2018年2月18日日曜日

(1152) 嫉妬。 モテない男の純愛は報われない /ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』 (3-2)

 
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(K0293)  「看取りで」での経験を語る会 <臨死期>
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第3回 2月19日放送/2月21日再放送
月曜日   午後 10:25~10:50

()水曜日 午前 05:30~05:55
      午後 00:00~00:25
 

 男の悲しい性(サガ)。前回は「オタクの元祖」、今回は「新たなる嫉妬」。
 

 ジプシーの踊り子エメスメラルダ(16歳)を巡り、ノートルダム大聖堂の司教補佐クロード、ノートルダム大聖堂の鐘番カジモド、王室射手隊の隊長フェビュスの3人の男が、愛と嫉妬に翻弄されている。
 


各々のキャラ

(1) エメスメラルダは、本人にはその自覚はないが、男たちを身もだえさせ、恋した男たちはみな身を滅ぼすという宿命の美女(ファム・ファタル)の原型でもある

(2) クロードは、映画などでは悪役キャラとして描かれているが、実は作者自身の抱える矛盾がかなり投影された、陰影に富む複雑な主人公(アンチ・ヒーロー)である。

(3) カジモドは、ユゴー好みの怪物的なキャラである。ユゴーをはじめとするロマン派には、このような異形の存在をフィーチャーする特徴がある

(4) フェビュスは、「女という女はみんな、いいふらふらとなるタイプの美男子」だが、内容は空っぽで虚栄心が強いだけの洒落者である
 

エメラルダへの情熱

(1) クロードは、聖職者の身でありながらエスメラルダに肉欲を覚え、手を尽くしてエスメラルダをわがものにしようとするが、ことごとく失敗した。エスメラルダから戻ってくるのは嫌悪だけだった

(2) カジモドは、エスメラルダに純愛をささげる。処刑されようとしたエスメラルダを救い出し、守っている。エスメラルダは「いい人」だとは思うが、それ以上のものではない

(3) フェビュスは、誘拐されそうになったエスメラルダを救い出したことがある。エスメラルダは一途な思いを寄せた。フェビュスには婚約者がおり、浮気心で抱こうとしたがクロードに襲われて未遂に終わる。エスメラルダは片思いをつらぬきとおす
 

3人の男の嫉妬

(1) クロードは、フェビュスに嫉妬した

(2) カジモドも、フェビュスに嫉妬した

(3) クロードはやがて、自らに服従するカジモドにさえ嫉妬した
 
===== 引用はじめ
 ある夜、耐えきれなくなったクロードはついに修道院の自室を飛び出し、エスメラルダの眠っている大聖堂の小屋に侵入すると、いきなり背後から抱きつこうとします。暴れて抵抗するエスメラルダに向かって「わたしがどんなにおまえを愛しているかわかってくれ!」と叫び、「わたしを卑しんでくれ、叩いてくれ、意地悪をしてくれ!(中略)だが、お願いだ!わたしを愛してくれ!」と再び哀願するのです。これを聞いたエスメラルダが「あっちへ行け、悪魔!」と叫んでも、男の腕力にはかないません。押さえ込まれてしだいに力尽き、淫らな手に体をまさぐられますが、いくら叫んでも助けは来ません。そのときふとカジモドの笛を思い出し、力をふりしぼって吹き鳴らします。
 すると短刀をひらめかせてカジモドが飛び込んできます。クロードは投げ倒され、外へと引きずられていきます。ところが月明かりで、相手がクロードだと気づいた瞬間、カジモドは手を放すと後ずさりします。急に立場が変わってクロードが居尺高になると、うなだれて哀願します。「どうぞお好きなようになすってください。だが、まず、わたしを殺してください」と言いながら、クロードに短刀を差し出したのでした。
 しかし、そのときエスメラルダが素早くカジモドの短刀を奪い取り、クロードに向かって大きく振りかざして「わたしはフェビュスさまが死んでいないのを知っているんだよ!」と、敢えて相手の心を突き刺すような残酷な言葉を口にします。
 クロードはカジモドを蹴飛ばすと、怒りに身を震わせながら去ります。…
 

 ユゴーは第九編の最後にこう書いています。
 
    もうおしまいだった。クロード師はカジモドに嫉妬した!
 
 フェビュスに嫉妬するならまだしも、とうとうカジモドに対してまで嫉妬するほどに、クロードの心は追い詰められていたのです。
 「誰にもあの女は渡すものか!」と、クロードは独り、嫉妬に燃えるのでした。
===== 引用おわり
 


出典
鹿島茂(2018/2)、ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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