2018年8月31日金曜日

(1347)  ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」(1-1)(あらすじ 1) / 100分de名著

 
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(K0488)  行動する時間が価値を生む。無駄と思えることにも時間を費やす <定年後>
http://kagayakiken.blogspot.com/2018/08/k0488.html
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第1回  3日放送/ 5日再放送
  タイトル: 修道士は名探偵?


【テキストの項目とあらすじ】

(1)  ファシズムとアヴァンギャルド

 
(2)  記号から小説へ

 
(3)  物語の歴史的背景

 舞台はアヴィニョン教皇庁の時代、フリードリヒ美王の特使としてバスカヴィルのウィリアム修道士が北イタリアの某所にあるベネディクト会修道院を訪れます。ウィリアムはかつて異端審問官としてそのバランスのとれた判断が高く評価されていました。物語の語り手である見習修道士メルクのアドソは、見聞を広めてほしいという父親メルク男爵の意向によってこのウィリアムと共に旅をしています。
 ウィリアムの本来の目的は、当時「清貧論争」と呼ばれた、フランシスコ会とアヴィニョン教皇庁のあいだの論争に決着を付ける会談を調停し、手配することにありました。
 
(4)  【第1日】修道院の威容

 修道院の描写が過剰といえるほど克明に、長々と続きます。
 
(5)  記号を読み抜くウィリアムの名推理

 ウィリアムは、逃げた馬を探していることを見抜き、馬の特徴・名前を言い当て、逃げた方向も名推理で明らかにします。
 ウィリアムが飛びぬけて明晰な頭脳と鋭い推理力を持っていること、世界の痕跡、すなわち「記号」を読み抜く卓抜な能力を持った人物であることが強く印象づけられます。
 
(6)  第一の事件――アデルモの死

 修道院長アッボーネは、細密画家のアデルもが死体になって発見された(第一の)事件を説明し、ウィリアムに解決に向けての協力を依頼します。
 この修道院の図書館はキリスト教世界最大の図書館で、いわば「神の御言葉の護り手」です。図書館には異教徒の書や虚偽の書も収められ、見るべきでない者の目に触れないように厳重に管理されています。その秘密は図書館長(現在はマラキーア)だけが知っているが、万一の不慮の死に備えて、館長の存命中に図書館長補佐(現在はベレンガーリオ)にもその秘密が伝えられます。
 
(7)  聖堂の彫像、サルヴァトーレ、ウベルティーノ

 
(8)  写字室の机の妖しく滑稽な細密画

 死んだアデルモが生前作業をしていた写本を見せてもらいました。文字の周囲には滑稽な細密画が施されていました。描かれていたのは「野兎を前にして逃げだす猟犬、獅子を狩る牡鹿」などさまざまな「逆立ちした生きもの」たちでした。
 
(9)  笑をめぐるウィリアムとホルヘの論争

 ウィリアムスは、この細密画らは笑いを誘われるが、その目的は教化にあるだろうと述べます。対する盲目の老修道士ホルヘは、こうした絵は神の教えに反すると言います。
 
(10)【第2日】 第二の死体と笑いをめぐって

 二日目の朝。第二の事件が起こります。豚の生き血の甕に逆さに突っ込まれた死体が発見されました。ギリシャ語とアラビア語の翻訳家でアリストテレスの研究家でもあるヴェナンツィオでした。
 修道院内には笑いをめぐって明らかに相反する二つの立場がありました。ホルヘは笑いに対して徹底的に不寛容です。一方、ヴェナンツィオは笑いを支持していました。「アリストテレスは『詩学』の第二部を笑いに充てた。あれほど偉大な哲学者が一巻(『詩学』第二部)のすべてを笑いに捧げたのだから、笑とはさぞかし重要なものだったに違いない」とヴェナンツィオは言ったそうです。
 また、学僧ベンチョからの聞き取りにより、修道院で起きた二つの死の謎を解くには、図書館の中にある「アフリカの果て」と呼ばれる秘密の部屋に足を踏み入れる必要があるということが浮上してきます。
 

(11)アリストテレス『詩学』のエーコへの影響

 

出典
和田忠彦(2018/9)ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)
添付しているのは、表紙。

