2017年5月20日土曜日

(879) 子どもの学校生活 / 子供・若者の文化と教育(4)


子どもの学校生活

 子どもは小学校に入学し、生活の中心が家庭から学校に移行する。家庭と学校ではそこで働く原理が大きく違う。顕在的カリキュラムだけでなく、隠れたカリキュラムも含めて、子どもたちはどのようなことを学んでいるのかを明らかにする。

 
<構成>

0. はじめに

1. 家庭と学校の違い

2. 学校の特質
(1)  学校文化
(2)  教科内容
(3)  学校組織の特質
(4)  学級集団
(5)  一望監視システム
(6)  学校の中産階層的性格、地域格差

3. 学校のインフォーマルな側面と子ども
(1)  隠れたカリキュラム
(2)  教師 - 生徒関係

4. 学校と子どもの今後
(1)  教育家族
(2)  ホームスクーリング
(3)  親の教育参加

 

<各論>

0. はじめに

 本章では、子どもの教育をする学校自体の特質と、子どもと学校の関係、そして学校における子どもの生活の様子を、社会的背景も含めて考察し、子どもの学校での学びや生活について考えてみたい。

 
1. 家庭と学校の違い

家庭と学校は違う。
 
家庭は、属性本位、個別主義、拡散性、感情性、取り替え不可能
の特性を有し、各々に対応して、
 
学校は、業績本位、普遍主義、限定性、感情的中立性、取り替え可能
の特性を有する。

 
2. 学校の特質

(1)  学校文化
 学校文化の具体的諸相は多様である。①伝統、校風、カリキュラム、学校教育目標、時間割、学校行事などに具現化される「制度的下位文化」、②教師のパーソナリティや教職の仕事から生まれる「教師の下位文化」、③生徒同士の相互作用から生まれる「生徒の下位文化(生徒文化)」の3種に分類できる。

(2)  教科内容
学校で教えられる知識は、次のような特質をもっている。①口頭によるものより書かれたものが重視される、②教育内容は日常生活からかけ離れた抽象的なもの、③子どもが有している知識とは関連がないことが教えられる、④学習は個人作業が主となり個人単位で成績評価がなされる。

(3)  学校組織の特質
 現代の学校は、官僚的な組織としての特質を備え、生徒の学習も組織化されている。その一方、実際の学校は、非官僚的な特質も備えている。

(4)  学級集団
 最近は、日本でも、ティーム・ティーチングや学校カウンセラーの導入など、学級王国(=学級の閉鎖性)は崩れつつある。また子どもの意識は個人化しており、クラスの気の合う少数の友人との交友は大事にしても、学級全体での行事や一体感は希薄になっている。

(5)  一望監視システム
 教室は長方形で、教壇は一段高くなっている。教師が一時に全生徒を監視し、統制するのに便利な方法である。監視がいなくても監視の目を意識する「一望監視システム」として機能している。子どもたちは教室で、いつでも監視されているという意識をもち、自由に振舞うことができない。

(6)  学校の中産階層的性格、地域格差
 学校は、中産階層的な文化が主になっている。教師も中産階層に位置し、デスクワーク(机に向かう)、高い野心をもつこと、欲求充足延期(将来の為に今の欲求の充足を延期する)、清潔にすることといった中産階層的な価値が教えられる。

 将来も地域に残り生活するものにとって、自分たちの生活実感に合わない「標準語」は必要ない。中央中心のカリキュラムでは、「生まれた地域で生きる学力」は軽んじられる。


3. 学校のインフォーマルな側面と子ども

(1)  隠れたカリキュラム
 下に示す表4-2は、学校におけるさまざまな活動が、子どもたちにどのような意識や価値観を形成しているかを示したものである。これらは、学校や教師が意図的に行っているわけではなく、知らず知らずに影響を与えているものである。つまり、隠れたカリキュラム(The Hidden Curriculum)である。

(2)  教師 - 生徒関係
 宮澤は、近代以降の学校の困難な理由を、教師が子どもの職業モデルになれないところにあるとしている。徒弟制の時は「同じ仕事を共有する先輩と後輩関係が成り立つ基盤」があり、それが「大人の権威を支える現実的基盤」であったが、「そういった関係をあてにできないところに、近代学校の教師の役割の難しさがある」としている。

 

4. 学校と子どもの今後

(1)  教育家族
 「親こそ子どもの教育の責任者であるとしいう観念」「親の強烈な教育する意思」が「教育家族」の特質になっている。日本では、学校選択やコミュニティ・スクール運動が起こっている。

(2)  ホームスクーリング
 アメリカを中心に各国で、子どもを学校ではなく家庭で親が教育するホームスクーリングが広がっている。ホームスクーリングが日本でも法律的に認められれば、不登校問題を悪化させている「学校神話」はかなり崩れるであろう。

(3)  親の教育参加
学校は親や地域との関連をもちながら、時代と共にその制度的特質や内容(カリキュラム)を変容させてきた。これからは、親が学校運営や授業に参加し、子どもにとってよい学校に変えて行こうという発想が必要であろう。

 

引用
竹内清、「第4章 子どもの学校生活」
竹内清・岩田弘三編(2011)、子供・若者の文化と教育、放送大学教材

0 件のコメント:

コメントを投稿