2018年6月29日金曜日

(1284)  コンプレックス / 河合隼雄スペシャル(1-1) / 100分de名著

 
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(K0425) 見つけた課題、行政任せにせず / NPOで社会を変える(2) <システムの構築>
http://kagayakiken.blogspot.com/2018/06/k04252.html
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第1回  2日放送/ 4日再放送

  タイトル: こころの問題に寄り添う
 


【第1回の目次】

(1)     入門書を超えた心理学の金字塔
(2)     悩める人と「HOW」ではなく「WHY」を探る
(3)     ユングのタイプ論で知る「隠れた自分」
(4)     無意識は意識を補償する
(5)     あなたは思考型、それとも感情型?
(6)     心理機能の相補性

(7)    「コンプレックス」は克服できるか
(8)     コンプレックスとの「対決」

(9)     人間の心に潜む二つの「無意識」
(10)   普遍的無意識と「元型」
(11)   認めがたい自分の中の「影」
(12)  「影」と日本人の心
 

 えっ? こんなに詰め込むの? とびっくりです。4回(100分)全部をこれに充てても、消化不良になりそうです。絞り込んで書きます。
 


【項目】 今回の投稿は、(7)(8) 「コンプレックス」

A)   コンプレックスは、建設的なものになりえる
B)   言語連想実験に関する著作の中で、コンプレックスの概念が現れた
C)   コンプレックスは、自我の存在そのものを脅かす
D)   自分を守ろうとする「投影」は、コンプレックスを解消するチャンスでもある
E)   コンプレックスを自我の中に統合し、エネルギーを建設的な方向へ
 


【展開】

A)   コンプレックスは、建設的なものになりえる

 コンプレックスは「努力によって自我のなかに統合されるときは、むしろ建設的なものになる」といいます。
 

B)   言語連想実験に関する著作の中で、コンプレックスの概念が現れた

 このコンプレックスという言葉を、現在私たちが用いているような意味で使い始めたのはユングです。言語連想実験に関する著作の中で、ユングは「感情によって色づけられたコンプレックス」という言葉を用い、その後これを略して「コンプレックス」と呼ぶようになりました。
 言語連想実験とは(添付図参照)、ごく簡単にいうと「頭」「緑」「水」「歌う」「死」といった単語を聞いて、そこから連想されるものを素早く答えていくものです。一通り終えた後に、「もう一度繰り返しますので、前と同じことをいってください」と再検査します。
 単語によっては反応にかなりの時間を要したり、再検査で同じことをいえなくなったりします。こうした反応の背景には、連想を妨害する情動的要因――つまり心の乱れがあり、心を乱す言葉が「死」「別離」「悲しい」など一つのまとまりをなしていることから、ユングはこれを複合体=コンプレックスと名づけました。
 コンプレックスは「無意識内に存在して、何らかの感情によって結ばれている心的内容の集まり」であり、それは「統合性をもつ自我の働きを乱すものです」。
 

C)   コンプレックスは、自我の存在そのものを脅かす

 無意識内のコンプレックスが強くなっていくと、意識の中心にある自我(添付図参照)に干渉してその動きを乱し、さらには自我の存在そのものを脅かすようにもなると著者は指摘します。その最たるものが二重人格(解離性障害)の現象で、これはいわば「自我がその王座をコンプレックスに乗取られたような状態」といえます。
 なぜ、そんなことが起こるのか。それは、コンプレックスが「ある程度の自律性をもち、自我の統制に服さない」からです。その意味で、コンプレックスとは自分の中にいる他人のようなものなのです。
 

D)   自分を守ろうとする「投影」は、コンプレックスを解消するチャンスでもある

 そのようなコンプレックスから自分を守ろうとして自我は様々な防衛方法を探りますが、その中で重要なものとして、著者は「投影」を挙げています。これは自分のコンプレックスから目を背け、それを他人に投影することで自我の安全を図るというものです。つまり自分の中の他人であるコンプレックスを文字通りの他者に押し付けてしまうわけなのです。
 厄介なものではありますが、投影はコンプレックスを解消するチャンスでもあります。「あいつは――」と思っていたことが、実は他人の中に見出した自分自身のコンプレックスであると気づき、それと対峙することができれば、コンプレックスとうまく付き合っていく方法を会得し、それまで敵対していた人と、良きライバルとしての建設的な関係を築いていくことも可能だと著者は説いています。これが「投影のひきもどし」と呼ばれるものです。
 

E)   コンプレックスを自我の中に統合し、エネルギーを建設的な方向へ

 悩んでいる時より、悩みを解消していく過程のほうがつらい――といわれると、ひるむ人もあるかもしれません。しかしそこを乗り越え、コンプレックスを自我の中に統合していくことができれば、コンプレックスに鬱積していた心のエネルギーは建設的な方向へと向けられることになります。
 大切なのは、具体的にどのようにコンプレックスと対決していくかでしょう。著者は、現実の人間関係の中で、ときに他者と火花を散らし、つらい思いもしながら「コンプレックスを生きてみる」ことが肝要だと指摘しています。
 


出典

河合俊雄(2018/7)、河合隼雄スペシャル、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)
添付写真は、この本からの転載



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