1. 経緯の簡単な整理
(1)告発文書問題
兵庫県の元幹部が、斎藤氏のパワハラの疑いなどを告発する内容の文書を、ことし3月、報道機関などに送った。斎藤氏は「事実無根の内容が多々含まれている」などと批判。その後、元幹部は県の公益通報制度を使って内部通報を行った。しかし県は元幹部を停職3か月の懲戒処分とした。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241117/k10014636221000.html
(一部並べかえた)
(2)パワハラ疑惑、おねだり疑惑
議会が問題視し、マスコミが大々的に報道した
(3)「弁護士でつくる第三者委員会」(以下、「第三者委員会」)
議会は、第三者委員会を立ち上げた
(4)「地方自治法第100条に基づく調査特別委員会」(以下、「百条委員会」)
第三者委員会が結論を出す前に、議会は百条委員会を立ち上げた
(5)不新任決議案
両者が結論を出す前に、議会は不信任決議案を提出し、満場一致で可決された
(6)失職・出直し選
県知事は、辞任や議会解散を選ばず、失職・出直し選を選択した
(7)第三者委員会と百条委委員会は作業を中断した
(8)県知事選で斎藤知事が再任された
以上の経緯を経たので次は(9)に移る
(9)第三者委員会と百条委委員会は作業を再開する
ここで、第三者委員会については、本当に中立な人が第三者委員に選ばれているかが心配だが、手続き上の問題はなく、再開するのが当然だろう
一方、百条委員会の方が悩ましい
2. 県民が無罪と裁定した / 百条委員会は自己矛盾に陥った
単純な言葉を使えば、県民は無罪と裁定した。もし有罪なら、そのような人を知事として選ぶはずがない。ただし、「斎藤氏は有罪だが、当選した」という反論もあろう。
「百条調査権の発動に際しては、証言・若しくは資料提出拒否に対し禁錮刑を含む罰則(同条第3項)が定められており」とされ、強力な調査権限を持つ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BE%E6%9D%A1%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A
百条委員会の委員は、議員であり、委員長や副委員長も議員である。
何故そのような強力な権限を持てるかと言うと、彼らは県民(ここでは兵庫県を想定)から選ばれた人であり、県民からの委託を受け、県民の民意を代表しているからだ(例えば県の職員にそのような権限を与えることはできない。法律の専門家にも、大学の教授にも、民間企業のトップにも、誰にもこの権限を与えることはできない)。
その民意が、斎藤氏を県知事として再び選んだ。
「斎藤氏は有罪だが、当選した」とすると、「県民はバカだから間違えた。百条委員会が正してあげましょう」ということになる。これでは民意を反映するどころか、民意を覆すことになってしまう。依頼主を無視して、自分たちが決めるということになる。県民から与えられた権限で、民意を無視していることになる。そもそもそのような権限は認められない。
もし、選挙の前に百条委員会が結論を出していたら、どのような結論であれ、少なくとも形式的には何の問題もなかった。議会は百条委員会に調査を依頼しながら、百条委員会を無視して勝手に結論を出してしまった。何のために百条委員会を立ち上げたのだろうか。そこが間違っていたので、身動きの取れない状況になってしまった。
3. 裁判官が被告に殴り掛かった / 当事者は裁判官になれない
今回、議会が県知事に不信任を出しということは、議会が県知事に、俗な言葉を使うと、ケンカを売り、県知事がそれを受けたと言えるだろう。県議会と県知事の両方がケンカの当事者であるにも関わらず、一方の当事者が裁判官役を務め、他方の当事者を被告として裁く。こんなことは、あり得ないだろう。
議会はケンカをしかけた以上、絶対に勝たねばならない。まさに、冤罪を生むパターンになっている。このような危険があるのに、このまま進めてよいのだろうか。冤罪をうまない手立ては、あるのだろうか
4. 議会は民意を反映しているのだろうか
