2021年4月23日金曜日

(2312)  渋沢栄一『論語と算盤』(4-2) / 100分de名著

 

◆ 最新投稿情報

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『論語』も、基本的には「理想的な政治家や官僚になるために」という視点で語られている。当然、「良い商人になるために」という視点では語られていない。渋沢は、孔子の言葉を読み換え、商業道徳にフィットさせた

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第4回  26日放送/ 28日再放送

  タイトル: 対極にあるものを両立させる

 

 

【テキストの項目】

(1)   矛盾を超えるために

(2)  「士魂商才」の核は信用

(3)  「論語」の長所と短所

(4)  「算盤」の長所と短所

 

(5)  『論語』を大胆に読み換える

(6)   男尊女卑を経済合理性でカバー

(7)  「孝行は、親が子にさせるもの」

(8)   弱者をすくう「思いやりの道」

 

(9)   すべては「志」を全うする手段

(10) 陰陽と太極図

(11) 純粋さだけでは世界は回らない

(12) 今こそ求められる「対極を調和させる」力

 

【展開】

(1)   矛盾を超えるために

(2)  「士魂商才」の核は信用

(3)  「論語」の長所と短所

(4)  「算盤」の長所と短所

 以上は、既に書きました。

 

(5)  『論語』を大胆に読み換える

 『論語』には「富が追求に値するほどの値打ちを持っているものなら、どんな賤しい仕事についても、それを追求しよう。だが、それほどの値打ちを持たないなら、私は自分の好きな道を進みたい」という一節があります。渋沢は、この孔子の言葉を「孔子は、富を得るためには、賤しい仕事さえ軽蔑しなかつた」と読み換えます。

 政治家や官僚は、税金から給料をもらって、いわば国民から養われている存在。ならば仕事において私利を追求するのではなく、国民全体の利益を追求することこそが、あるべき姿でしょう。しかし、商業の世界は違います。商人は、自分で稼がなければ、誰も給料を払ってくれません。生活できなくなってしまうのです。渋沢は「富の追求には値打ちがない」とは言えませんでした。

 

(6)   男尊女卑を経済合理性でカバー

 「論語」の問題を「算盤」の価値観で補っている三つの例

  男尊女卑

 「女性に対する昔からの馬鹿にした考え方を取り除き、女性にも男性と同じ国民としての才能や知恵、道徳を与え、ともに助け合っていかなければならない。そうすれば、今までは五千万の国民のうち2500万しか役に立たなかったのが、さらに2500万を活用できることになるではないか。これこそ、大いに女性への教育を活発化させなければならない根源的な理屈なのだ。」

 注目すべきは、経済合理性の観点から、女性活用を訴えている点。つまりこの主張は、『論語』の男尊女卑という問題点を、「算盤」に含まれる経済合理性という価値観で除こうとしている。

 

(7)  「孝行は、親が子にさせるもの」

  渋沢は、儒教が重んじている親孝行についても、ちょっと奇妙な持論を展開しています

 「親は自分の気持ち一つで、子供を親孝行にもできるが、逆に親不孝にもしてしまう。自分の思い通りにならない子供をすべて親不孝だと思ったなら、それは大きな間違いなのだ。(中略)孝行は親がさせてくれて初めて子供ができるもの。… 親が子に孝行させるのである。」

  「競争は公益の種」という渋沢の考え方は、『論語』の価値観とは基本的に相容れない

 孔子は、戦乱の世に生まれた人でした。だからこそ争いのない平和な中国をつくり、「和」を実現したいと考えていました。しかし渋沢は、進歩や成長という「算盤」の価値観から、争いにも大いに意味があると説きました。

 

(8)   弱者をすくう「思いやりの道」

 「算盤」の問題を「論語」の価値観で補おうとした例

    競争による優勝劣敗で二極化が進み、弱者切り捨てに繋がってしまいかねない

 身寄りのない子どもや病気で働けない人を支援する養育院事業について:「私は別に彼らを優遇せよといっているのではない。あわれみの情を忘れてはならないといっているのだ。みなさんにはぜひこの良心と思いやりの道を身につけ、現場で実際に行ってもらいたい。」

    ルールに縛られ過ぎたり、権利や義務の主張が行き過ぎてしまい、トラブルや軋轢が生じる

 「資本家は「思いやりの道」によって労働者と向き合い、労働者もまた「思いやりの道」によって資本家と向き合い、両者のかかわる事業の損得は、そもそも共通の前提に立っていることを悟るべきなのだ。」… 日本が高度経済成長を成し遂げた背景の一つ、労使協調の考え方の萌芽。

 

 以下は、後に書きます。

(9)   すべては「志」を全うする手段

(10) 陰陽と太極図

(11) 純粋さだけでは世界は回らない

(12) 今こそ求められる「対極を調和させる」力

 

<出典>

守屋淳(2021/4)、渋沢栄一『論語と算盤』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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