2017年9月10日日曜日

(990) 「国民国家」と「反ユダヤ主義」 / 『全体主義の起原』(ハンナ・アーレント_) (2-2)


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(K0131) 女性の労働形態 / 定年女子 <定年後>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2017/09/k0131.html
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9月11日放送/9月13日再放送
100分で名著』 Eテレ 放映
月曜日   午後10:2510:50
()水曜日 午前05:3005:55、午後00:0000:25
 

第一回の復習である。

 異分子を排除することで同質化を図ってきた西欧の「国民国家」と、その過程で顕在化した「反ユダヤ主義」の問題:

(1) 国民国家の成立
 “nation state”は、文化的アイデンティティを共有する人たちからなる国家である

(2) 国民国家の中の「仲間ではない人」
 国民国家のなかで、「仲間」と「仲間ではない人」の選別が起こった

(3) ユダヤ人解放令
 市民権を与えられたユダヤ人は同時に、ユダヤ人であることを否定された。

(4) ユダヤ人の葛藤
 内部に取り込まれたユダヤ人は異分子であり、同化を求められた

(5) 先鋭的なユダヤ人「排除」の序曲
 ユダヤ人を「内」に取り込むことは、実は先鋭的なユダヤ人「排除」の序曲だった


因みに、日本は国家と国民がほぼ一致しており、このようなプロセスは発生していない。

 

<各論>

(1) 国民国家の成立

===== 引用はじめ  P.19
国民国家とは、英語で言うと「nation state」です。国家と訳される「state」は、法律が整備され、官僚組織や警察、軍隊などを備えた「統治のための機構」を指します。「nation」は通常「国民」と訳されていますが、 … 「nation」は生まれを同じくする、文化的アイデンティテイ(同一性)を共有している、ということを含意します。さらに言えば、文化的アイデンティティ――具体的には言語や歴史など――を共有する人たち、フランス人とかドイツ人、イギリス人、ロシア人といった人々の共同体が、自分たちで自分たちを治めるべきだという自治の意識をもったとき、それが「nation」になります。
===== 引用おわり
 

(2) 国民国家の中の「仲間ではない人」

===== 引用はじめ  P.20 – P.21
ヨーロッパでは、様々な言語、宗教、習慣を持つ人々が一つの地域に混在し、また、政治的境界線もしばしば変動するため、「国民」が居住する地域の境界線と、統治機構としての「国家」の領域がなかなか一致しないという事情がありました。いまだかつて百パーセントの一致をみた国民国家はありませんが、無理やり一致させようとすると、どうしても問題が起きます。それは「仲間」と「仲間ではない人」の選別です。
===== 引用おわり
 

(3) ユダヤ人解放令

===== 引用はじめ  P.21、脚注
当時、ドイツや東ヨーロッパ、ロシアには、かなりの数のユダヤ人が定住していました。… うまく「仲間」に取り込んでいくため、同化が進んでいたユダヤ人にも同権を保障する「ユダヤ人解放令」が各国で次々と出されました。

… ユダヤ人に市民権が与えられた。ユダヤ人はゲットー(強制隔離されたユダヤ人居住区)から解放され、職業・不動産所有・信仰の自由が与えられたが、同時に国民として同化を強要され、ユダヤ人であることを否定された。
===== 引用おわり
 

(4) ユダヤ人の葛藤

===== 引用はじめ  P.21 , P.22
同質的な住民の内部ではユダヤ人は疑いもなく異分子であり、そのため、同権を認めてやろうとするのであれば、ただちに同化させ、できることなら消滅させてしまわねばならなかったのである。

それも致し方ないと受け入れるユダヤ人がいる一方で、自分たちの歴史や独自性を手放すことに抵抗を覚える人も、当然出てきます。しかも、ドイツ人になりきったところで、自分たちに対する差別がなくなるという保証はありません。ここに、ユダヤ人の大きな葛藤が生じてきます。
===== 引用おわり
 

(5) 先鋭的なユダヤ人「排除」の序曲

===== 引用はじめ  P.22
かつては「外」にあって憎悪の対象だったユダヤ人は、国民国家が形成される過程で「内」なる異分子となりました。「すでに奇妙な矛盾がひそんでいた」とアーレントが指摘しているのは、ユダヤ人を「内」に取り込むことが、実は先鋭的なユダヤ人「排除」の序曲となっていたことです。
===== 引用おわり

 

出典:
仲正昌樹、ハンナ・アーレント『全体主義の起原』、「100deで名著」、NHKテキスト(2017/9)

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