2018年8月30日木曜日

(1346)  高齢者の”ひとり”と”孤立”は違う? 、 「居場所」の限界

 
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=====    今回は、この投稿と同じ内容です。
(K0487)  高齢者のひとり孤立は違う? 、 「居場所」の限界 <居場所><社会的健康>
http://kagayakiken.blogspot.com/2018/08/k0487.html
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 Facebook友達の豊島 彩さんが「以前からお世話になっているEditage edgeさんに研究紹介の記事を掲載してもらいました」と書き込んでいて、そのインタビュー記事のタイトルが興味深かった。

「高齢者の”ひとり”と”孤立”は違う?:豊島彩(とよしま・あや)さんメールインタビュー」
https://edge.editage.jp/aya-toyoshima/
 
===== 引用はじめ
 最新の研究では,高齢になると自分の趣味を一人で楽しむ傾向が若い世代より強いことが分かってきました。今後,高齢になり家族や友人との交流が少なくても心豊かに生活できるのか明らかにすることで,日本の超高齢社会に貢献できるのではないかと考えています。
 現状として,“おひとりさま”という言葉が社会で広まっていますが,実際にその方たちがどのような生活をしているのかはまだ曖昧です。そこで,まずは高齢者の中でも社会参加に消極的な方のライフスタイルを把握し,孤独に陥っている人との違いを比較しようと考えました。
===== 引用おわり


 刺激的な研究であり、この研究から色々なものが派生してきそうで、成果が楽しみです。
 
 
 以降は、刺激を受けて、私が考えた事を書きます。

 
 高齢者がひきこもらないよう「居場所づくり」の重要性が注目され、実際にアクティブに活動している人が増え、成果をあげています。例えば、既に終わった話ですが「居場所サミット」。
http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2018/07/20180717072601.html
https://www.facebook.com/events/193159481403502/
私も参加しました。活気にあふれていました。
 
 
 とても大切な活動で、今後も進めるべきだとは思うのですが、私は何か「限界」のようなものを感じていました。「両輪で走ればよいのに、片輪で走っているのではないか」。でも、それ以上は見えていませんでした。豊島 彩さんの文がヒントになりました。
 
 「社会参加に消極的な方」で「家族や友人との交流が少なくても心豊かに生活できる」人がいる、これは事実だと思います。
 
 二つの課題を想定できます。

   「社会参加に消極的な方」で「家族や友人との交流が少なくて」「心豊かに生活」「できていない人」は大丈夫だろうか

   「社会参加に消極的な方」で「家族や友人との交流が少なくても心豊かに生活」「できている人」は当面は大丈夫だか、自立できなくなったとき大丈夫だろうか
 

 いまある片輪「居場所づくり」は、これらの課題には届きにくい。それが「限界」ではないかということです。居場所は「社会参加に消極的な方」にとっては、そもそも、それほど快適な場所ではないかもしれません。積極的に誘うには、抵抗感があります。
 


 単純化すると、世の中には、外向的な人と内向的な人とがいます。例えば、
https://jibun-compass.com/naikou_gaikou
(添付の絵は、このサイトからの転載です)
 
 多くの「居場所」は、外向的な人にとっては快適な場所だが、内向的な人には馴染みにくいのではないか。「居場所」は、外向的な人にとっては答(救い)になりやすいが、内向的な人にとっては答(救い)になりにくいのではないか。
 
 また、見ていると「居場所」を推進する人には外向的な人が多いようです。その彼ら・彼女らのなかには、内向的な人への対応が難しい人もいると思います。自分とは違うタイプの人と付き合うのは、誰にとっても難しいことです。


 考えねばならないいくつかのことがあります。

(1)  今でも、内向的な人も適応しやすい居場所もあると思います。そういう居場所を増やす

(2)  居場所とは違う形で内向的な人達の課題解決を支援する。先の言葉でいうと「もうひとつの片輪」を作っていく。ただし、それが何かは、私には見えていません。また、内向的なひとだけに、接触の難しさもあると思います

(3)  「社会参加に消極的な方」で「家族や友人との交流が少なくても心豊かに生活」「できている人」をモデルとして提示し、「できていない人」の変容を目指す。これは課題①の解決策になりえると思います

(4)  課題②の解決策は何か? あるいは、そもそも解決すべき課題は実はないのかもしれません
 
 

