2017年8月31日木曜日

(982) 健全な野党の不在 / 北朝鮮ミサイル(4)


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(K0123) 居住地で異なるがんの死亡率 <体の健康>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2017/08/k0123.html
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「政治の要諦は、国の独立と国民の生命を守り、繁栄を保っていくことである。野党といえども、その責任に変わりはあるまい」(産経新聞 2017/08/23)。

国が滅んでしまったり国の独立や国民の生命を守れなかったりしたら、福祉とか基本的人権とかは、議論するまでもなく、大元から無くなってしまう。繁栄が無ければ、つまりお金がなければ、防衛もできないし、福祉に金を回すこともできない。

「ミサイル防衛体制(MD)」で日本を守れないと(980)に書いたが、その責任は、第一義的には自民党にあると思うが、それを正せなかった野党は、その存在意義がない。国会の場でしっかり議論していたら、もう少しまともなものになっていたと思う。


===== 引用はじめ

 軍事的合理性や費用対効果の面から当初、自衛隊の制服組はMD導入に反対した。これに対し、2002年当時の守屋武昌防衛事務次官は「米国はMD開発に10兆円かけた。同盟国として支えるのは当然だ」と主張して導入の旗を振り、「防衛庁の守護神」といわれた山崎拓元防衛庁長官が後押しする形でMD導入は翌03年に閣議決定された。きっかけは対米追従だったのだ。

 導入が決まると「MDシステムは相手に弾道ミサイル攻撃を思いとどまらせる拒否的抑止の効果がある」など後付けの理屈が考案されたが、「効果がある」のは意図を汲んでくれる相手でなければならない。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長はそんな人物だろうか。

===== 引用おわり
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51364
 

 実にでたらめな議論で、それをちゃんと国民に知らせたら、右も左もない、多くの国民は、正そうとするだろう。

 

 ただ、一つだけ前提条件が必要である。日本の近くにある四つの国には「平和を愛する諸国民の公正と信義」がないことは明白なので、その現実を踏まえて「平和を愛する諸国民の公正と信義」のない国に対して「国の独立と国民の生命を守り、繁栄を保っていく」方法を、野党からもしっかり示してほしい。
 

 民進党は昨今、自民党のあら捜しばかりしているが、それが成功して自民等の支持者が減っても、その人たちの票は、共産党に行くか、日本維新の会に行くか、小池新党のところに行くだけだろう。

 民進党の中の優秀な政治家は頑張って、民進党をまずは、「健全な野党」にしていただきたい。そして日本を守るのに力を貸してほしい。

(981) 抑止理論 / 北朝鮮ミサイル(3)


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(K0122) 75歳以上のがん「治療せず」増加 <体の健康>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2017/08/k0122.html
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北朝鮮のミサイルが日本の頭上を飛んで行った。前々回・前回で「Jアラート」「ミサイル防衛体制(MD)」について考えてみた。今回は、「抑止理論」について考えてみる。


日本の「ミサイル防衛体制(MD)」では日本を守れないことは、前回書いたように明らかである。その状況のもとに、いかに日本を守るか。
 

北朝鮮と「話し合いにより解決する」というのは、少なくともこれまでは役に立たなかった。「話し合いで解決できない」ことは、明白になった。これまで随分話し合おうとしてきたが、何も解決していない。約束しても、北朝鮮は平然と破ってきた。話し合いで解決できるなら、拉致問題はとっくの昔に解決しているはずだ。

戦争で解決したくなければ、話し合いで解決する必要がある。しかし、国家間の話し合いは、その背景にバランスのとれたパワーゲームが必要だ。「一般的に必ず」とは言わないが、「北朝鮮は必ず」と言えるだろう。


相手のパワーから逃れるか、相手からの妥協を得るために、話し合いで妥協する。相手に妥協しなくても自分が困らなければ、妥協することはない。いくら理不尽でも、相手は妥協はしない。

両者とも「性善」ならば、性善説で話し合うことができるかもしれない。しかし、少なくとも一方が「性善」でないなら、性善説による解決はあり得ない。北朝鮮は「性善」ではないので、性善説による解決はあり得ない。解決にいたらなければ、力(軍事力)が無いほうが、力が有るほうに叩き潰される。
 

