2020年8月1日土曜日

(2048)  ミヒャエル・テンデ『モモ』(1-2) / 100分de名著


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抱えてきた思いは、語られることで重要な意味を持つ。自分さえわかっていれば、人にいわなくても同じだと思うかもしれない。でもそうではない。誰かに語って共有されることによって、初めてそれは本当のことになる
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第1回  3日放送/ 5日再放送
  タイトル: モモは心の中にいる!

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25


【テキストの項目】
(1)   ドイツ・イタリア・日本
(2)  「むかし、むかし」が意味すること
(3)   円形劇場とモモ
(4)   相手の話を聞くということ
(5)   なぜモモは話が聞けたのか

(6)   大きな物語と小さな物語
(7)   ベッポとジジ
(8)   いにしえの時を知るベッポ
(9)   完璧な三人と、四つ目の異物
(10)人に何かを話すということ

【展開】
(1)  ドイツ・イタリア・日本
(2)  「むかし、むかし」が意味すること
(3)   円形劇場とモモ
(4)   相手の話を聞くということ
(5)   なぜモモは話が聞けたのか

(6)   大きな物語と小さな物語
 ここで『モモ』という作品が持つ、特徴的な構造についてお話ししておきましよう。『モモ』には、主人公モモが灰色の男たちから町を救うという大きな物語の中に、航海ごっこのような小さな物語がいくつも入っています。 … 本の中の本、あるいは物語の中の物語は、エンデが得意とする構造のようです。

(7)   ベッポとジジ
 『モモ』にはさまざまな対の関係、あるいは二項対立による構造が見られます。すぐに気がつくのは老人と若者の対比でしょう。物語にはモモの親友が二人登場しますが、そのうちの一人べッポは道路掃除夫のおじいさん、もう一人のジジ(本名ジロラモの愛称)は観光ガイドの若者です。
 とても長い道路の掃除を割り当てられ、終わりが見えない時、べッポはこう考えるのです。
 「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな? つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」 またひと休みして、考えこみ、それから、
 「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事かうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」

(8)   いにしえの時を知るベッポ
 モモはいにしえの時の復活を象徴していると述べましたが、この場面からもそのことが読みとれます。
 一方でべッポは「今ここ」が充実している人物です。つまり、いにしえの時がよみがえり、充実した時間として今があるのだと解釈できます。ですから、掃除のひと掃きに全宇宙があり、壁にはめこまれた石にいにしえの時を重ね見ることができるのです。

(9)   完璧な三人と、四つ目の異物
 ベッポとジジは大の仲良しでした。そして二人にはモモがいます。モモとベッポとジジ。三人は強い友情で結ばれています。
 しかし小説や物語が好きな方でしたら、三から成る完璧な世界に四つめの異物が入ってきてこそ物語がおもしろくなることをご存じだと思います。三人が調和しているだけでは物語は動かない。だから灰色の男たちが登場するわけです。

(10)人に何かを話すということ
 実は、ジジが一番楽しみにしていたのは、ほかの人が誰もいなくなったあとに、モモ一人に話を聞かせることでした。ジジには、みんなに語る話と、モモにだけ聞かせる話があるのです。
 今の世の中を考えてみると、 … ツイッターに何かをつぶやき、プログを書いて、インスタグラムに写真を上げる。とにかく不特定多数に向けて自分の話をし続けていて、モモとジジのような「二人だけのもの」と呼べるような話はなくなっているように思います。


<出典>
河合俊雄(2020/8)、ミヒャエル・テンデ『モモ』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)


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