 先に「この研究から色々なものが派生してきそうで、成果が楽しみです」と書きましたが、(2)(3)(4)をどうすればよいのか、ヒントが出てくるのではないかと期待しています。


2018年8月29日水曜日

(1345)  ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」(0) / 100分de名著

 
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(K0486)  ケアする人のセルフ・ケア、GRACE <介護>
http://kagayakiken.blogspot.com/2018/08/k0486.html
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9月の「100de名著」、ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」が、9月3日()から始まる。Eテレ。
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 

<全4回のシリーズ>  いずれも9月

はじめに  いざ、知の迷宮へ

  タイトル: 修道士は名探偵?

第2回  10日放送/12日再放送
  タイトル: 知の迷宮への旅

第3回 17日放送/19日再放送
  タイトル: 「異端」はつくられる

第4回 24日放送/26日再放送
  タイトル: 謎は解かれるのか
 
 

【はじめに】 いざ、知の迷宮へ
 
 すでに世界的な記号学者であったエーコが1980年、48歳でいきなり小説家デビューを果たします。その作品が、今回取り上げる『薔薇の名前』です。物語の骨格としては、これは14世紀北イタリアのベネディクト会修道院を舞台にした歴史推理小説、ということになるでしょうか。
 
 エーコは62年の『開かれた作品』のなかで、読者を大きく「経験的読者」と「モデル読者」という二つのカテゴリーに分類しています。
 経験読者とは、「この小説はおもしろいな」「悲しいな」など素直に反応しながら物語を読み進める読者のこと。
 モデル読者とは、この小説に作者はどんな戦略を盛り込んでいるのか、またその戦略にはどんな意図があるのか、といったことまで思いめぐらせる読者のことです。
 簡単に言えば、自分の感情のままに読む読者と、小難しく小説を読んでしまう読者、とも言えるかもしれません。そして『薔薇の名前』は、このどちらのタイプの読者にも「開かれて」いる作品なのです。
 


【私の書くFacebook(Blog)での方針】

 テレビでは4回に分けて放映されます。私の書くFacebook(Blog)では各回について(1)(2)と2稿ずつ書きこんでいく予定です。(1)は経験読者を意識し、あらすじを追いかけていきます。(2)はモデル読者を意識し、解説風に書いていきます。

 読み方としては、(1)だけを読めば、普通の推理小説として読めると思います。つまり経験読者は、私が(1)で示すあらすじを参考にすると、原著を読みやすくなると思います。

 他方、ギリシャ文化、キリスト教を含む文化、およびヨーロッパに蓄積されてきた思想や著書といったものに関する「素養」がないと『薔薇の名前』を「深読み」できません。素人にその「素養」を解説してくれているテキストの一部を紹介するのが(2)です。したがって、モデル読者としては、こちらの方が役立つと思います。

 なお、「ヨハネの目次録」については、第4回の(2)で集中的に書くこととし、(1)では触れません。また<アフリカの果て>の謎解きも、(1)の中では触れません。推理小説として読む時は必要なことですが、限られた紙面で書く都合上(1)で触れないことにしました。
 


<出典>
和田忠彦(2018/9)、ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)
添付写真は、この本からの転載


2018年8月28日火曜日

(1344)  夏休み「小1の壁」 学童保育 待機児童増加

 
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(K0485)  携帯電話やスマホを持つ高齢者が認知症になったとき <脳の健康>
http://kagayakiken.blogspot.com/2018/08/k0485.html
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 夏休みも終わる時期になってしまったが、書いておく。
 

 これは、以前書いた次の投稿の続編である。

(1337)  働くママ、初の7割超え
http://kagayaki56.blogspot.com/2018/08/1337.html
 
===== 引用はじめ
 働く母親の割合が初めて7割を超えたことが、厚生労働省が20日に公表した2017年の国民生活基礎調査で分かった。
===== 引用おわり
出典は、前回書いてある。
 


