2020年7月25日土曜日

(2040)  松本清張と推理小説 - 推理小説の世界を変えた作家 / あの頃日本人は輝いていた(11)



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清張は言う。
☆☆
創作ものには、創作もののよさがある通り、実話ものにはそれだけの面白さがあって読まれるので、必ずしも創作ものの衰退が実話ものを勃興させたとはいいきれない。むしろ、両方の面白さが補い合って読まれている
☆☆
(『実感的人生論』)

 「清張以後」という言葉がある。
 松本清張が発表した推理小説によってそれまでの推理小説の考え方が変わったというのだ。「清張以前」 の推理小説は江戸川乱歩の作品に登場する明智小五郎、横溝正史の金田一耕助、
コナン・ドイルのシャーロック・ホームズなど名探偵が現場に残されたわずかな遺留品、関係者の言動などから鋭い推理を働かせ、巧妙きわまる完全犯罪の謎をあざやかに解き明かすといったものだった。
 松本清張はこうした探偵小説と呼ぶ方がふさわしい推理小説のイメージを一変させた。犯罪を犯す者の動機を掘り卞げ、その背景にある 貧困、差別など社会の構造まで踏み込んだのである。

 松本清張が書く推理小説の魅力はどこにあるのか。清張自身次のように述べている。
 「私が推理小説を書きはじめたのは、自分ではこういう作品を読みたいという気持ちから、自給自足的な意味でためしに書いたというにほかならない。私は自分のこの試作品のなかで、物理的トリックを心理的な作業に置き換えること、特異な環境でなく、日常生活に設定を求めること、人物も特別な性格者でなく、われわれと同じような平凡人であること、描写も『背筋に氷を当てられたようなぞっとする恐怖』の類いではなく、誰もがロ常の生活から経験しそうな、また予感しそうなサスペンスを求めた。これを手っ取り早くいえば、探偵小説を『お化け屋敷』掛小屋からリアリズムの外に出したかったのである」

松本清張(19091992)
 福岡県生まれ。高等小学校卒業後、職を転々とした後、朝日新聞西部本社広告部員に。「或る『小倉日記』伝」で芥川賞受賞。「点と線」「ゼロの焦点」などで社会派推受理小説の新分野を開拓。幅広い読者層に受け入れられ推理小説のブームを巻き起こした。その後、歴史小説、古代史論、ノンフィクションの作品も数多く発表。映画化、テレビドラマ化される作品が多い。
 
<出典>
池井優、『あの頃日本人は輝いていた』(芙蓉書房出版)
 
写真は、上掲、



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