2020年2月20日木曜日

(1885)  ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(4-1) / 100分de名著

 
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身近でありながらも、政治の世界ではあまり聞くことのない語彙、具体的には「真実」「倫理」「人間性」「愛」といった表現が多用されている。そして、演劇における社会との関与は、ディシデントの姿勢にも連なる
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第4回  24日放送/ 26日再放送
  タイトル: 言葉の力
 
【テキストの項目】
(1)  「言葉の力」を考え続けた人、ハヴェル
(2)   視覚詩で言葉の本質を射抜く
(3)   上滑りする言葉の不条理を描く戯曲
(4)   演劇が社会を変えていく
 
(5)   言葉――両面的価値のある、いつわり多き現象
(6)   大統領としての言葉
(7)   倫理の力
(8)  「力」を想起させる言葉
 
【展開】

(1)  「言葉の力」を考え続けた人、ハヴェル
 … そして何より、戯曲家と政治家という二つの顔は、実は一つに繋がっているのではないかという感覚を覚えました。その両方の領域の結節点とも言うべき文章が、この『力なき者たちの力』だとようやく感じるようになったのです。
 ハヴェルはこの本を通して、「力」の構造だけではなく、「力」をつくる「言葉」についても考察しています。
 
(2)   視覚詩で言葉の本質を射抜く
 『反-記号』は、タイプライターを使って制作した視覚的な詩を集めたものです。この詩集に使われているのは、小説や詩の「言葉」とは異なり、白いページの上に自在に配置された「文字群」です。単語と単語の組み合わせから生じる意味に空間的な要素が加わり、通常の線状的な言語表現とは異なる表現の可能性が模索されています。
 「障壁」という作品は、「私(jā)」と「あなた(ty)」の障壁として「言葉(slova)」が立ちはだかっています。
 
(3)   上滑りする言葉の不条理を描く戯曲
 『ガーデンパーティー』は、登場人物による質問と答えがかみ合わずにどんどん行き違っていく、ナンセンスな戯曲になっています。『通達』は、ある役所を舞台にした架空の人造言語「プティデペ」を巡る不条理劇です。
 この二つの戯曲でハヴェルが表現したのは、社会主義体制下の官僚制度における「言語の儀式化」であり、言語の空虚さでした。言語は力を持つこともあれば、空虚にもなりうる。
 
(4)   演劇が社会を変えていく
 ある書簡でハヴェルは、演劇と社会との関係について、三つの領域があると論じています。
   演劇は上演されることによって「今、ここに」あるという状況をつくり、その場にいる演者と観客の間に実在的な絆を生みます。
   演劇を見るために劇場に通うようになると、自分の現実の生活の中に演劇が根を下ろします。
   演劇が社会の精神に少しでも介入すると、その精神を全体的に変えることに繋がります。
 
 以下については、後に書きます。
(5)   言葉――両面的価値のある、いつわり多き現象
(6)   大統領としての言葉
(7)   倫理の力
(8)  「力」を想起させる言葉
 
<出典>
阿部賢一(2020/2)、ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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