金正恩は、「抑止理論」信奉者であり、「抑止理論」で考えを組み立てる。だから日本も「抑止理論」で対抗しないと、話し合いで解決できない。

二つの出来事を、上記発想で説明できる。

一つ目は、アメリカのトランプが着任早々、シリアにミサイル攻撃した時の、北朝鮮の反応である。「トランプ大統領は実行力があるとわかり、金正恩は震えあがり、少しはおとなしくなるだろう」という意見もあったが、そのようにはならなかった。これは容易に説明できる。「シリアはミサイルを撃ち込まれても、アメリカに反撃できないから、ミサイルを撃ち込まれた。ミサイルを撃ち込まれないためには、反撃力が必要であり、だからミサイルと核開発を急ごう」。実際、北朝鮮はミサイルと核開発を驀進し、トランプ大統領は武力行使の可能性を口では言うが少なくともこれまでは行使していない。

二つ目は、グアムにミサイルを発射すると言いながら、発射したのは日本の領土上空であった。何故か。アメリカを怒らせると手痛い反撃にあうかもしれないが、日本を怒らせても何も怖くない。反撃できないからである。今のところ、グアムに向けてミサイルは発射していない。

日本になら、何をしても怖くない。だから、何をしてもよい。何かをしよう。これが、今のままだと、行きつく先だと思う。金正恩は、こういう発想をする人だと思う。
 


それでも日本が無事でおられたのは、日本がアメリカの抑止力の「傘の下」にいたからである。でも、これがいつまで続くか保証はない。北朝鮮がアメリカ本土に核攻撃できるとアメリカが判断した場合、アメリカがリスクを負ってまで日本を助けるか疑問である。「アメリカ・ファースト」の国だから。


アメリカの抑止力の「傘の下」にいる間に日本が抑止力を整備できなければ、日本の国が地球からなくなってしまうことも十分ありえると、私は思う。

2017年8月30日水曜日

(980) ミサイル防衛体制(MD) / 北朝鮮ミサイル(2)


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(K0121) 「小銭入れパンパン」現象 <脳の健康>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2017/08/k0121.html
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北朝鮮のミサイルが日本の頭上を飛んで行った。北朝鮮がその気になれば、いつでも日本を攻撃できる。前回は「Jアラート」について考えてみたが、今回は「ミサイル防衛体制(MD)」について考えてみる。
 

A.「ミサイル防衛体制(MD)」は、日本を北朝鮮のミサイル攻撃から守ることは可能か
   全く無理

B.イスラエルのミサイル防衛システム「アイアンドーム」
   迎撃成功率9

C.イスラエルが100%とはいかないが守れているのに、日本は守れないのはなぜか
   日本を守ろうとしない政党と、それを支持する国民がいるから

 

【各論】

A.「ミサイル防衛体制(MD)」は、日本を北朝鮮のミサイル攻撃から守ることは可能か
   全く無理

日本のMDシステムはどうなっているのか。
===== 引用はじめ
日本のMDシステムは、開発した米国が勧める通りに導入した。飛来する弾道ミサイルをイージス護衛艦から発射する艦対空ミサイル「SM3」で迎撃し、討ち漏らしたら地上配備の地対空ミサイル「PAC3」で対処する。
===== 引用おわり
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51364

形式としては、整っているが、本当にこれで守れるのか。
量の問題がある。

まず、SM3
===== 引用はじめ
北朝鮮の弾道ミサイル迎撃を想定すると、イージス護衛艦「こんごう型」4隻のうち、2隻を日本海に配備する。搭載するSM31隻あたり8発とされ、1発の弾道ミサイルに対し、万全を期すために2発のSM3を発射する場合、対処可能な弾道ミサイルは8発程度となる。
===== 引用おわり

「一斉に発射されれば(後述)、イージス護衛艦ではたちまち対処不能となり、PAC3が「最後の砦」となる」

ならば、PAC3はどうか
===== 引用はじめ
だが、自衛隊はPAC332基を保有するにすぎない。21セットで活用するので防御地点は16ヵ所に限定される。防衛省は首都防衛に6基使うため、PAC3で防御できるのは残り13ヵ所。しかも1ヵ所あたりの防御範囲は直径約50キロと狭い。

