2016年8月21日日曜日

(606) カントが目指したもの / カント『永遠平和のために』(4) (8月24日(月) 22:25- Eテレ 放送)


『永遠平和のために』は以下のような章立てで構成されている(P.14)

 第1章 国家間に永遠の平和をもたらすための6項目の予備条項
 第2章 国家間における永遠平和のための確定条項
 付録


今回は、付録の部分が中心。
 道徳の<形式>が重要なコンセプトである。

(第1章・第2章の詳細については、後ろの方で紹介する)

 
===== 引用 はじめ  P.76 P.77

… 付録と聞くと、単なる補足説明で、それほど大切な個所ではないのではないかと思われるかもしれません。しかし、じつはこの部分には『永遠平和のために』でカントが展開とした平和論の哲学的基礎 - カント哲学の核心というべきものが書かれています。付録としながら、本全体の半分ほどのボリュームが割かれている…


 まず、付録の前半と後半にそれぞれつけられたタイトルを振り返っておきましょう。
「1.永遠平和の観点からみた道徳と政治の不一致について」
「2.公法を成立させる条件という概念に基づいた道徳と政治の一致について」
 
 これらのタイトルからもわかるように、この付録でカントは道徳と政治の関係をテーマに論じています。とはいえ、「道徳的な政治が永遠平和を実現する」といつた当たり前のことをカントが語っているわけではない…

===== 引用 おわり

 
「法による紛争解決の徹底が平和につながる」。そのためには、「諸国家が共通の法にしたがっている」ことが必要で、その状態が「公法の状態」である。「公法の状態」が実現されるためには道徳と政治が一致していなければならない。

 
道徳とは「無条件にしたがうべき命令を示した諸法則の総体」である。ということは、道徳は必ず実践される。「だから実践の法学である政治と、理論的な法学のあいだに争いはない。実践と理論は対立するものではない」(P.80)

 
カントは、道徳を「内容」と「形式」に分けている。「道徳哲学には、道徳の<内容>から出発するやり方と、道徳の<形式>から出発するやり方があるが、真の道徳哲学は<形式>から出発すべきである」(P.84)

 
===== 引用 はじめ  P.85

… 「汝の主観的な原則が普遍的な法則となることを求める意思にしたがつて行動せよ」… これこそがカントのいう道徳の形式的な原理にほかなりません。簡単に言えば、「誰がおこなってもいいと思えるこを行いなさい」ということです。「普遍的な法則となる」とは「誰がおこなってもいい」ということですから。

=====

 道徳の<形式>が重要なコンセプトである。

 

最後に、『永遠平和のために』目次を示す。

===== 

第1章     国家間に永遠の平和をもたらすための6項目の予備条項

1.戦争原因の排除

2.国家を物件にすることの禁止

3.常備軍の廃止

4.軍事国債の禁止

5.内政干渉の禁止

6.卑劣な敵対行為の禁止


第2章     国家間における永遠平和のための確定条項

第一確定条項 どの国の市民的な体制も、共和的なものであること

第二確定条項 国際法は、自由な国家の連合に基礎をおくべきこと

第三確定条項 世界市民法は、普遍的な歓待の条件に制限されるべきこと

第一追加条項 永遠平和の保証について

第二追加条項 永遠平和のための秘密条項

 
付録

1.永遠平和の観点からみた道徳と政治の不一致について

2.公法を成立させる条件という概念に基づいた道徳と政治の一致について

=====

P.15P.18から編集

 

100de名著 9月は、

石牟礼道子『苦海浄土』 ~ 命の尊厳を問い直す ~

 
出典:
萱野稔人(2016/8)、カント「永遠平和のために」、100de名著、NHKテキスト

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