2020年8月16日日曜日

(2062)  ミヒャエル・テンデ『モモ』(3-2) / 100分de名著



◆ 最新投稿情報
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(K1203)  生きがいのない人は長生きできない / なぜ人の悪口を言う人は、死亡リスクがたかいのか(4) <長寿>
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大事なのは「今だ」ということを感じること、そこでちゃんと動けること。何かと理由をつけて動かない人は「星の時間(うまくいくタイミング)」を逃がすことになる。もちろん早まって動き出すのもだめなのだが
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第3回  17日放送/ 19日再放送
  タイトル: 時間とは「いのち」である
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 
 
【テキストの項目】
(1)   時間をつかさどるマイスター・ホラ
(2)   時間の源とは何か
(3)   時間のマンダラ
(4)   全体であり、個別である
 
(5)   死と再生、無と充溢
(6)  「星の時間」をつかむ
(7)   帰還とギャップ
(8)   もう一度、時間の国へ
 
【展開】
(1)  時間をつかさどるマイスター・ホラ
(2)  時間の源とは何か
(3)  時間のマンダラ
(4)  全体であり、個別である
 以上については、既に書きました。

(5)  死と再生、無と充溢
 モモは死が怖くない。これは彼女が近代人ではないことを意味します。近代人は死を恐れますが、前近代の人にとって死は怖いことではなく、あの世に帰っていくことであり、また戻ってくることを意味します。花もこれと同じで、枯れてもまた新たなつぼみが花となって咲き誇ります。つまり、モモが生きているのは再生する時間(源とつながった時間)なのです。だからこそ時間の源では、時間が花として描かれていると考えられます。
 ホラがいる「どこにもない家」も、名前こそ否定表現ですが、中に入ってみると花があり、池があり、金の天井があって光が射している充実した世界です。しかし、ホラは死を象徴する存在でもあり、無を想起させる。満たされているけれど、ないものでもある。―― 再び仏教を引き合いに出していえば、これは色即是空の「空」に通じるものでもあるでしょう。

(6)  「星の時間」をつかむ
 ホラは針も数字もない時計を持っているのですが、それは「星の時間」がわかるという時計でした。
 動くのが早すぎると物事はうまくいかない。うまくいくタイミングが「星の時間」なのです。心理学では、これをクロノスに対してカイロスといいます。クロノスとはいわゆる普通の時間の流れ、カイロスとは時のめぐりがちょうどぴったり一致する時のことです。言い換えるならば、「時計で計れる時間」と「時計では計れない質的なタイミング」です。

(7)  帰還とギャップ
 モモはホラに促されて眠りにつきます。目が覚めると、モモは円形劇場跡に戻っていました。
 向こう側の世界を見てきた人は、こちら側に戻った時にそのことを忘れてしまうことがよくありますが、モモは鮮明に覚えていた。
 「でもいちばんあざやかに記憶にのこっているのは、金の丸天井の下で見聞きしたことです。いまでも目をとじるだけで、これまでにいちどとして見たことのないほどうつくしく、はなやかな色どりの花々が、まぶたにうかびあがってきます。」
 灰色の男たちの策略によって、モモが友達から遠ざけられているという背景もあります。ですからモモが円形劇場跡に戻ってきてからあとは、彼女が友人たちとつながることのできない話が長く続きます。

(8)  もう一度、時間の国へ
 モモから友達を引き離すという灰色の男たちの策略は、見事に成功しました。町のみんなはもう豊かな時間を生きてはいませんでした。いってみれば、灰色の男たちに完全に洗脳されてしまったのです。
 しかしながらモモはすごい。変わってしまった現実世界を本来の姿に戻すためには、もう一度時間の国に行かなければならない―― 一度行けたのは偶然かもしれません。でも、二度も行くことができればその体験は必然になり、自分のものになります。孤独にさいなまれるモモは、そのミッションへと踏み出すことになります。


<出典>
河合俊雄(2020/8)、ミヒャエル・テンデ『モモ』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)


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