった日の夜7時からのNHKニュースには驚いた。冒頭から約15分間、衣笠の報道だけだった。他にも大切なニュースがいっぱいあるのだろう!
 
 それだけ、衣笠が愛されていたということだろう。何故、それほどまでに愛されたのか? 彼は、愛されようという行動はしていなかったと思う。
 
 野球に対する一途な愛。その愛を具現する人を、人々は愛さずにはおられなかったのだろう。
 
 と、一人盛り上がっていたのだが、……
 


 土曜日(28日)11:00~(再放送)、BS日テレ、「マイストーリー 20 フリーアナ・木佐彩子」を見た。彼女の発言によれば、夫 石井一久は「全然、野球を愛していなかった」。義務感と責任感で野球を続けていたそうだ。もちろん、石井一久もファンから愛されている。
 
 決めつけて、勝手に盛り上がってはいけない。
 


<出典>
衣笠さんを悼む 個の魅力の体現者だった
【主張】 産経新聞(2018/04/26)
 
衣笠さんを悼む 個の魅力の体現者だった
https://www.sankei.com/column/news/180426/clm1804260001-n1.html
添付写真は、このサイトから転載。



2018年4月29日日曜日

(1222)  知恵はどこから来るか ~ お箸がない!

 
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(K0363)  家族がつくった「認知症」早期発見の目安 <脳の健康>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2018/04/k0363.html
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結構、気に入った投稿を、新聞の投稿欄から紹介する
 
===== 引用はじめ
 約50年前の小学生の頃、遠足の弁当タイムに、ふとお箸がないのに気がついた。持ってくるのを忘れたのだ。
 すると彼女は、自分の割り箸の1本を、私に差し出してくれた。そして残った1本を半分に折って2本にして、何もなかったように、弁当をおいしそうに食べ始めた。
===== 引用おわり
 

 私は、この投稿でやり方を学んだ。知っていれば、私にもできるかというと、そうでもないような気がした。ましてや、知らないでこういうことができたとしたら、それは凄いことだ。
 
(1)   日頃から、定期的に、周囲の状況を見ている
(2)   近くに困っている人がいたら、言われなくても察する
(3)   困った人がいたら、なんとか助けたいと強く思う
(4)  「…があれば」という発想ではなく、既にあるものを使う発想をする
(5)   1本を折れば2本になる。短くてもなんとかなる、ということに気づく
 
 このうち(1)(4)は、意識すれば改善できそうだが、(5)の気づきは、意識ではなんともなりそうにない。(1)(4)を強く念じ、神様が(5)を与えてくれるのを待つしかなさそうだ。
 

===== 引用はじめ
 私はただびっくりした。彼女は3人きょうだいの姉で、いつも弟たちの世話をしているという。困った友人を見て、とっさに反応したのだろう。
 一人っ子で、日頃からのんびり屋さんの私では、絶対に考えられない行動だった、本当にしっかり者の彼女に感謝した。
===== 引用おわり
 
 なるほど。いつも誰かの世話をしている人に、(5)は降りてくるのかもしれない。
 

 因みに、新幹線でお弁当を食べようとして箸が無かったことが今までに2回あった。いずれも、ワゴン車販売できたお姉さんに頼んだら、無料でくれた。鉛筆ではさんで食べようかと思ったが、しなかった()。この程度の知恵(?)なら、私にもある。
 

<出典>
樋口和子(奈良県生駒市)、割り箸折る友の機転に驚き
【談話室】 産経新聞(2018/04/18)
 
添付写真は、インターネットで検索したもの



(1221)  過ちを正す過ち ~ 自分で答案を書き直したとき

 
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(K0362) 「低栄養」に注意 <体の健康>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2018/04/k0362.html
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 結論から先に言うと、

===== 引用はじめ
 子供の問題行動には必ず理由がある。
 行為を正すことばかりに気を取られると、その子供の苦しみを理解する機会を逸してしまう。
===== 引用おわり

 「子供」を「人」に置き換えても、上記は成り立つと思う。
 
 

