2017年7月22日土曜日

(941) 「虚栄心」と「誇り」のはざまで / 『高慢と偏見』ジェイン・オースティン(4 / the end)


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   『100分で名著』 7月24() 22:25 22:50 Eテレ 放映

【流れ】(前回からの続き)

13.   ダーシーと決裂した翌日、エリザベスは彼から長い手紙を受け取る(P.82)

14.   エリザベスがペンバリー屋敷訪問し、ダーシーと再会する(P.85)

15.   ダーシーから妹を紹介された。そして、エリザベスの誤解は氷解した(P.87)

16.   妹のリディアが駆け落ちをした。そして、エリザベスは愛に目覚めた(P.90)

17.   ダーシーがベネット家を訪問した。そして、エリザベスの「偏見」が蘇った(P.91)

18.   エリザベスは、キャサリン・ド・バーク夫人と対決した(P.92)

19.   ダーシーの強い愛。求婚に訪れ、エリザベスはそれを受け入れた(P.94)

 

 刑事もののサスペンスでは、最後に意外な犯人が浮かび上がるというのが定番である。しかし「刑事コロンボ」では、冒頭から犯人は分っている。完全犯罪に見えるものを、いかに崩していくかが、「刑事コロンボ」の面白さだと思う。


 ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』は、

A.  女主人公のエリザベスは最後にはダーシーと結婚することは予想される。読者は、どういう結末になるかを楽しむのではなく、どのようにその結末になるかを楽しむ

B.  「そのような結末はありえない」というような事件が次々と起こる。「それを言ったらおしまいだよ」という発言が飛び出し、「おしまい」を予感させる心情が披露される

C.  「おしまいへの流れ」を止め、逆流させるパターンがいくつかある
 ①  エリザベスを陥れようとするたくらみが、エリザベスに有利に働く
 ②  エリザベスの捨て台詞か、逆に有利に働く
 ③  エリザベスの「高慢と偏見」が、逆にダーシーの愛を呼び寄せる
 ④  周囲の出来事が、エリザベスやダーシーの恋路に影響する

D.  一種のシンデレラ物語であるが、普通のシンデレラ物語ではない。エリザベスは、美人ではない。エリザベスの性格も褒められたものではない。エリザベスの行動が誠実であるともいえない。エリザベスが一途な愛をもっていたのでもない。それでも、ハッピーエンドになる。エリザベスは普通のシンデレラではない

E.  登場する人物は、「そのあたりにいそうな人物」である。俗っぽい人たちが、俗っぽさ丸出しで登場する

F.  他への非難の言葉が、そのまま自分自身に当てはまるのだが、当人は気づいていない(しかし読者は密かに気づく)。その種のアイロニーが頻繁にでてくる

G.  「人間性とは何か」「人間の弱点は何か」「どのような認知の歪みがあるか」というサブテーマが底流にある

H.  ストーリーが急展開するが、「うそくささ」が少ない

I.  大事件は起きない。それでいて、面白い。大事件に頼らず、写実力と構成力で面白さを演出している

 

100DEで名著」8月は、大岡昇平『野火』
~ 人間を人間たらしめるもの

太平洋戦争末期のフィリピン戦線における
一兵士の異常な経験を描いた『野火』は、
1952年(昭和27年)に発表されるや大きな反響を呼んだ。

戦争、人間、神、倫理とは何か--。
著者大岡昇平が本作に込めた多彩な主題を
作家・島田雅彦が読み解く。

 
テキストは、724日 発売予定

 

出典:
廣野由美子、ジェイン・オースティン『高慢と偏見』~虚栄心は乗り越えられるか~、「100DEで名著」、NHKテキスト(2017/7)
 
添付:第4回人物相関図、「田舎の村の三、四軒が、小説の格好の題材」

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