2020年3月8日日曜日

(1901)  アーサー・C・クラーク スペシャル(2-2) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K1042) 「家で死にたい」を叶える在宅医療、普及のカギを握る新職種「PA」とは(3) <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/03/k1042pa3.html
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☆☆
このSF小説は、「人類家畜小説」(実は地球は以前から宇宙の知性体によって監視されており、私たち人類は彼らの家畜だった)ではない。「きみたちを心からうらやましく思っている」と言って、カレランは去った
☆☆
 

第2回  9日放送/ 11日再放送
  タイトル: 人類にとって「進化」とは何か--『幼年期の終わり』
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 
【テキストの項目】

(1)  詩情に溢れた現代SFの最高傑作
(2)  イメージの源泉
(3)  進歩を放棄した故の平和
(4)  秘密を抱えたままの死
(5)  中編『守護天使』との違い
(6)  なぜ地球を統治するのか?
 
(7)  オーヴァーロードの悲哀
(8)  労働から解放された世界
(9)  カレラン、最後の演説
(10)オーヴァーマインドとシンギュラリティ
(11)「全」か「個」か
 
【展開】
(1)  詩情に溢れた現代SFの最高傑作
(2)  イメージの源泉
(3)  進歩を放棄した故の平和
(4)  秘密を抱えたままの死
(5)  中編『守護天使』との違い
(6)  なぜ地球を統治するのか?
 以上は、既に書きました。
 
(7)  オーヴァーロードの悲哀
 成層圏の孤独の高みから、カレランは不本意ながらもそのお守り役を任じられた世界とそこに暮らす人々を見下ろし、ほんの十数年先のこの世界の有様を思う。「これまで自分たちがどれほど幸福だったか、彼らが認識することはないだろう」。
 そして、この黄金時代がどれほど容赦のない速度で終焉へ向けて疾走しているのかを知るのは、やはりカレラン一人だった。好奇心は消え去ったけれど病気や貧困のなくなった「ユートピア」世界の実現。それを人類の「黄金期」と呼び、その黄金期がこれから終わると確信しているオーヴァーロードのカレラン。
 
(8)  労働から解放された世界
 第三部の冒頭で、クラークは「ニューアテネ」という興味深いコミュニティを登場させます。
 オーヴァーロードたちが地球にやってきてから、実に百年近くが経ちました。オーヴァーロードの出現によって「文化は死んで」「真に新しいと言えるものは何一つ生み出され」なくなったのですが、ごく一部の人はあえてコロニーを建設して移り住みました。二ュ―アテネに暮らすのは、「人類の独立性の一部――芸術という伝統を守っていこうと努力」を続け、地球人固有の心性を守ろうと考えている人々です。
 ニューアテネに住む子どもが奇妙な夢を見るようになり、変態(メタモルフォーゼ)を遂げ、、世界中の子どもたちに波及していきました。
 
(9)  カレラン、最後の演説
 カレランは説明します。きみたちは私たちがやってくる前、科学力に溺れて核兵器までつくり、自滅の道を辿ろうとしていた。 … 百年前、私たちはそれを阻止して君たちを救った。
 きみたちの精神も、いまのままではこれ以上発達することはない。しかし次の段階へ一足飛びに進む方法はある。 … その人類の可能性は、古くから伝わってきた神秘主義のなかにこそある。
 オーヴァーマインドという存在がいて、「物質の束縛からはとうの昔に解き放たれて」いて、「もう無数の種族の集合体となっているに違いない」。彼らの精神が集合して宇宙を総ている。
 オーヴァーマインドと一体化するプロセスが開始した。 … いまこれを聞いているきみたちがホモサピエンスの最後の世代なのだ。
 
(10)オーヴァーマインドとシンギュラリティ
 2045年ころに人類はシンギュラリティ(技術的特異点。AI(人工知能)が人間の知能を超える転換点のこと)を迎えるだろうと議論されているいまの時代に本作を読むと、まるでカレランはこれからシンギュラリティの到来を見守る運命を負った、近い将来のぼくたち自身のように感じられる。
 さて、メタモルフォーゼを遂げた新世代の子どもたちがオーヴァーマインドと一体化しようとしていたころ、もはや人類の見守りも終わり、カレランは宇宙へ去ってゆきます。最後はカレランの視点で、この物語は閉じます。
 
(11)「全」か「個」か
 本作で描かれた超越との一体化は本当に幸福と呼べるのか。 … おそらく本当の答は「全」か「個」のどちらかといつた極端なものではなく、中間にあるのだとぼく(=瀬名)は感じます。
 オーヴァーマインドと一体化するうつろな子どもたちより、悪魔の姿をしたオーヴァーロードのほうがよほど、“人間的”で、最後の人類たるべきぼくたちとわかりあえる種族だと感じてしまうのは、人間の限界でもあるのでしょうか。
 
<出典>
瀬名秀明(2020/3)、アーサー・C・クラーク スペシャル、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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