2020年3月7日土曜日

(1899)  アーサー・C・クラーク スペシャル(2-1) / 100分de名著

 
◆ 最新投稿情報
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(K1040) 「家で死にたい」を叶える在宅医療、普及のカギを握る新職種「PA」とは(2) <臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2020/03/k1040pa2.html
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無知、病気、貧困、恐怖はなくなり、誰もが満ち足りるユートピアが実現した。一方で「基礎科学研究に対する情熱」を失って科学が衰退し、創造芸術も終焉して、人々から心を動かす力は消えてゆきつつありました
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第2回  9日放送/ 11日再放送
  タイトル: 人類にとって「進化」とは何か--『幼年期の終わり』
 
【テキストの項目】

(1)  詩情に溢れた現代SFの最高傑作
(2)  イメージの源泉
(3)  進歩を放棄した故の平和
(4)  秘密を抱えたままの死
(5)  中編『守護天使』との違い
(6)  なぜ地球を統治するのか?
 
(7)  オーヴァーロードの悲哀
(8)  労働から解放された世界
(9)  カレラン、最後の演説
(10)オーヴァーマインドとシンギュラリティ
(11)「全」か「個」か
 
【展開】

(1)  詩情に溢れた現代SFの最高傑作
 本作は『幼年期の終わり』は、人類の“メタモルフォーゼ”、地球外文明の存在、ファーストコンタクト、超能力、群体知能といった多くのSFテーマを含んだ本格長編です。宇宙における人類のありようや未来を深く考えさせられる内容で、詩情に溢れ、神秘的かつ思弁的、哲学的であり、スケールの大きな感動的作品に仕上がっています。
 物語は、「地球とオーヴァーロードたち」「黄金期」「最後の世代」の三部で構成されています。
 国連ビルの上空には、“最高君主(オーヴァーロード)”の宇宙艦隊が浮かんでいます。率いているのは、カレラン総督なる異星人でした。
 
(2)  イメージの源泉
 いっさいの予兆もないまま、まるで地上に雨が降り注ぐように、宇宙の果てから巨大な宇宙船の群れがやってきたのだ。(中略)ありとあらゆる大地の空にきらめきを放ちながら無音で浮かぶ物体は、人類が数百年かけても到達しえない高度な科学を象徴していた。初めの六日間、それらは世界中の都市の上空にただ浮かんでいた。
 キリスト教には、圧倒的なヴィジョンを散文や詩で示す文化があります。「ノアの箱舟」のように。
 
(3)  進歩を放棄した故の平和
 カレラン総督は、圧倒的な知力と科学力を人類に見せつけます。出現して六日目、ラジオの全周波数をジャックし、世界に向けて完璧な演説をします。攻撃ミサイルは一瞬に消えました。圧倒的な力を見せつけられ、人類は無力感に駆られてしまいました。
 さらに彼らは奇跡を起こし、南アフリカの人種差別をやめさせ、動物虐待もなくなりました。人類の難しい問題は次々と解決されていってしまいました。オーヴァーロードによる“善”の支配のおかげで、地球はかつてなかった平穏な日々を手に入れた。一方で、人々の探求心や好奇心は次第に失われ、学問や文化がいっさい停滞してしまった。言葉を換えれば、、人類は平和と引き換えに、進歩することを止めてしまったのです。どちらが幸せなのでしょうか。
 
(4)  秘密を抱えたままの死
 カレランは姿を見せなかったが、五十年後には姿を現すと約束した。国連事務総長ストルムグレンは、その姿を盗み見したのですが、秘密を明かすことなく、死んでゆきました。
 「二つの種族が次に対面を果たすとき、オーヴァーロードたちはすでに人類の信頼と友情を勝ち得ているはずだ。人類は彼らの姿を見て衝撃を受けはするだろうが、築かれた信頼と友情がそのせいで無に帰すことはないだろう」
 
(5)  中編『守護天使』との違い
 「ついにこの日が来た!」ラジオは百の言語でそうささやいた。第二部冒頭の一文です。
 五十年間ニューヨークの上空に浮かび続けていた宇宙船が着陸し、カレランが現れた。その姿は悪魔だった。ここまでは、クラークが過去に書いた中編『守護天使』が元になっている。この先をクラークは描いています。
 オーヴァーロードの高度な科学力がもたらされることにより、無知、病気、貧困、恐怖はなくなり、誰もが満ち足りるユートピアが実現した。一方で「基礎科学研究に対する情熱」を失って科学が衰退し、創造芸術も終焉して、人々から心を動かす力は消えてゆきつつありました。
 
(6)  なぜ地球を統治するのか?
 なぜ彼らは人類を統治してきたのでしょうか? カレランは自らが会見の場でその理由を明かします。「私たちがやってきたとき、君たちは自滅の一歩手前にいた――科学が軽率にも与えた力によって、自分たちを滅ぼそうとしていたのだ。私たちが介入していなければ、地球はいまごろ放射線にまみれた荒れ野と化していただろう。」
 
 以下は、後に書きます。
(7)  オーヴァーロードの悲哀
(8)  労働から解放された世界
(9)  カレラン、最後の演説
(10)オーヴァーマインドとシンギュラリティ
(11)「全」か「個」か
 
<出典>
瀬名秀明(2020/3)、アーサー・C・クラーク スペシャル、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)
 
添付は、
http://kisaraginotubo.blog.fc2.com/blog-entry-282.html?sp

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