米軍が沖縄県の在日米軍基地を防衛するため嘉手納基地にPAC324基配備しているのと比べ、日本列島全体を32基で守ろうというのは破れ傘、いや骨だけの傘で雨をしのごうというのに等しい。
===== 引用おわり
同上

では、北朝鮮は弾道ミサイルを何発持っているだろうか。
===== 引用はじめ
20135月、米国防総省が発表した「朝鮮民主主義人民共和国の軍事および安全保障の進展に関する報告」によると、日本まで届く弾道ミサイルは「スカッドC」(九州北部、中国地方)、「スカッドER」(本州全域)、「ノドン」(日本全域)の三種類あり、合計250基以上の発射器を保有するとしている。
===== 引用おわり
同上

「ミサイル防衛体制(MD)」で、日本を守ることは、不可能である。

では、「ミサイル防衛体制(MD)」は、所詮、意味がないのだろうか。
――― 否。

 

B.イスラエルのミサイル防衛システム「アイアンドーム」
   迎撃成功率9

===== 引用はじめ
8日に始まったガザ地区へのイスラエル軍によるガザ地区への軍事作戦”Operation Protective Edge”以降、イスラム原理主義組織ハマスがイスラエルに向けて1000発以上のロケットを発射したにも関わらず、22日現在でイスラエルの民間人死者は1名という軽微な被害に留まっています(1名であっても、イスラエル現政権は国民から非難されていますが)。これはハマスのロケットの精度が悪い事も一因ですが、イスラエルに近年配備されたミサイル防衛システム「アイアンドーム」によって、人口密集地に落ちるロケットのほとんどが迎撃されている事も大きいのです。
===== 引用おわり
https://news.yahoo.co.jp/byline/dragoner/20140723-00037615/

 

C.イスラエルが100%とはいかないが守れているのに、日本は守れないのはなぜか

   日本を守ろうとしない政党と、それを支持する国民がいるからである。
   何が起ころうとも、責任を取らず、反省せず、改善しようともしない。
   現実的な国防議論をしない。必要性を考慮せず防衛費を減らすことしか考えない。
   反対と批判だけで、建設的な意見を出さず、日本を丸裸状態にするのを好む。
   中国、北朝鮮、韓国の人なら、そうしたいのはよくわかるのだが。不思議である。

2017年8月29日火曜日

(979) Jアラート / 北朝鮮ミサイル(1)


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(K0120) 指先一つで老化度測定 <健康>
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今朝、起きてテレビをつけたら、BSも含めて「北朝鮮からのミサイル」一色だった。
ちょうどよい機会なので、まとめてみた。

 
1. 時間経緯
今回事前予告なしの発射だったので、現実的な時間経緯が分かった。

5:58 ミサイル、発射
6:02 Jアラート作動
6:06 ミサイル、襟裳岬上空を通過
6:12 ミサイル、海面落下

予告なしの発射にこれだけ対応してみせたのは、正直、すごいと思った。

 
2. 勝負所の(4±α)分間

Jアラートが鳴ってから上空を通過するのに4分かかっている。
今回は最高高度500kmまで上がっている。

低い弾道で飛んでくると、もう少し短い。
落下物があると、落ちてくる時間もかかるので、もう少し長い。

つまり、Jアラートが発せられてから(4±α)分間の行動が、
生死をわけることになる。

 
3. 対応した人もいた

新聞報道によれば「室蘭市によると、子連れの夫婦ら住人4人が…市防災センターに一時避難してきた」。テレビニュースを見ていたら、応援団の合宿中にJアラートを聞き、あわてて屋内に退避する画面が報道されていた。彼らは、正解である。

 
4. 対応しなかった人も多かった

「逃げろと言われても、どこに逃げれば…」と動けなかった人、「ミサイルが落ちてくることはないだろう」と静観していた人、「何をしようと死ぬときは死ぬ」と悟りを開いて(?)避難しなかった人、平然と動画や写真をとりSNSに投稿していた人(理由は後述)、彼らは不正解である。結局は死んでしまうかもしれないが、死ぬ確率は確実に減らすことができる<追記>「不安と恐怖心に駆られてパニックに陥った人」も、次回は対応できるようになれば、今回の経験が生かされる


