2021年2月6日土曜日

(2237)  フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い仮面』(2-2) / 100分de名著

 

◆ 最新投稿情報

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(K1378)  ほっこりカルタで 認知症正しく理解 <認知症>

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「乳白化」の欲望に駆られ、「青い眼」を持つ者に魅了されること。白い肌や青い眼こそが美しいと信じること。「ニグロの娘が白人の世界に受け容れられたいと渇望するのは、自分が劣っていると感じているからだ」

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第2回  8日放送/ 10日再放送

  タイトル: 内面化される差別構造

 

放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50

再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55

 及び        午後 00:00~00:25

 

 

【テキストの項目】

(1)   戦争が落とす影

(2)   レジスタンスに加わる

(3)   アフリカでの衝撃

(4)  「白い仮面」をかぶって

(5)   セゼールとの出会い、そしてフランスへ

 

(6)   叫び、渦巻く文体

(7)  「乳白化」という欲望

(8)  「青い眼」に憧れる少女の自己疎外

(9)   人を貶める過程に加担しない

 

【展開】

(1)   戦争が落とす影

(2)   レジスタンスに加わる

(3)   アフリカでの衝撃

(4)  「白い仮面」をかぶって

(5)   セゼールとの出会い、そしてフランスへ

 以上は、既に書きました。

 

(6)   叫び、渦巻く文体

 『黒い皮膚・白い仮面』の文章は、決して手練れの文章とは言えません。しかしこれを書いた当時、ファノンがまだ二十代半ばの若者だったことを考えれば納得が行きます。人種差別という人間の尊厳と自由を踏みにじる行為に対する激しい怒りに駆られた若者の声、黒人であれ白人であれ同じ人間であることには変わりないという当たり前の事実がどうしてわからないのだと叫ぶ声が聞こえてくるようです。

 ファノンのなかに、相対立する二人の人物――黒人差別に憤り、黒人の尊厳を主張する人物と、黒人であることを呪い、白人になりたいと願う人物――が存在し、両者がファノンの口を奪い合って、それぞれの叫び声を届かせようとしているかのように思える瞬間すらあります。

 

(7)  「乳白化」という欲望

 「白人男性と結ばれることで、みずからも白人になれると信じる女性」が目指すのは、乳白化なのである。なぜなら、結局のところ、血統を白くしなければならないのだから。このことを、この女はすべて知っており、口にし、繰り返し語っている。

 「乳白化」の欲望に駆られ、「青い眼」を持つ者に魅了されること。白い肌や青い眼こそが美しいと信じること。「二グロの娘が自人の世界に受け容れられたいと渇望するのは、自分が劣っていると感じているからだ」とファノンは喝破し、そのような劣等感に病理的なものを見ます。なぜなら、「黒い皮膚の人間には、自分の個別性を逃れ、自分の現存在を無化しよという企てが見られる」からです。

 

(8)  「青い眼」に憧れる少女の自己疎外

 アメリカの作家トニ・モリスンの『青い眼がほしい』では、父親の子供を身ごもる黒人の少女ピコーラの悲劇が、その年下の友人であったクローディアの視点から語られます。

 ビコーラは自分が醜いということに疑いを持っておらず、その醜さがすべての不幸の源だと考えています。そして、ついに醜さと美しさを隔てる鍵がどこにあるのか理解します。「青い眼にしてください」と毎晩かならず彼女は祈った。

 「青い眼」を欲することで、ピコーラは逆説的にも自分の現実―それはたしかにつらく苦しいものです――に対して盲目になることを望んでいます。ピコーラの物語は、「黒い皮膚・青い眼」によって自己疎外・自己破壊へと陥っていく少女の物語なのです。

 

(9)   人を貶める過程に加担しない

 周囲の人々とちがって、クローデイアにはこの青い眼をした人形がかわいいなどとはまったく思えません。彼女は幼いながらも、白人中心主義的な価値観がどのように黒人に「強制」されるかの仕組みを直感的に理解しています。

 青い眼を持ち白い肌をしたものに美を見出し、それを崇めることの正しさを信じて疑わないようにさせるものはいったい何なのか、それはどのような仕組みで機能しているのかという問いを小説というかたちで探求しているのです。

 ピコーラがこうむる貶めの過程に作者として加担はしまいと一生懸命努力した。彼女の崩壊に力をかした登場人物を非人間的にはしたくなかったのだ。

 

 

<出典>

小野正嗣(2021/2)、フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い仮面』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)



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