 採点した答案を全てコピーして返却するケースがあるらしい。

===== 引用はじめ
 成績をつけるときの参考にするだけではない。子供が答案を書き換えるようなことが起こった場合に証拠として取っておくのだという。
 ある中学で生徒が、採点が間違っていると言って担任に答案を持ってきた。他の教科の先生にも採点の間違いを訴えていた。調べると、自分で答案を書き直していたことが分かった。
===== 引用おわり
 

 先生の対応、子供の対応、親の対応

===== 引用はじめ
 生徒に書き直したのではないかと尋ねてみた。しかし、頑として認めようとしない。担任は親に電話をし、事情を説明した。すると、「うちの子がそんなことをするはずがない」と憤った。
===== 引用おわり
 

 対応方針

===== 引用はじめ
 困った担任は他の教師と相談をした。間違った行為をこのままにしてはおけない。証拠のコピーもある。親を呼び出して、白か黒かはっきりさせようという方向に話が進んだ。
===== 引用おわり
 

 立ち止まった

===== 引用はじめ
 しかし、一人の先生は、嘘をついてまで、必死に点数を上げようとするその子のことが心配でたまらなかった。調べてみると、その子は親の出身校である進学校を志望していた。定期テストの度に、点数が悪いと親にひどく叱られると周囲に話していたことも分かった。
===== 引用おわり
 

 答案の書き換え云々より、その子が抱える悩みをいかに上手に親に理解してもらうかが重要だ

===== 引用はじめ
 答案の書き換えはもちろんよくないが、このままでは親をやり込めるための面談となってしまう。親はさらに子供を叱るだろう。相談を受け、子供も親も悪者にせず、子供の苦しい状況を親に理解してもらえるように話をしてみたらどうかとアドバイスした。答案の書き換え云々(うんぬん)より、その子が抱える悩みをいかに上手に親に理解してもらうかが重要だからである。
===== 引用おわり
 

 実際の対応

===== 引用はじめ
 面談当日、厳しい顔をした両親に、先生はこう訴えた。「親思いのお子さんですね。親を心から尊敬していて、失望させたくないと強く思っているようです」。親と同じ高校に進学できなければだめだと思い込んでいる子供の日頃の様子について丁寧に説明した。話を聞くうちに両親はうつむいた。
===== 引用おわり
 

 大切なこと。

===== 引用はじめ
 子供の問題行動には必ず理由がある。過ちを正すことは大事だが、なぜそんなことをしてしまったのか、まず子供の置かれた状況を知るべきだろう。子供の気持ちを理解し、受け止めなければ、良い方向へと導くことは困難だ。問題行動は、その子に関わるチャンスになる。
===== 引用おわり

 教育現場だけではなく、多くの場面でこの考えは有効だろう。
 
 

<出典>

藤崎育子、子供の心の痛みを理解する
【解答乱麻】 産経新聞(2018/04/25)
 
子供の問題行動には理由がある 心の痛みを理解せよ 開善塾教育相談研究所所長・藤崎育子
https://www.sankei.com/life/news/180425/lif1804250006-n3.html

2018年4月28日土曜日

(1220)  (13) 西郷隆盛「南洲翁遺訓」 / 「明治の50冊」

 
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(K0361)  乳児の生きる意思、終末期の人の生きる意思 <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2018/04/k0361.html
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===== 引用はじめ
 遺訓本文は全41カ条と追加2条からなり、原文のみを記せば文庫本で15ページ程度に収まるごく短い分量だ。内容は為政者のあるべき姿勢や日本の文明化の方向性、人として行うべき道など、西郷の国家観や人間観が端的に語られている。
===== 引用おわり
 
 分量としては短いが、内容は密である。
 


 ここでは、有名な二つの条を取り上げる
 
(30条)
===== 引用はじめ
 命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕末(しまつ)に困るもの也。此(こ)の仕末に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業は成し得られぬなり
===== 引用おわり
 
(24条)
===== 引用はじめ
 道は天地自然の物にして、人は之(これ)を行ふものなれば、天を敬するを目的とす。天は人も我も同一に愛し給ふゆゑ、我を愛する心を以て人を愛する也(なり)
===== 引用おわり
 

 後者が有名な「敬天愛人」であるが、前者でもまた「天」が大変重要な概念になる。「陽明学の影響を深く受けた西郷の言う『天』とは、社会において自分が何をなすべきかという宿命の自覚を促す存在だった」と先崎彰容教授(日本大教授・日本思想史)は指摘する。
 