5. 不正解の原因

(1) 「頑丈な建物や地下に避難して下さい」と放送されたこと…「そう言われても、頑丈な建物も地下も近くにない」とあきらめてしまった

(2) 彼らは「内閣官房の国民保護ポータルサイト」(添付)を読んでいないか、頭にはいていない

(3) そもそもリスク管理意識が希薄である

(4) <追記>リスクに対して心の準備ができていない


6. 何をすればよかったか

三段階ある

(1) 頑丈な建物や地下があれば、そこに逃げ込む

(2) それがなければ、ともかく(頑丈でなくてもいいから)建物に入り、窓から遠ざかる(爆風を受けると危険)。屋外や屋内でも窓際で動画・写真を撮るのは危険

(3) 建物もなければ、物陰に隠れたり、地面に伏せて、頭を守る。溝があれば、入り込む

<追記>パニックに陥った人も、具体的な行動指針を知っておれば行動しやすく、行動することによって、パニックが弱まり、より冷静な判断ができるようになるのではないか。

 
7. 今後に向けての教訓

(1)  リスク管理意識を高める

(2) 「内閣官房の国民保護ポータルサイト」を頭に入れておく
http://www.kokuminhogo.go.jp/

(3) 「勝負所の(4±α)分間」に適切に行動する

(4)  イスラエルから学ぶ … 彼らは日常的にミサイル攻撃を受け、自らを守っている
https://news.yahoo.co.jp/byline/dragoner/20170829-00075104/
  を参照すれば、写真がある(うち1枚を添付)ので、分かりやすい。

(5) <追記> 恐怖感や不安感を取り除き、冷静な判断を取り戻せるような情報提供も大切なのではないか。それは希望的な憶測や安易な気休めであってはならない。例えば、何が「有ったか」だけではなく、何が「無かったか」も伝えるとよい。「5:58に発射されて以降、今まで、次のミサイル発射は確認されていません」

 
8. 落下物

「落下物には触らないでください」とさかんに言っていた。液体燃料のなかに猛毒物質が入っているらしい。逃げよ、できれば、風上の方へ


※※※  追記しました(2017/08/30)。

  4.最後の文
  5.(4)
  6.最後の文
  7.(5)

 
 

(978) 高校野球 + 交通安全= おもしろ啓発表示 ?


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(K0119) 「老衰死10年で3倍」(死因より最期重視へ変化) <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2017/08/k0119.html
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甲子園野球が終わってしまったので、タイミングが悪いが、・・・
 

交通事故注意

(1) 死球! 痛し! 事故! なお痛し!

(2) 夕暮れ時 バックホーム(帰宅)には 気を付けて!

(3) 日本一! 無事故あって 叶うもの!

(4) 横断は、 盗塁同様 よく見てね!
 

特殊詐欺被害

(5) トリックプレーに だまされるな! 振り込め詐欺

(6) キャッシュカード 手渡す前に タッチアウト!
 

その他

(7) そのカバン 誰かがスチール 狙ってる!

(8)  …

 

===== 引用はじめ

 全国高校野球選手権の熱戦が続く甲子園球場(兵庫県西宮市)の入場券売り場前で、警察車両の電光掲示板に映し出される交通安全などの啓発キャッチコピーが、野球にからめられていて面白いと話題だ。

 地元の兵庫県警甲子園署が今春の選抜高校野球で交通安全を呼びかける3種類のコピーを表示したところ好評だったため、今大会に向けて7種類を追加したという。

===== 引用おわり
産経新聞(2017/08/22
http://www.sankei.com/west/news/170822/wst1708220037-n1.html
添付写真は、このサイトより。

2017年8月28日月曜日

(977) 世界バドミントン:奥原希望が「金」 日本勢40年ぶり


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(K0118) 催し物情報(8) <催し物紹介>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2017/08/k01188.html
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===== 引用はじめ