 7割以上のお母さんが働いている。ここから派生する問題の一つとして、夏休み「小1の壁」がある。
 
===== 引用はじめ
 子供が小学校に上がり、仕事と子育ての両立が難しくなる“小1の壁”に、働く親たちが直面している。小学生を放課後に預かる「学童保育」に空きがなかったり、閉所時間が短かったりして働き方の見直しを迫られるケースは多い。終日の預かりが必要となる夏休みには負担はさらに大きくなる。女性の活躍推進を阻む一因ともされる壁はどうしたら打破できるのか。(社会部 三宅陽子)
===== 引用おわり
 

 どう困っているのか。たとえば、
 
===== 引用はじめ
  「仕事が思うようにできなくなる」。千葉市の会社員の女性(38)は今春、小学生になった長男の預け先に困った。保育園のときはフルタイムで働き、お迎えは夜8時ごろでよかった。だが、検討した公設の学童保育の利用時間は夜7時まで。勤務時間を短縮しなければならず、結局、夜9時まで利用できる民間の学童保育へ入所を決意。働き方は大きく変わらず、胸をなで下ろした。
  公的な学童保育の多くは午後6時半以前に終わってしまうことも、働く親を悩ませる。夏休みには弁当が必要になるなど新たな負担も発生し、子供を終日預けなければならないことに戸惑いを感じる親も少なくない。
===== 引用おわり
 

 実態は、

===== 引用はじめ
 共働き世帯などの増加で学童保育の需要は現在、急速に高まっている。厚生労働省の調査によると、昨年5月1日時点の学童保育数は2万4573カ所で、登録児童数は117万人を超えて過去最高を記録した。登録児童数は約20年前の3倍ほどになる。
 問題も発生している。学童保育に入れない待機児童は約1万7000人にのぼり、地域によっては、小学2年になると通っていた学童から退所させられたといったケースも。
===== 引用おわり
 

 働く親の負担や不安を取り除こうとの動きもある(以下詳細は二つ目の出典参照)。

(1)  東京都町田市では平成28年、保育園や幼稚園で小学生の一時預かりを始めた

(2)  学習塾などを運営する「明光ネットワークジャパン」は、都内を中心に学童保育「明光キッズ」を展開

(3)  企業への要請:「企業は(社員の)ライフステージごとの状況をよく理解し、子育てをしながら管理職ができる体制づくりをしていくことが重要だ。仕事と子育ての両立で直面する不安を払拭し、長期的にキャリアを見通せるようにしていくことも必要になる」(人材育成事業を手がける「スリール」代表で内閣府の男女共同参画に関する専門委員も務める堀江敦子)

(4)  (企業の理解・支持が不可欠だとした上で)「在宅勤務のほか、夏休み中は子供を連れて出勤していい期間を作るなど、柔軟な働き方が重要になる」(堀江)
 

<出典>
夏休み「小1の壁」 学童保育 待機児童増加
産経新聞(2018/07/20)
 
夏休みも深刻“小1の壁” 女性の活躍推進にも影… どう突破する?
https://www.sankei.com/premium/news/180724/prm1807240002-n1.html
添付図は、このサイトより。


(1343) 【来月予告】:ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」。【投稿リスト】:「for ティーンズ」 / 100分de名著

 
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(K0484)  安楽死 / (4) 日本・日本人の場合 <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2018/08/k0484-4.html
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【来月予告】 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」。 / 100de名著
 
2018年9月号 (100de名著)    テキストは、8月25日発売!
ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」
講師:和田忠彦(イタリア文学研究者)
20世紀最大の問題小説
 
14世紀、北イタリアの修道院で連続殺人事件が起こる。これは「ヨハネの目次録」に示された世界の終末の光景なのか――。世界30か国以上で翻訳され、映画化も果たすなど、多くの人々の心をとらえてやまない『薔薇の名前』。ウンベルト・コーはなぜこの「小説」を書いたのか?世界的記号学者が築いた「知の迷宮」の謎に挑む。
 



【投稿リスト】 「for ティーンズ」
 
(1318) 「for ティーンズ」 / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2018/08/1318for-100de.html


 

(1319)  サン=テグジュペリ『星の王子様』(1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2018/08/1319-1100de.html
 

(1320)  サン=テグジュペリ『星の王子様』(2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2018/08/1320-2100de.html
 

(1324)  コンラート・ローレンツ『ソロモンの指輪』(1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2018/08/1324-1100de.html
 

(1325)  コンラート・ローレンツ『ソロモンの指輪』(2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2018/08/1325-2100de.html
 

