2018年2月18日日曜日

(1151) 男性の恋愛感情のある種の典型 /ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』 (3-1)

 
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【第3回 目次】
1.      『真夏の世の夢』構造
2.      呪われた男の恋
3.      怪物の純愛
4.      オタクの元祖
5.      新たなる嫉妬


 今回は「オタクの元祖」、次回は「新たなる嫉妬」。いずれも男の悲しい性(サガ)である。
 
 具体的な記述はここでは省くが、クロードの行動は「オタクの元祖」というより、ストーカーである。『コレクター』で描かれた、蝶のコレクターである孤独な若者の心理に似ている。一目惚れした美人の女子学生を誘拐して監禁し、「おれがこれだけ愛しているのだから、おまえも愛してくれなければいけない」と説教する。クロードの一方通行の独りよがりな恋愛感情と同じだ。
 
 ここまで来ると犯罪であり、別世界の物語(自分はそこまではしない)として多くの男性は捉えるだろう。一方、次に述べる「男性の恋愛感情のある種の典型」は、決して特異ではない。モテたいと思った男がとる、ごく普通の態度である。
 
===== 引用はじめ
 男性というものは、自分が努力して獲得したもの - 高い地位や豊かな学識、お金や家、車など - を見せつければ、相手の女性が自分のことを好きになるはずだと思い込みがちだからです。しかし、実際には、女性が男性のそうした獲得形質(*)に惚れることはほとんどありません。女性が恋愛感情を覚えるのは、悲しいかな、男性の容姿や肉体や声やトークなどの「かくあるがままの姿」なのであって、その男性の努力によって獲得されたものではないのです(もちろん、例外はありますが)
===== 引用おわり
(*) 獲得形質 = 生物が生まれた後に、環境の影響や訓練などによって獲得した形質(外部から確認できる特徴)のこと。次世代には遺伝しないとされる。例えば、親の手足に残った切り傷の跡や、学習して身につけた外国語の能力などは、子どもには遺伝しない。
 

 4分の3は正しいが、4分の1は疑問と、私は思う。

(1)  ○ 男性は、獲得形質を見せつければ、相手の女性が自分のことを好きになるはずだと思い込みがちである

(2)  ○ 実際には、女性が男性のそうした獲得形質に惚れることはほとんどない
  「高い地位や豊かな学識、お金や家、車など」に惚れることはある

(3)  ○ 女性が恋愛感情を覚えるのは、「かくあるがままの姿」なのである

(4)  × 女性が恋愛感情を覚えるのは、男性の容姿や肉体や声やトークなどに限る
 

 「容姿や肉体や声やトーク」に劣っていても、そんな男性に恋愛感情を抱く女性はたくさんいる。その人らしさを出している「かくあるがままの姿」は、「容姿や肉体や声やトーク」には限られず、情熱や明るさや誠実さ、態度や生き方、様々なありかたがある。
 
===== 引用はじめ
 男性は、… 努力は報いられ、最終的には、その努力の成果により女性に愛されると思い込まなければ、なにひとつ成し遂げることはできない …。努力は認知されなければならない、しかも最高の美女によって。女性からすればまことに身勝手な思考ですが、現実には男性はこの思考により努力を重ね、文明というものを築いてきたのです。
===== 引用おわり
 
 
 女性からの恋愛感情を得られるとは限らないのに、男性は勝手に思い込み、努力し、文明を築いてきた。女性の魅力、男性の勘違いのおかげである。
 

出典
鹿島茂(2018/2)、ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)


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