2018年1月14日日曜日

(1117)  「天」と「道」・陽明学 /西郷隆盛『南洲翁遺訓』(2-2)


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(K0258)  集いの場(居場所)の分類 <地域の再構築>
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前回からの続き。「天」と「道」。


 先ず「道」から。気力も体力も充実した三十代の半分以上を、奄美大島ほかの島流し生活で過ごさねばならなかった。それら困難を克服することができたのは、自らが「道」を行っているのだという強い自負心に支えられているからであり、それは「死生」へのこだわりすら乗り越えてしまうのだ、と西郷は言っている。


===== 引用はじめ
『遺訓』の第29条(現代語訳・解説)

 天から与えられた道を実践する者には、災厄はつきものであるから、そんなとき、そのことがうまくいくかどうか、その身が生きるか死ぬかといったことなどどうでもいいことなのだ。
 事には当然のことながら、うまくいくいかないがあり、物には出来不出来があるものだ。人は自ずとそのことに心を奪われがちであるが、その事とか物ではなく、天の道なのであるから、そこに上手下手などはなく、できないという人もないものなのだ。
 だから、ひたすら道を行い、道を楽しみ、もし困難や苦しいことに遭ったならば、ますますその道を実践し楽しむという心を持つがいい。私は、若いときからたいていの困難や苦しみを経験してきたから、今はどのようなことに出合っても動揺することはない。それだけは、幸せである。
===== 引用おわり
 

 「天から与えられ道」とは何か。「天」とは何か

===== 引用はじめ
 日本思想史に大きな影響を及ぼした儒教では、「天人合一思想」という概念が重要です。われわれ人間は、天という、人間を超越したものから宿命的な役割を与えられているのだ、それに合致することで行動する強い動機を獲得するのだ、こういう概念だとひとまず言えるでしょう。「天」から与えられた役割を果たすという強い宿命感を持っているからこそ、幕末の維新革命運動を可能にする能動的エネルギーが生まれたのだととらえる研究者もいます。
===== 引用おわり

 「天人合一思想」は儒教に一般的な思想だが、「以前は天と人とが一体化するという、あまりに壮大かつ詩的な、多分に情緒的なものに過ぎなかった」が、幕末の対外的危機意識が「天人合一思想」を活性化させた。


 西郷の思想の背景には、儒教、特に陽明学があったようである。

===== 引用はじめ
 陽明学は朱子学の思想体系をベースに、「知行合一」(まず行いを「理」と合致させよ)、「致良知」(自分の心に備わる道徳性を実践せよ)という簡潔なスローガンを掲げました。自己の内面を重視し、同時に自己の行動を重視する。きわめて自己規律的な思想なのです。
===== 引用おわり
 

陽明学のもうひとつの特徴として、「万物一体の仁」がある。

===== 引用はじめ
 「万物一体の仁」とは、人と人との和合・自他の統一への激しい衝動を意味します。他者への強い愛情は、万物一体という倫理感情に支えられ、他者にとっての危機を自分のものとして背負う気概を生み出したのです。
===== 引用おわり
 

出典
先崎彰容(2018/1)、西郷隆盛『南洲翁遺訓』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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