 バドミントンの世界選手権最終日は27日、英国のグラスゴーで各種目の決勝が行われ、女子シングルスで昨年のリオデジャネイロ五輪銅メダルの奥原希望(のぞみ)(22)=日本ユニシス=が同五輪銀メダルのシンドゥ・プサルラ(インド)に2-1で勝ち、初優勝した。

===== 引用おわり
https://mainichi.jp/articles/20170828/k00/00m/050/147000c
写真「金メダルを獲得した奥原希望=AP」は、上記サイトより。

 

 テレビニュースで、少し見ただけなのだが、まさに死闘だった。
動画は、例えば
https://www.youtube.com/watch?v=BZLUYonwScA

 

 激しいラリーが続き、終わると倒れこみ、何とか起き上がって次のゲームになる。テレビニュースによれば、最多が73ラリーだったそうだ(記憶による)。

 「9-11で折り返してから向こう側(の世界)にいったのか、楽しくなって頭の中がおかしくなってきた。ここまできたらもっとできると。そうしたら相手の方が苦しく見えた」.
http://www.sankei.com/photo/story/news/170828/sty1708280009-n1.html

 
 確かに尋常でなかった。

 
===== 引用はじめ

 コート上のごみを拾うふりをして休む時間を稼ごうとする相手は度重なる遅延行為で警告も受けた。準々決勝から3連続のフルゲームとなった日本のエースは足がつりそうになりながら正々堂々とプレーし、会場のファンも味方につけた。

===== 引用おわり

 両方とも、限界を超えていたと思う。こちらが休んでいる間、向こうも休める。理屈から言うと有利になるわけではない。

 

 「これはゴールではない。満足していない」と頼もしい。東京開催が、選手に力を与えているのだろう。

2017年8月26日土曜日

(976) 芥川賞受賞:沼田真佑『影裏』


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(K0117) 学生僧侶(悼みとは大震災と向き合う) / 「寄り添う」(4) <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2017/08/k01174.html
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沼田真佑『影裏』が芥川賞を受賞した。


釣と自然との美しい描写から小説は始まり、ほどなく釣り仲間・飲み仲間が登場する。「そもそもこの日浅という男は、それがどういう種類のものごとであれ、何か大きなものの崩壊に脆く感動しやすくできていた」…これが底流になる。日浅以外にも、様々な人が登場するが、その心理描写にも惹かれた。
 

断っておくが、私は、小説はあまり読まない。小説を読みなれていない人の感想である。

それでも、ピース又吉『火花』、村田沙耶香『コンビニ人間』は、面白く読んだ。へぇっ? そうだったのか! 次はどうなるのだろう?! とそれなりにワクワクしながら読んだ。ところが、沼田真佑『影裏』は、私にとってはそういう本ではなかった。読むぞ!と決めて読み始めたので、意地で最後まで読んだが、苦痛でもあった。特に事件が起こるわけではないし、話は色々移っていくのだが、その脈絡も分からない。表現力はあるなとは思ったが、まさか、それだけではないよね、でもそれが何だか分からない、という印象が読み終わっても続いた。

賞に選ばれたということは、プロの目から見て高く評価されたのであるから、それが分からないというのは、私がいかに小説音痴かということを自白しているようなものである。私は、小説評論家として生きていくつもりはないので、恥をさらしてよいだろう。
 

どうやら色々議論があったようだ。

===== 引用はじめ  P.508
選考会では、一作しか書いていない新人に芥川賞を与えることへの躊躇いの声もありましたが、その文章力の高さは多くの委員が認めるところでした。
===== 引用おわり

一作しか書いていないのに受賞したということは、実質、すごいということだ。

 

あえて、厳しい評価を拾いあげてみると

(1) 村上龍:推さなかったのは、「作者が伝えようとしたこと」を「発見」できなかったというだけで、それ以外にはない。

(2) 奥泉光:短い。これは序章であって、ここから日浅と云う謎の男を追う主人公の物語がはじまるのではないかとの印象を持った。ぜひとも続きをお願いしたい

(3) 宮本輝:沼田真佑さんの「影裏」は、一回目の投票で過半数を超えた。これは私には驚きだった。そんなに高い評価を選考委員の多くが与えるとは予想していなかったのだ。…私は、受賞に賛成しなかった