(1331)  太宰治『走れメロス』(1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2018/08/1331-1100de.html
 

(1332)  太宰治『走れメロス』(2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2018/08/1332-2100de.html
 

(1338) 『百人一首』(1) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2018/08/13381100de.html
 

(1339) 『百人一首』(2) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2018/08/13392100de.html
 

(1340) 『百人一首』(3) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2018/08/13403100de.html
 


<出典>

ヤマザキマリ、瀬名英明、若松英輔、木ノ下裕一(2018/8)、「for ティーンズ」、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

添付図は、この本からの転載


2018年8月27日月曜日

(1342)  阪神「死のロード」は、本当でない / 何故、そうなるのか

 
(1342)  阪神「死のロード」は、本当でない / 何故、そうなるのか


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(K0483)  死者ホテル/寝台車で思い出の地巡り <葬式>
http://kagayakiken.blogspot.com/2018/08/k0483.html
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 阪神「死のロード」は、本当でない――ことは、前回、数値で示した。京セラドームを本拠地として使えるようになったこともあるが、それだけではないだろう。
 
 田尾安志氏は、語る。

===== 引用はじめ
 個人的には、夏のビジター試合がどれほど楽なことか。ホーム試合の場合、選手、特に若手は早くから球場入りし、早出特打などで汗を流す。さらに、相手チームの練習を挟んで試合前にもう一度、ウオーミングアップを行う必要がある。このサイクルが暑さの厳しい夏に続くと疲れるのだ。
 ビジター試合のナイターなら、夕刻に球場入りし、練習は一度だけ。レギュラーは自分のペースに合わせたメニューにすることもできる。だから、僕はラッキーだとさえ思っていた。
===== 引用おわり
 
 
  「死のロード」が本当でないなら、それを「死のロード」と呼ぶのは矛盾である。最近「長期ロード」の方が一般的になっているらしいので、これから先は「長期ロード」と書く。
 
 
 さて、2013年~2017年は、シーズン通してより「長期ロード」の方が好成績で、田尾氏の説で説明できる。今度は逆に、2008年~2012年は、シーズン通してより「長期ロード」の方が悪成績の傾向が強く(正に「死のロード」)、こちらの方を説明できなくなる。
 
 それについて、田尾氏は、次のような話もしている。

===== 引用はじめ
 僕が思うに、昔の阪神には、いわゆる「タニマチ」が多かった。V9時代の巨人も遠征先のどこにもタニマチがいた気がするが、阪神も同じだった。昔の選手はそういうものを楽しみにしていた。ここぞとばかりに飲み歩けば、体力を回復できないのも当然だ。それで「負けが込んだ」と言われても仕方ない。
===== 引用おわり
 
 筋は、通っている。
 
 昔の阪神の選手は、「ここぞとばかりに飲み歩き、体力を回復できない」状態で、「長期ロード」を戦っていた。「そのために負けが込んだ」とは言えないので、「死のロード」と言うことによって、ごまかしていたことになる。
 
 田尾氏によれば、「最近の選手はまじめで、遠征先で飲み歩くことも少なくなった」とのこと。氏の書いていることによって、現実に起こっていることをキチンと説明できる。
 


 以前の阪神の選手の悪口を言おうと書いているのではない。
 
 負ける理由を説明できると、自分の努力が足りなくて負けたことを隠すことができる。理由があるのだから負けてもしかたがないと思うようになると、努力をしなくなる。

 阪神の選手も、私も、そして世の中の多くの人も、この原理で動いているのではないか。
 
 そのことを自覚すれば、そこに陥ることを防げるのではないか。
 こう自分に言い聞かせるために、書き留めているのである。


 


<引用>
自分を律するのがプロ
【野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志】 産経新聞(2018/08/14)
 
自分を律するのがプロ
https://www.sankei.com/west/news/180814/wst1808140008-n1.html
添付写真「阪神時代の田尾安志さん」は、このサイトから。


