2019年2月24日日曜日

(1524)  (45) 森鴎外『ヰタ・セクスアリス』 / 「明治の50冊」

 
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(K0665) 「有終」という概念 <仕上期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/02/k0665.html
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1.   どんな本か
 
2.   あらすじ
2.1.  発端
2.2.  書かれている内容
 
3.   性欲の取り扱い方
3.1.  田山花袋「蒲団」
3.2.  自然主義作品
3.3.  鴎外の『ヰタ・セクスアリス』
 
4.   賛否
4.1.  発禁
4.2.  高い評価
 
5.   現代的意義
 

【展開】

1.   どんな本か

 幼少期から青年期に至る性的体験をつづった異色の自伝的作品。『ヰタ(ウィタ)・セクスアリス』は、ラテン語で「性欲的生活」を意味する。文豪・森鴎外の小説。
 

2.   あらすじ

2.1.  発端
 主人公・金井湛(しずか)は、先人と違うものを書きたいと常々思っていた。〈性欲というものが人の生涯にどんな順序で発現して来て、人の生涯にどれだけ関係しているか〉-。そんな内容を記した文献が少ないのに気付いた金井は、ふと自分の性欲の歴史を書こうと思い立つ。

2.2.  書かれている内容
 初めて春画らしきものを見た幼少期。学校の寄宿舎で上級生の男子に性の対象として目を付けられ屋根の上に逃げた話。硬派の友人らとの交流と、遊郭・吉原での体験…。鴎外自身の歩みとも重なる、6歳から結婚する25歳までの金井の性生活が年代順に回想されていく。
 

3.   性欲の取り扱い方

3.1.  田山花袋「蒲団」
 女学生への恋情を赤裸々に告白した花袋の『蒲団(ふとん)』(40年)に倣(なら)うようにして、性欲におぼれる私生活を自ら暴露する小説が続々生まれていた。

3.2.  自然主義作品
 「『性欲こそが人間の本質』であるかのように人が性欲に振り回される様子を描いたのが多くの自然主義作品。

3.3.  鴎外の『ヰタ・セクスアリス』
 『ヰタ-』は、性欲というのは教育や周囲の環境で形成される部分が大きいのだと示した。何も性欲が人生のすべてではない-との思いが鴎外にはあったのでは。
 

4.   賛否

4.1.  発禁
 自慰や童貞喪失を想起させる記述もあり、最初に原稿を読んだ雑誌編集者は驚いたとされる。案の定「スバル」の掲載号は発禁に。

4.2.  高い評価
 詩人・評論家の大町桂月は「風俗を害せざるのみならず、ひろく天下の少年青年に読ましめたきもの也」と高く評価した。
 

5.   現代的意義

 記述が客観的だから発表当時の人々の性に関する考えを伝える記録としても読める。同性愛への見方をはじめ、時代によって性意識が変わっていったこともよく分かります」(伊藤准教授(*))。一個人の性生活を追った一編は、日本社会の変遷へと読者の思考を誘う。
(*)明治大の伊藤氏貴准教授(日本近代文学)
 

【プロフィル】森鴎外(もり・おうがい)
 文久2(1862)年、石見(いわみ)国(現在の島根県)津和野に生まれる。本名・林太郎。東大医学部卒業後、陸軍軍医に。ドイツ留学を経て、軍医の傍ら『舞姫』などを執筆。主な作品に『雁』『阿部一族』。大正11(1922)年、萎縮腎と結核のため死去。享年60。
 

<引用>
森鴎外『ヰタ・セクスアリス』
【明治の50冊】(45)  産経新聞(2018/02/04)
 
(45)森鴎外『ヰタ・セクスアリス』 医師視点で描く「性欲の自伝」
https://www.sankei.com/life/news/190211/lif1902110013-n1.html

 

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