宮本輝以外は、さほど厳しくない。上に拾い上げた以外は、高い評価だった。私の感想は、宮本輝に近かったが、これ以上詳しくは、ここでは書かない。

 

興味深かったのは、村上龍の評だった。小説は「言いたいことを言う」ための表現手段ではない、一方、「伝えたいこと」はある。村上は「影裏」に「伝えたいと」が書かれているのだが、それが露わになったので、「発見できなかった」と言っている。物語は「予定調和」の連続となり、読み手としての想像力を喚起させることがなかった。

そうか。私は「伝えたいこと」自体を読み取れなないので「苦痛」になったが、村上は「伝えたいこと」が分かってしまって、そこが不満なのだろう。

「ぽつりぽつりと置かれた描写をつなぐのは、主人公の背後にまとわりつく彼の存在。まるで、きらきらと輝く接着剤のような言葉で小説をまとめあげている」(山田詠美)。「誰もがぽつん、ぽつんとその場に取り残され、立ち往生している。ここに立ち込める、救われようのない濃密な孤独」(小川洋子)。選者の評を読んでいると、いろいろな読み方があるのだなと、思う。

 

描写力があるのは、私でもわかるし、選考委員も高く評価している。ただ「うまい」とだけで終わらないのが、選考委員の選考委員たる所以か。

「読者を立ち止まらせるような文章」(吉田修一)、「作者の描写力は新人の域を超えている」(村上龍)、「描写に安定があって、なるほど気持ちがよく読めた」(奥泉光)、「たしかに四人の候補者のなかでは一番うまい」(宮本輝)、「フィッシングや自然の描写は、映像的で力強い。言葉を掴んでくる視力とセンスの良さに感服し、引き込まれて読む」(高樹のぶ子)、「説明を省く。あるいは、圧縮すると、言葉の際に稲妻が光る」(堀江敏幸)、「風景をみっちり描写した時にあらわれる、なんだか妙な、描写をはみ出してしまうもの」(川上弘美)

 

小説を読むだけでは、受け取られないものが、私にはたくさんある。
読後、解説を参考にして、振り返った。

 

出典
文芸春秋(第95巻 第9号)(2017/9)、㈱文芸春秋

2017年8月25日金曜日

(975) 異端者が見た神 / 大岡昇平『野火』(4)


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(K0116) みとり(日本初のホスピス大阪から) / 「寄り添う」(3) <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2017/08/k01163.html
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100分で名著』 8月28日() 22:25 22:50 Eテレ 放映

=====引用はじめ

 一歩逃げ遅れた田村は、手榴弾の破片でもぎ取られた肩の肉の泥を払って口に入れる。自分の肉を自分で食べる――。それは田村の自由でした。

 泉の向こうから全身を現した安田を永松が撃ち、蛮刀で手首と足首を断ち落とした現場を見て田村は嘔吐します。しかし、この一連の流れを田村は「予期していた」。田村は、自分が天使として「神の怒り」を代行しなければならないと考えます。永松が安田を撃った銃を奪い、銃口を永松に向ける。「この時私が彼を撃ったかどうか、記憶が欠けている。しかし肉はたしかに食べなかった。食べたなら、覚えているはずである」。

 それから田村がどうしたかは書かれません。ここで、彼の意識は完全に途切れ、レイテ島の戦場での出来事は終わるのです。

=====引用おわり
 

小説『野火』はここで終わらず、「狂人日記」の章に移る。田村は精神病院に収容されている。あれから六年が経過し、記憶喪失に陥っている。そして最大の後遺症は、肉を食べられなくなっていることである。精神科医によるカウンセリングの一環として、田村は手記を書いていた。

 
続く「再び野火に」「死者の書」の二章で田村は、戦場最後の日々を思い出そうとする。自分がしようとしていた「神の代行」について問い続ける。神とは何か、そして「野火」とは何かと、くだくだしく考えていく。

 