===== 引用はじめ
 「人を愛するといっても、立場の違いで激しく殺し合った時代状況では、非常に困難なもの。だから最初に『敬天』が必要になる。
===== 引用おわり
 
===== 引用はじめ
 昔の聖人や賢者の書を単に知識として学ぶだけでは、どうしようもない。いまや危機の時代である。実践と行動こそが重要であり、それは眼前で崩壊しつつある日本社会の秩序を再構成することだ-。
===== 引用おわり
 
 「社会において自分が何をなすべきかという宿命の自覚を促す存在」である『天』、その思想が「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人」につながる。
 
 
 政党の存続をかけた数合わせの合従連衡、世論を得るためのこれみよがしの言動(それで逆に世論を失っているように私には見える)、何事も政争の具としてしかとらえない発想、どうみても「天」とは真逆のものが現在の政治の世界を覆っているように見える。
 
 「命もいる、名もいる、官位も金もいる人は、仕末(しまつ)に困るもの也。此(こ)の仕末に困る人では、艱難(かんなん)を共にできず、国家の大業は成し得られぬなり」と思ってしまった。
 


【プロフィル】西郷隆盛(さいごう・たかもり)
 文政10年12月(1828年1月)、薩摩(鹿児島県)の下級藩士の家に生まれる。号は南洲。藩主の島津斉彬(なりあきら)に登用されて頭角を現し、失脚を経つつも討幕運動の中心人物となって薩長連合や王政復古、江戸城無血開城などを成し遂げる。新政府では陸軍大将、参議を務め、廃藩置県や徴兵制導入を実現するが、明治6(1873)年の政変で下野。10年、鹿児島で挙兵し西南戦争を起こすが、政府軍に敗れ自刃した。
 


<引用>

西郷隆盛「南洲翁遺訓」 「敬天愛人」に秘めた凄み
【明治の50冊】 (産経新聞 2018/04/23
 
(13)西郷隆盛「南洲翁遺訓」 「敬天愛人」に秘めた凄み
https://www.sankei.com/life/news/180416/lif1804160011-n1.html
(西郷の写真はこのサイトから転載)

 
 


【参考】 以前にとりあげたことがある。(100de名著)
 
(1110)  はじめに / 西郷隆盛『南洲翁遺訓』(0)
http://kagayaki56.blogspot.jp/2018/01/1110-0.html
 
(1111)  揺らぐ時代 /西郷隆盛『南洲翁遺訓』(1)
http://kagayaki56.blogspot.jp/2018/01/1111-1.html
 
(1116)  「敬天愛人」の思想 /西郷隆盛『南洲翁遺訓』(2-1)
http://kagayaki56.blogspot.jp/2018/01/1116-2-1.html
 
(1117)  「天」と「道」・陽明学 /西郷隆盛『南洲翁遺訓』(2-2)
http://kagayaki56.blogspot.jp/2018/01/1117-2-2.html
 
(1123)  「文明」とは何か /西郷隆盛『南洲翁遺訓』(3-1)
http://kagayaki56.blogspot.jp/2018/01/1123-3-1.html
 
(1124)  西郷隆盛は、反「征韓論」 /西郷隆盛『南洲翁遺訓』(3-2)
http://kagayaki56.blogspot.jp/2018/01/1124-3-2.html
 
(1130)  西郷はどう評価されたか /西郷隆盛『南洲翁遺訓』(4-1)
http://kagayaki56.blogspot.jp/2018/01/1130-4-1.html
 
(1131)  いま『南洲翁遺訓』を読む意味とは /西郷隆盛『南洲翁遺訓』(4-2)
http://kagayaki56.blogspot.jp/2018/01/1131-4.html


 

2018年4月27日金曜日

(1219) 「いいチーム」とは (3) 楽天 田尾安志初代監督の心意気

 
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(K0360) 「不許入無挨拶雲雀丘」 <地域の再構築>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2018/04/k0360.html
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 そんなに大きな記事ではないのだが、とても気に入ったので、その記事から3回に分けて投稿した。今回は3回目・最終回。サブタイトルを「楽天 田尾安志初代監督の心意気」とした。
 

