2018年8月16日木曜日

(1332)  太宰治『走れメロス』(2) / 100分de名著

 
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(K0473)  先進地域の台湾から仏教緩和ケアを学ぶ <臨死期>
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第3回  20日放送/ 27日再放送
  太宰治『走れメロス』  「主人公」は誰か
  若松英輔(批評家・随筆家)
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 
(23日午後6:55-7:20にも再放送の予定)
 

このテキストの目次

(1)  メロスは主人公か?
(2)  王の回心
 
(3)  物語の舞台はどこ?
(4)  外界の物語、内面の物語
(5)  語らないセリヌンティウス
(6)  偉大なる兄のいる場所
(7)  なぜメロスは走るのか?
(8)  試練と向き合う心
(9)  「走る」と「生きる」
(10)信じること、信じられること、疑うこと
(11)暗闇にもたらされる光
(12)おわりに
 
 
A)   紹介 ~ (1)(2)は、前回投稿済み
 
(3)  物語の舞台はどこ?
 略
 

(4)  外界の物語、内面の物語
 この物語の舞台は外界であるだけでなく、こころの世界である内界でもある。
 王も、メロスも、セリヌンティウスも、また民衆も、私たちのこころの中にもいる。私たち一人一人のこころの中に、彼らがいるのではないか。
 

(5)  語らないセリヌンティウス
 セリヌンティウスは、ほとんど語りません。彼は語る人ではなく、さまざまなことを体現する人物なのです。彼が行為によって実現する、見えないコトバを読み取らなくてはなりません。
 

(6)  偉大なる兄のいる場所
 略
 

(7)  なぜメロスは走るのか?
 妹の結婚式が終わり、メロスはいよいよ走り出します。「私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ」「友を救い、悪を倒すために走らなければならない。それが名誉を守ることになる」。このような気持ちで走っていたのだが、途中から変わってくる。
 「そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気さを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した」。自分の置かれた立場の自覚を忘れてしまった。
 

(8)  試練と向き合う心
   安心しているところに危険が起こる。川が氾濫し、メロスは泳ぎ切った。山賊に襲われ、何とか撃退した。しかしそこで疲れ果て、立ち上がることもできなくなりました
   身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った
   彼の眠れる良心が静かによみがえってくる
   メロスは、自分のために無実の友が殺されるという、自分が「死ぬよりもつらい」現実を発見します
   死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス
 ここでメロスのちからとなっているのは、彼の精神力でも彼の良心でもありません。自分が誰かに信頼されているという実感です。
 

(9)  「走る」と「生きる」

 最初メロスは、殺されるために走る、と言っていました。ここでは「信じられているから走る」と口走っています。
 ここで「走る」は、「生きる」という言葉に置き換えることができるのではないでしょうか。
 

(10)信じること、信じられること、疑うこと

 相手を信じることがそのまま、自分を信じることになる。彼らが疑うのは、より深く、より確かに信じるためです。疑いに注がれたエネルギーが、信じることの方に転換されるのです。
 

(11)暗闇にもたらされる光
 メロスとセリヌンティウスがともに、自分の至らなさ、弱さを誠実に見せ、たがいに赦しを乞う姿を見て王の心は、稲妻に打たれたように激変し、最後に「おまえらの望みは叶ったぞ。おまえらは、私の心に勝ったのだ」と言いました。
 ここで「勝つ」というのは、何かを打ち倒すことではなく、暗闇に光をもたらすことです。王の心を覆っていた闇は、弱さを受け止め合うという行為が放つ「光」によって消えたのです。
 

(12)おわりに
 最後に皆さんに提案があります。それはこの作品の続きを書いてみることです。「走れメロス」は、完成された作品ではありません。皆さんはセリヌンティウスを主人公にしてこの作品の続編を書くこともできる。メロスの妹からメロスを見ることもできる。また、町の老人に語らせることもできるでしょう。

 

出典
(2018/8)、「for ティーンズ」、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)
添付は、この本から



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