2018年11月30日金曜日

(1438)  スピノザ「エチカ」(1-1) / 100分de名著

 
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第1回  3日放送/ 5日再放送
 タイトル:善悪
 
【テキストの項目】
(1)   スピノザの三つの名前
(2)  「哲学する自由」を求めて
(3)  「神すなわち自然」――汎神論
(4)  『エチカ』はどんな本か?
(5)   組合せとしての善悪――倫理学の始まり
(6)   スピノザの感情論
 

【展開】

(1)   スピノザの三つの名前
 スピノザにはファーストネームが三種類あります。ベントー(ポルトガル語)、バルーフ(ヘブライ語)、ベネディクトゥス(ラテン語)です。三つとも「祝福された者」という意味なのですが、それぞれがスピノザの人生の異なった側面を象徴しています。
 
(2)  「哲学する自由」を求めて
 『神学・政治論』という本の中でスピノザは、哲学の真理と神学の真理を区別し、神学は進学として追求されるべきであり、それによって哲学の真理が蹂躙されることがあってはならないと主張します。
 
(3)  「神すなわち自然」――汎神論
 教科書ではしばしば、スピノザの思想は「汎神論」と解説されています(本人によるネーミングではない)。「汎神論」とは、神羅万象あらゆるものが神であるという考え方です。日本で「八百万の神」のような、多神教的な自然崇拝のイメージが馴染み深いと思いますが、スピノザの「汎神論」では神はただ一つです。
 スピノザの哲学の出発点にあたるのは「神は無限である」という考え方です。そうすると「神には外部がない」「すべては神のなかにある」ということになり、神はつまり宇宙のような存在だということになります。実際、スピノザは神を自然と同一視しました。これを「神即自然」といいます(読みは「神そく自然」あるいは「神すなわち自然」)。
 このような神の概念は、「意志を持って人間に裁きを下す神」というイメージには合致しません。彼の思想が「無神論」と言われた理由はここにあります。
 
(4)  『エチカ』はどんな本か?
 「エチカ」という言葉は、「倫理学」を意味するラテン語です。「道徳」ではなく「倫理」です。仮に道徳が超越的な価値や判断基準を上から押し付けるものだとすれば、倫理というのは、自分がいる場所に根ざして生き方を考えていくことだと言えます。
 サブタイトルは「幾何学的秩序によって論証された」です。まるで数学の本のように、最初に用語の「定義」が示され、次に論述のルールを定める「公理」が来て、それからいくつもの「定理」とその「証明」がひたすら続き、そこに「備考」という補足説明がついて…という形式が繰り返されます。

 『エチカ』は全体が五部で構成されています。
第一部 神について
第二部 精神の本性および起源について
第三部 感情の起源および本性について
第四部 人間の隷属あるいは感情の力について
第五部 知性の能力あるいは人間の自由について
 

以下については、次回に書きます。
(5)   組合せとしての善悪――倫理学の始まり
(6)   スピノザの感情論
 

<出典>
國分功一郎(2018/12)、スピノザ「エチカ」、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)


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