 楽天はどう見ても、「いいチーム」とはほど遠い環境からスタートした。
 
===== 引用はじめ
 楽天は球界が再編問題に揺れた2004年にオリックスと近鉄から選手の「分配ドラフト」を受けて誕生した新球団だ。
===== 引用おわり
 

 「分配ドラフト」については後述するが、楽天にとって過酷な制度であり、チームは弱体だった。

===== 引用はじめ
 正直なところ、1年目から勝てるとは思っていなかった。3月26日に記念すべき初勝利を挙げ、翌日は0-26と記録的な大敗を喫した。「そんなこともあるだろう」と驚きはなかった。実際、初年は38勝97敗1分けで最下位に終わった。
===== 引用おわり
 

 田尾監督の使命は、優勝ではない。Aクラス入りでもない。

===== 引用はじめ
 僕の仕事は、
(1)  3年間でプロレベルのチームを作り、
(2)  次の監督にバトンを渡すこと。
(3)  ファンに愛されるチームにすること。
(4)  三木谷オーナーに野球を好きになってもらうこと
だと思っていた。
===== 引用おわり
(箇条書き様式に変更)
 

 別の言葉では「いいチーム」つくりと言ってよいだろう。具体的に何をしたかは、(1216)(1218)に書いた。
 

 後に、星野仙一監督の下、楽天は日本一になった。田尾監督が「いいチーム」にして、その上に、星野監督が「強いチーム」を作った。
 
 星野監督の手腕の一つは、就任の条件に補強を実現させることである。楽天でも阪神でも、過去の成績が悪くとも、就任時には戦力的に強くなったチームを率いることになった。楽天就任時に補強できたのは、「三木谷オーナーに野球を好きになっていた」ことが影響していると思う。これはまさに、田尾監督の功績だと言ってよいと思う。
 

===== 引用はじめ
 日本一弱いチームが成長していく過程をじっくり応援してくださったファンは、日本一幸せなファンなのかもしれない。
===== 引用おわり
 
 いや、その幸せを一番かみしめているのは田尾本人ではないだろうか。星野のようには脚光を浴びない。しかし、その幸せをかみしめている田尾が好きだ。
 



【説明】 「分配ドラフト」とは
 
 パリーグで「大阪近鉄バファローズ」と「オリックス・ブルーウェーブ」が合併して「オリックス・バファローズ」(以下「オリックス」)になったため6チームが5チームに減りそうになったが、楽天が新規参入して「東北楽天ゴールデンイーグルス」(以下「楽天」)を立ち上げて6チームが維持された。

 チーム数はつじつまが合ったが、選手は、オリックスには旧2チームの選手が所属し(通常の2倍)、楽天には選手がいない。当然、これでは成り立たない。
 
 そこで「分配ドラフト」が行われた。「分配ドラフト」とは、「プロスポーツにおいて、新規参入チームに対して、既存チームに所属する選手の一部を振り分ける制度。既存チームは一部の選手をプロテクトしておき、残りをドラフトにかける」
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%AC%C7%DB%A5%C9%A5%E9%A5%D5%A5%C8

 具体的には、近鉄とオリックスの合併によって誕生する新球団オリックスがプロテクト(優先保有)した25選手を除く、82選手を楽天とオリックスの間で分け合う。82選手の分配方法は、まず20選手を楽天が指名、続いてオリックスが20選手を指名、さらに楽天が20選手指名、という順番で行われた。
https://www.narinari.com/Nd/2004113587.html
(注:実際には、もう少し複雑)
 

 楽天の選手は、オリックスに捨てられ(プロテクトしてもらえなかった)、楽天に拾われた選手とも言える。

 楽天にはオリックスが合併球団の主力25名として選ばなかった選手を獲得することしかできず、他球団との戦力差から開幕2試合目の対ロッテ戦に026で敗れたように大差で敗戦する試合が目立ち、最終的にはシーズン97敗を喫した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E9%87%8E%E7%90%83%E5%86%8D%E7%B7%A8%E5%95%8F%E9%A1%8C_(2004%E5%B9%B4)
 
