2017年8月12日土曜日

(962) 兵士たちの戦場経済 / 大岡昇平『野火』(2)


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100分で名著』 8月14日() 22:25 22:50 Eテレ 放映
 

【構成】

(1)  戦場経済を動かすもの

(2) 「何故私は射ったか」 - 動機と原因

(3)  塩本位制資本家となった田村

(4)  究極状態が価値を変容させる

(5)  自然界の法則か否か

 

 今回は、(1)(5)の構成になっており、
テーマを大きくくくると、三つの塊に分けられる。
 

 一つ目は、通常の経済が破綻した後の戦場独自の経済である。(1)で「煙草本位主義者」の安田について語り、(3)で「塩本位主義制資本家」となった田村について語っている。

 二つ目は、究極状態で何が起こるかである。(2)では、咄嗟に女を撃ち殺した後、田村がその動機と原因を自問する。(4)では、究極状態において、ときにモノの価値や意味ががらりと変わることがあると述べている。

 三つ目は、一つ目での述べた「戦場独自の経済」が、二つ目で述べた「究極状態」がさらに極まるとき崩壊し、(5)「人は、ほとんど動物的な食物連鎖の輪の中に放り込まれる」ことになると述べている。

 

 大きな流れとしては、食べることに窮するその度合いにより、まず「原始経済」に戻り、さらに極まると「食物連鎖」にまで戻っている。これは、人類が長い時間をかけて「進化した」、それを短時間に遡っているように見える。
 

 物語は、巧みに組み立てられている。(2)では一つ目のテーマを取り上げながらも、二つ目のテーマを扱っている(3)へと無理なくつないでいる。三つ目のテーマは一つ目・二つ目のテーマを総括しながら、次回取り上げるテーマ(人間を最後に支えるもの)へと導いている。

 

出典:
島田雅彦、大岡昇平『野火』~汝、殺すなかれ、「100DEで名著」、NHKテキスト(2017/8)

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