2016年6月23日木曜日

(548) あわれみ(1/2)


以前、「(545) ライフサイクル後半での生き方の転換 ルソー『エミール』(3-3)」で、
===== 引用 はじめ  P.72
 
「あわれみ」は、「人間愛の最初の種子」であり、「他者への共感能力」のことである。
 
===== 引用 おわり
と書いた。

 

Face Book 上で、3人から同じ趣旨のコメントをいただいた。

  共感能力=あわれみ?
  私の中では憐れみ。哀れみ。上から見下ろすイメージがありますが真逆ですね。
  やっぱり、あわれみは私には、ぴったり来ませんね。Pity is akin to love .

 

私は、翻訳上の問題だと思った。

ルソーはフランス語で「●●●」と書いた。訳者はそれに「あわれみ」という言葉を当てはめ、「共感能力」のことであると解説した。


 先ず、●●●とは何か。新しいFace Book 友達に聞いたところ、すぐに「憐れみはフランス語でpitie 」と返信いただいた。英語の pity  と同じ語源のように思われる。仏英辞典で調べたら、予想通り、pitie の英訳は、pity であった。

 
 フランス語は分からないので、系統の近い英語で調べることにした。

pity: 
    a strong feeling of sadness or sympathy for someone or something
    something that causes sadness or disappointment
Merriam-Webster Online

 
 一気に謎が解明した。pity sympathyの感情が含まれている !

 

 英語圏の人には、pity = sympathy に違和感はないのだろう(仏語圏の人も多分、同様だろう)。しかし、pity を「あわれみ」と訳し、sympathy を「共感」と訳し、その二つを対で見た日本人は、「あわれみ 共感」と感じた。こういうことが起こったのだろう。

 
なお、

 あわれみ〔あはれみ〕【哀れみ/×憐れみ/×憫れみ】
    かわいそうに思う心。慈悲。同情。「―をかける」
<デジタル大辞泉>

 
あわれみ【哀れみ】
    pity, compassion (pityはかわいそうに思う気持ち,compassionは哀れんで何かしてあげたいと思う気持ち); 〔慈悲〕mercy
<プログレッシブ和英中辞典>

 
次回に続く。

 出典:
西研(2016/6)、ルソー『エミール』、NHKテキスト

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