(1341)  阪神「死のロード」は、本当か? / 思い込んではいけない

 
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(K0482)  45歳以上は現代版「金の卵」 <定年後>
http://kagayakiken.blogspot.com/2018/08/k0482.html
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 夏の甲子園は、大阪桐蔭が優勝、金足農業が準優勝で終わった。大阪桐蔭は、「史上初2度目 春夏連覇」の偉業も成し遂げたのだが、テレビを観ていると金足農業の方が大々的に取り上げられ、大阪桐蔭の影が薄かったのは気の毒だった。
 

 さて、その間、阪神タイガースは甲子園を離れ、頑張っていたのだろうか。
 
 高校野球は、8月5日~16日だったが、阪神は7月26日に甲子園で試合をしたのち、他球場で試合し、8月28日に甲子園に戻ってくる。この期間を「死のロード」という。(京セラドームの試合は阪神主催であるが、「他球場」であり、死のロードに含める)

その間の試合結果、15勝9敗  勝率.625
元データ:
https://m.hanshintigers.jp/game/schedule/2018/08.html
 
 8月25日現在、今シーズン開幕以来のトータルでは、49勝56敗1分  勝率.467
実態は、「死のロード」ではなく「勝利のロード」となっている。
 

 なお、現在、ダントツ・トップの広島の通算は、65勝43敗2分  勝率.602
阪神を優勝させるのは簡単だ。全試合を「死のロード」にすればよい。
地元の阪神ファンは、怒り狂うだろうが !
優勝するより、甲子園で試合をするほうが大切 ?
 


 「阪神 死のロードの成績と勝率は?0817年を振り返り検証」なるサイトがある。
https://proyakyu-baka1dai.net/477.html

===== 引用はじめ
阪神の過去10年の死のロードの成績と勝率、最終成績などを各年ごとに振り返ってみました。
意外と、負け越していないということが分かりましたね。
もはや「死のロード」は鬼門ではない、ということが分かりますね。
 
過去10年の死のロードの通算成績と通算勝率をまとめてみましょう。
2008年~2017年 死のロード】
 通算成績:105996分 通算勝率:.515
===== 引用おわり
 
 
 上記サイトのデータをグラフ化して添付している。結論は明白である。
2012年までは「死のロード」だったが、2013年以降は「勝利のロード」になった。
 
 思い込んではいけない。



2018年8月26日日曜日

(1340) 『百人一首』(3) / 100分de名著

 
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(K0481)  どう年齢を重ねるかを考える <仕上期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2018/08/k0481.html
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第4回  27日放送/ 29日再放送
  『百人一首』  古典と友だちになる
  木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50

再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
(30日午後6:55-7:20にも再放送の予定)
 


l  著者が百人一首をすすめたい理由

(1) 蝉丸の歌に元気づけられた――という個人的な体験
(2) 和歌や古典文学にあまり触れたことのない初心者にとってこれ以上、お得な教材はほかにない
(3) 初心者だけでなく、中・上級者が読んでも十分楽しめる内容になっている
 


l  今の時代に百人一首を読むことの意味は「感覚のアーカイブ」

 アーカイブとは「重要な記録を保存し、未来に伝えること」を意味します。百人一首に収録されたそれぞれの歌の中には、『万葉集』の時代から鎌倉初期までの五百年以上の間に人々が何を見て、何を聞いて、それを五感でどうとらえて、そしてどう思ったのかが、すべて詰まっています。
 

l  昔の人の感覚を知ることによって、私たちは何を学ぶことができるのでしょうか?

(1)  空想の世界に遊ぶことの楽しさ
(2)  言葉で何かを表現することの喜び
(3)  この世界をラクに生きるための心のあり方 など

 百人一首を読んでいくと、現代人が忘れてしまった大切なものにおのずと気づかされることになります。そうした気づきこそが学びであり、感受性を磨き自分を成長させることにもつながっていきます。
 

l  百人一首の味わい方

 必要になるのが「もっと知りたい、学びたい」という情熱です。歌が詠まれた歴史的背景を調べたり、歌人が歩んだ人生を自分なりに想像してみたり――。熱意を持って百人一首を読み込んでいけば、百人一首を美味しくいただけるようになるのです。
 

出典
(2018/8)、「for ティーンズ」、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)
 
添付写真は、次のサイトから切り取り。
https://www.youtube.com/watch?v=xVHCalT8BxA


2018年8月25日土曜日

(1339) 『百人一首』(2) / 100分de名著

 
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(K0480)  異なる人口減の要因 <少子高齢化>
http://kagayakiken.blogspot.com/2018/08/k0480.html
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9首。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
10 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関
     蝉丸
 
