2020年10月1日木曜日

(2109)  谷崎潤一郎スペシャル(1-1) / 100分de名著


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譲治には、小鳥のようにのびのびしているその姿を見ることが喜びです。やがてナオミは調子に乗り、小生意気で、蓮っ葉な本質も見せていきます。こうした変化をつぶさに描写する点が前半の読みどころです

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第1回  5日放送/ 7日再放送

  タイトル: 『痴人の愛』- エロティシズムを凝視する

 

 

【テキストの項目】

1.    モダンボーイとしての谷崎

2.    浅草、カフェ、少女

3.    少女を自分好みに育てる

4.    屈折した西洋へのあこがれ

 

5.    コンプレックスを善用する?

6.    五感を駆使した鑑賞と表現

7.    ナオミ変奏曲

8.   「回心」の物語として

 

【展開】

1.    モダンボーイとしての谷崎

 明治末期から大正に入ると、政治が徐々に大衆化すると同時に、庶民の着るもの、食べるもの、ライフスタイルも西洋化していきます。庶民のモダンポーイ、モダンガールの誕生です。横浜や銀座をモダンボーイが洋装で闊歩していく。谷崎もそんなひとりとして、身長154センチの小柄な身をハイカラなスーツに包んでいました。彼は、西洋化が大衆レベルに浸透したときに青春を謳歌した世代であり、漱石たちひとつ上の世代が展開した、エリート層のエゴと苦悩という文学的テーマが頭打ちになりはじめたときに、作家としてのポジションを確立したのです。

 

2.    浅草、カフェ、少女

 『痴人の愛』は、河合譲治という男の独白から始まります。彼は、ちょっと品のない浅草のカフェでわずか15歳の身空で女給をしているナオミという少女を見そめます。譲治は28歳。まじめで女性経験の少ない、一見ごくふつうのサラーマンでしたが、彼がナオミを自分好みの女性に育てようと目論み、大森の洋館で一緒に暮らし出したがために、とりかえしのつかない底なしの地獄に堕落していくというのが、おおよそのストーリーです。

 

3.    少女を自分好みに育てる

 『痴人の愛』を、源氏物語の「若紫」の系譜と読めば、少女を育てる物語です。いっぽうで、元祖「ロリコン小説」という位置づけもされています。「ロリコン」はロリータ・コンプレックスの略で、1899年生まれのロシアの作家ウラジーミル・ナボコフが英語で書いた『ロリータ』という小説が語源になっています。

 年上の男が教育しようとした少女に翻弄され、主従関係が逆転する点もナボコフの作品と似ています。ただ発行年からすると、「ロリータ」より「痴人の愛」のほうが30年ほど早いのです。洋の東西で同じような構造の小説が書かれたことは面白い。そして、執拗に少女を凝視する目が描かれる点も、両作は似ています。

 

4.   屈折した西洋へのあこがれ

 私が、自分は野暮な人間であるにも拘わらず、趣味としてハイカラを好み、万事につけて西洋流を真似した …

 日本人のうちではとにかく西洋人くさいナオミを妻としたような訳です。それにもう一つは、たとい私に金があったとしたところで、男振りに就いての自信がない。何しろ背が五尺二寸という小男で、色が黒くて、歯並びが悪くて、あの堂々たる体格の西洋人を女房に持とうなどとは、身の程を知らな過ぎる。矢張日本人には日本人同士がよく、ナオミのようなのが一番自分の注文に篏まっているのだと、そう考えて結局私は満足していたのです。

 

以下は、後日かきます。

5.    コンプレックスを善用する?

6.    五感を駆使した鑑賞と表現

7.    ナオミ変奏曲

8.   「回心」の物語として

 

<出典>

島田雅彦(2020/10)、谷崎潤一郎スペシャル、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

 


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