 なお、礒部ら近鉄の一部の選手は労使妥結の前提となった近鉄選手の移籍先には本人の意思を尊重する、という趣旨の「申し合わせ」を引き合いに、オリックスのプロテクトを拒否。それは認められた。岩隈は「超法規的措置」により、オリックスが獲得後、楽天へ金銭譲渡した。その他、楽天は分配ドラフトから漏れた自由契約選手を数人獲得した。
 


出典
「いいチーム」とは
【野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志】、産経新聞(2018/04/90)
 
「いいチーム」とは
https://www.sankei.com/west/news/180410/wst1804100042-n1.html


古い写真だが、インターネットで検索して添付。


(1218) 「いいチーム」とは (2)

 
      最新投稿情報
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(K0359)  個人Blog 4月中旬リスト <サイト紹介>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2018/04/k0359-blog.html
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(1216)で田尾安志氏の
“「強いチーム」ではなく「いいチーム」にしたい”
を魅力的なフレーズだ、と書いた。
 

あと二つ、魅力を感じたので、続けて述べる。
 

一つは、①キャッチフレーズで終わらせるのではなく、②目的が明確で因果律を踏まえ、③具体的に実践していることである。
 

===== 引用はじめ
(1)  選手起用については、2軍とのコミュニケーションを大切にした。
(2)  35歳を超えるベテランが17人もいたチームだっただけに、えこひいきをしていると思われると、腐ってしまう。
(3)  先発投手なら2軍の試合で6回を自責点3以内に抑えるクオリティースタートを2試合連続、中継ぎなら1回無失点を3試合連続-で達成したら、必ず1軍に昇格させた。
(4)  ミーティングでは、その方針を繰り返し確認した。
(5)  明確かつ具体的な条件を示して確実に伝えれば、
(6)  モチベーションは高まる。
===== 引用おわり
(箇条書き形式にした)
 

  キャッチフレーズで終わらせるのではなく、

 「コミュニケーションを大切にする」がキャッチフレーズ。それに「2軍との」と対象を絞り込み、「選手起用については」と場面を絞り込んでいる(1)。キャッチフレーズで終わらせないためには、この絞り込みが必要だ。

 
  目的が明確で因果律を踏まえ、

 「えこひいきをしていると思われると、腐ってしまう」(2)、「モチベーションは高まる」(6)。「コミュニケーションを大切にする」が目的ではない。モチベーションを高めるためには、腐らせてはならない。「モチベーションを高める」も目的ではない。その先に「いいチーム」があり、更にその先に「強いチーム」がある。

 「腐らせない」→「モチベーションを高める」→「いいチーム」→「強いチーム」という一連の因果律を踏まえ、最終目的の「強いチーム」を作ろうとしている。それが「コミュニケーションを大切にする」の中身である。

 
  具体的に実践している

 「…を達成したら、必ず1軍に昇格させた」(3)、「その方針を繰り返し確認した」(4)(5)=(3)+(4)。この実践がないと、実績にはつながらないのは当然である。

 
 
 見事な戦略ではないか。
 

===== 引用はじめ
(1)  トレーナーや打撃投手といった裏方さんも重要だ。
(2)  手足となるコーチ陣を招聘(しようへい)して組閣した際に、球団が人件費をコストカットした資金があった。それを「使わせてくれ」と申し入れ、裏方さんへの「勝利給」として使った。1試合勝つごとにボーナス。1軍だけでなく、2軍の裏方さんにも配った。
(3)  縁の下の力持ちは立派な戦力。
(4)  選手と同じ方向をみてもらう必要があった。
===== 引用おわり
(箇条書き形式にした)
 

同じ構造である。
 

  キャッチフレーズで終わらせるのではなく、

 「裏方さんも大切だ」(1)

 
  目的が明確で因果律を踏まえ、

 「裏方さんが選手と同じ方向を見る」(4)→「いいチーム」→「縁の下の力持ちが戦力になる」(3)→「強いチーム」

 
  具体的に実践していることである。

 「1軍だけでなく、2軍の裏方さんにも配った」(2)

 
 おそらく、「強いチーム」は、裏方さんがしっかりしているのだろう。裏方さんがしっかりしていると、「いいチーム」になるのだろう。

 

出典
「いいチーム」とは
【野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志】、産経新聞(2018/04/90)

「いいチーム」とは
https://www.sankei.com/west/news/180410/wst1804100042-n1.html