 (そう、ここだ! 出発する人も、帰ろうとする人も、知っている人も、知らない人も、みんな行き交い、すれ違い、逢っては別れを繰り返す、ここがその、逢坂の関)
 出会いと別れを感情抜きに、人の動きで表現している。だからこそ、読む人の感情を自由に投入し、味わうことができる。
 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
57 めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな
     紫式部
 
 月を友人になぞらえた歌であることが、「ずっと以前から幼友だちだった人と久しぶりに会った」という詞書から分かります。意訳すると「久しぶりのあなたと会えてとても嬉しかったのに、時間が幻のように過ぎてしまった。もっと一緒にいたかったな」という意味になります。
 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
56 あらざらむ この世のほかの 思ひでに いまひとたびの 逢ふこともがな
     和泉式部
 
 自分が死ぬとわかったら家族や親友や恋人、とくに最後に好きになった人と会いたいというのは、時代や世代に関係なく共通の感情だと思います。作者の和泉式部はたいへん情熱的な女性で、大恋愛を幾度も繰り返すのですが、そのたびに相手に早く死なれたり、周りから非難されて関係がうまくいかなかったりと、男運には恵まれなかったと伝えられています。
 
 
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12 天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ
     僧正変遍昭
 
 この歌の最大の魅力は、実際に見たリアルな情景を空想の力で神話や伝説の世界につなげることによって、優雅さや美しさを際立たせている点にあるのですが、こうした「空想の世界に遊びながら、それを現実につなげる」という発想は、現代人がすでに失ってしまったものといっていいでしょう。
 


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29 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどわせる 白菊の花
      凡河内躬恒
 
 真っ暗な部屋の戸を開けてみたら、一瞬目がくらんだ。実際には、直ぐに初霜と白菊の花は区別がつくようになった。しかし作者は「どうすればあの一瞬の感動を、鮮烈なイメージとして心の中にとどめておくことができるだろ?」と考え、言葉を使って心象風景を再構築したものだろう。写真でたとえるなら、「インスタ映え」を狙った「盛り」
「インスタ映え」御参考  https://taglab.jp/insta-bae/
 


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70 さびしさに 宿をたち出でて ながむれば いづくも同じ 秋の夕暮
     良暹法師
 
 この歌には「人間とはもともとさびしい存在であり、だれもがそのさびしさの中で生きている」という無常観が示されています。 … 「さびしいのはお前だけじゃない」 … そうとらえるとこの歌は「誰もがさびしいのだから、さびしいことを嘆くよりも、それを受け入れて生きろ」と説いているようにも思えてきます。
 


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84 長らへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき
      藤原清輔朝臣
 
 この歌で注目したいのは、現在の視点から過去の自分を振り返るだけではなく、未来の視点からも現在の自分を見ているという点です。「しんどい。大変だ」と思っているときは、目の前の「今」にしか目がいかないのが普通ですが、この歌の作者は、過去――現在――未来という時間軸のなかで、自由に視点を移動しながら、最終的には未来から今の自分を励まそうとしているのです。
 


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4 田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪はふりつつ
     山部赤人
 
 田子の浦にいながら、富士の高嶺で雪が降り続けている様子が見えるわけがない。二台のカメラが、田子の浦と富士の高嶺にあったにちがいない。まず田子の浦から富士を眺めているカットが映し出され、そのあとに雪が降り続いている富士山頂のアップが映し出された。当時にはカメラはないが、選者の藤原定家は、この歌からこのカット割り映像が見えていたのだろう。
 


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93 世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ あまの小舟の 綱手かなしも
     鎌倉右大臣
 
 この歌には、明日が見えないことの不安や、運命を受け入れるしかないというあきらめの気持ちが込められています。作者の鎌倉右大臣とは、実朝です。血なまぐさい権力争いのなかで、親族さえ信用できずに常に暗殺の恐怖におびえながら生きてきたのが実朝だったのです。最後は、暗殺され、短い生涯を閉じることになります。
 


<出典>
(2018/8)、「for ティーンズ」、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)
添付は、この本から