2020年8月20日木曜日

(2065)  ミヒャエル・テンデ『モモ』(4-1) / 100分de名著



◆ 最新投稿情報
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モモはきゅうにじぶんのなかにふしぎな変化がおこったのを感じました。不安と心ぼそさがはげしくなってその極にたっしたとき、その感情はとつぜんに正反対のものに変わってしまったのです。勇気と自信がみなぎり、
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第4回  24日放送/ 26日再放送
  タイトル: 「受動」から「能動」へ


【テキストの項目】
(1)   眠りを経て訪れる転機
(2)   立ち上がる主体
(3)  「みずから」と「おのずから」の結節点
(4)   ホラを再訪する

(5)   ラジカルなイニシエーション
(6)   灰色の男たちの最期
(7)   毒は自滅する
(8)   あとがきの意味を考える
(9)   大人がファンタジーを読むことの意味

【展開】
(1)   眠りを経て訪れる転機
 灰色の男に再び会うのが怖くて、都会の人混みにまぎれて逃げ続けたモモは、やがて疲れ果て、止まっていたトラックの荷台にもぐり込んで寝てしまいます。ここでモモが眠ってしまう点に注目したいと思います。
 これは、すべてのアクションをいったんやめてしまうことを意味します。あるいは、すべてを放棄して一歩後退することを選ぶともいえるでしょう。ここに転機が生まれるのです。いろいろと方策を考えて、あれこれ思案し続けるのではなく、全部をあきらめたところから変化が起こる。心理臨床の現場でもよくあることです。
 モモはすべてを放棄することで、どんなものにも負けない勇気を得ることができたのです。 こうしてモモは、灰色の男に会うことを決断します。

(2)   立ち上がる主体
 円形劇場跡に戻ろうとするモモの前に、灰色の男たちが大勢現れました。彼らの要求はこうです。自分たちは人間から時間を盗んでいるが、一人ひとりから一分、一時間と時間をかき集めるのでは効率が悪いから、いっそすべての人間の時間をまとめて自分たちのものにしたい。ついては私たちをマイスター・ホラのところに連れて行け。そうすれば友達は返してやる。
 しかしモモはその要求を拒みます。 … ここで初めて、モモは「自分がやらなければいけない」と立ち上がり、灰色の男たちの要求に対して、毅然として「ノー」をつきつけるのです。
 モモは初めからアクティブで能動的だったわけではありません。ずっと受動的で、さらには周りとつながれていないという孤独にも打ちひしがれ、眠ってしまいました。そんなまったくの無に到ったからこそ、モモはついに主体として立ち上がったのです。

(3)  「みずから」と「おのずから」の結節点
 モモの立ち上がりは「自然(ジネン)」という概念からも説明できます。
 自然の「自」という漢字には二つの意味がありますね。「みずから」と「おのずから」です。「みずから」は主体的な意志を表し、「おのずから」は物事が勝手にそうなることを意味します。自然とは、その二つが合致する時のことなのです。「みずから」ばかりだと空回りし、「おのずから」を待っていると何も起こらない。しかし、その両方が合致する瞬間というものがある。それが自然であり、ホラのいう「星の時間」でしょう。

(4)   ホラを再訪する
 モモは、再び現れたカシオペイアとともに、もう一度ホラのところへと向かいます。モモに取引を断られた灰色の男たちは二人のあとをつけ、さかさま小路の手前で「どこにもない家」を包囲しました。しかし彼らは、どうしてもさかさま小路に入ることができません。
 葉巻の煙が「どこにもない家」をすっぽり包んだら、ホラが人間たちに送り込む時間にも毒が混じり、人間は病気になるとホラはいいます。具体的には、何もする気がなくなり、いろいろなことに不満が募り、最後には何もかもどうでもよくなってしまう。

以下は、後に書きます。
(5)   ラジカルなイニシエーション
(6)   灰色の男たちの最期
(7)   毒は自滅する
(8)   あとがきの意味を考える
(9)   大人がファンタジーを読むことの意味

<出典>
河合俊雄(2020/8)、ミヒャエル・テンデ『モモ』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)


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