議会が意図的に民意を無視したわけではない。
しかし、議会の出した結論「斎藤氏に資質がない」は、民意によって完全に否定された。議会は、民意を反映できていないことを、白日の下に晒してしまった。
議会は、県民から「議会不信任」を突き付けられたのではないか。ただ、本人たちにその自覚はなさそうだ。県民が間違っていると思っているのだろう。そうならば、傲慢だ。
5. 疑惑(1)
斎藤氏当選の原動力の一つとして『旧態依然』『既得権益』への県民の不信が大きかったと思う。斉藤氏の疑惑を追及してきたが、今や、議員たち自身が疑惑の対象になってしまった。
その疑惑をなんとか自ら晴らしてほしいが、多分無理だろう。下手な弁解をすると、疑惑がますます深まってしまうのではないか。ならば、居直るしかないことになる。
6. 疑惑(2)
更に新たな疑惑が出てきた。百条委員会・奥谷委員長 親族の会社が倒産→私怨で斎藤おろしに加担? Xで拡散する疑惑を「一族経営では全くない」と完全否定
https://news.yahoo.co.jp/articles/2f58bec4be71050817df44acce14a7a15575b3c4
奥谷氏は、完全に否定している。奥谷氏の言っていることが正しいとすれば、本件については奥谷氏に何の落ち度もない。ただ、利害関係者となりえる人、あるいは見なされる恐れのある人は、委員長に留まらないほうがよいだろう。特に、厳しい判断を下したら、痛くない腹をさぐられる。
私は本件において奥谷氏を否定するつもりも非難するつもりもない。留まると、本人が苦しい立場になるし、百条委員会も厳しい結論を出しにくくなる。問題があるなら、ちゃんと指摘してもらわねばならない。そのためにも、委員長はかわった方がよいのではないか。
7. 議員辞職
議会が信頼を取り戻すには、議会もやり直し選挙をすれば、すっきりする。斉藤氏は信を問うて再選された。議員も信を問うて再選されれば、誰も文句を言わない、言えない。
再び議会が不信任決議案を提出し、それが通れば、知事が議会を解散できるが、その条件がないと、知事が議会を解散させることができない。解散が怖いから、議会はもう、不信任決議案は出さない。つまり、知事が議会を解散させることはできない。
一方、「地方公共団体の議会の解散に関する特例法」というのがあって、「議員数の四分の三以上の者が出席し、その五分の四以上の者の同意」があれば、自主解散、つまり議員が自ら議会を解散できるらしい。
https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC1000000118/
“兵庫県議会の「みそぎ解散」はあり得るか 維新・吉村氏がけじめ要求、県議賛否入り乱れ”
https://www.sankei.com/article/20241122-GVQIXS5DQFM45ICQX4IZ2BXURE/
ただ、そのようなことをするとは思えない。落選してしまう可能性も大いにある。彼らは県民に信頼されようが、されまいがおかまいなく、任期いっぱい務めるだろう。きっと「次の選挙のころには、みんな忘れているから、大丈夫」と。
8. 県政を停滞させているのは誰か
県政は、ますます停滞するだろう。
発端は斎藤知事のように見えるが、その前に元県幹部がいて、その後ろに議会がいる。
斎藤知事を潰したいのだが、議会で叩いてもはかばかしく進まない、第三者委員会もはかばかしく進まない、百条委員会もはかばかしく進まない、しびれを切らして知事を首にしてもうまくいかなかった。次に何を画策するのだろうか。県知事潰しのためなら、県政を混乱させることもいとわない人たちが県政を停滞させているのではないだろうか。
一方、斎藤知事が県政を停滞させようとすることは、ないだろう。誰よりも困るのは、自分自身だから。
9. 困るのは県民
私も、兵庫県民の一人です。
彼らにとって、県民はどうでもよい、筋が通らなくてもよい、ひたすら自分が可愛いのだろう。私から見ると、可愛くない。
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