『野火』を書いた大岡にとっての『野火』

(1) 大岡は自分が捕虜となって生き延びたという罪悪感を強く抱いていた。兵士たちはどのように死んだか、その事実を明らかにすることが、生き残った自分にとってできる戦友の死への鎮魂、そして残された遺族への責任であると考えた

(2) 極限状態において、倫理、道徳はどのように発揮されるかを検証した

(3) 検証作業を徹底し、現実に即したコトバを厳しく選ぶことを通じて、戦争の生々しい現実を他者に伝達した

 

『野火』を読む人にとっての『野火』

(1) 「戦争」というコトバもまた一般名詞として、好戦派も反戦派も子どもも使うけれども、誰も本当の悲惨さはわっかていない。しかし、大岡をはじめとする戦争体験者が戦争を語るときは常に実感が前提にある

(2) 『野火』を読むことは、日常化してしまった自分の行動や感情を、もういちど捉え直し、組み立て直し、再現する作業である

(3) 大岡の事実への拘泥、本能と理性の探求の姿勢を受け継ぎ、歴史家にはできない細部を再現することを通じて、創作上の可能性が拡張される

 

9月の「100de名著」は、
 
ハンナ・アーレント『全体主義の起原』
講師:仲正昌樹(金沢大学教授)

~ 悪は凡庸さのなかにある ~

 ナチス・ドイツによるユダヤ人問題の「最終解決」。それはある時期のある地域に特有の問題だったのか? それとも―――。ナチスの迫害を逃れた一人のユダヤ系ドイツ人学者の著書を通じて、「人間にとって悪とは何か」「悪を避けるために私たちはどうすべきか」について考える。


テキストは、8月25日発売予定。

 

出典:
島田雅彦、大岡昇平『野火』~汝、殺すなかれ、「100DEで名著」、NHKテキスト(2017/8)

2017年8月24日木曜日

(974) 場を創る・場を場とする


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(K0115) 魂の苦痛(仏教を支えに最期まで生き抜く) / 「寄り添う」(2) <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2017/08/k01152.html
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Facebook友達のAtsuko Hidaさんの話を聞けるということで、聞きに行った。

平成29年度こうべ・すまいる楽校(すまいるネット)
「つながる住まい方、暮らし方」~住まいをシェアする、地域でシェアする
2017/08/19 こうべまちづくり会館
 

  感想(私の感想で、以下のような話があったのではない)

(1) 「衣食住」というが、「住」が一番複雑である。「住」を「寝泊まりするところ・住んでいるところ」とのみ限定してとらえるなら単純だが、それ以上の意味をもちえる

(2) 「交差点」は、開かれた空間で、人が行き来するが、相互干渉はない。人が行き来し、相互干渉がある、閉ざされた空間を「場」と呼ぶことにする

(3)  人の行き来がなく、相互干渉がなければ単純な「住」である。そこに、人の行き来や相互干渉が加わると「場」になる」

(4) 「住」を「場」にすることを、「場を創る」「場を場とする」と呼ぶことにする

(5)  空間的な場所があっても、そこに「創る」「場とする」という能動的な働きかけがないと、「場」にならない

(6)  開会挨拶で、「これまでは器に注目してきたが、今回はつながり方に注目した」とあったが、まさに「場」を見ようとしていた
 

  紹介された事例

(1) NPO法人ライフデザイン 北圭司さん
 大阪市生野区で、シングルマザー支援サポートつきのシェアハウス「はぐぅーむ まな」を運営

例えば、
https://www.npo-homepage.go.jp/npoportal/detail/113010437
https://www.facebook.com/shinmama.house/

 
(2) NPO法人ソーシェア 東村奈保さん
 大阪の吹田市などで、「住人と地域が“食”でつながるシェアハウス」を運営。また、神戸でキッチンを共有する場・シェアキッチン「ヒトトバ」を運営。

例えば、
http://www.soshare.jp/
https://www.facebook.com/hitotoba/
 

(3) NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸 飛田敦子さん

 神戸で、人が集い交流と活気を生み出す「地域の居場所」づくりを支援。

例えば、
http://www.cskobe.com/
http://www.cskobe.com/wp-content/uploads/sites/4/2016/06/summit_20160807.pdf