2019年8月23日金曜日

(1703)  ロジェ・カイヨワ『戦争論』(4-1) / 100分de名著

 
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第4回  26日放送/ 28日再放送

  タイトル: 戦争への傾きとストッパー
 


【テキストの項目】

(1)  「絶対的戦争」の翌日に
(2)   核兵器 ―― 冷戦時代の幕開け
(3)  「凍結」と「解凍」―― 戦争の腐乱死体
(4)   グローバル市場化と戦争の変容
 
(5)  「テロとの戦争」
(6)   非対称的戦争と「セキュリティ国家」
(7)   人権と「ホモ・サケル」
(8)   ベローナを見よ
 

【展開】

(1)  「絶対的戦争」の翌日に

 惨状に呆然自失することや、ましてや「聖なるもの」の「恐るべき重み」にひれ伏すことがこの『戦争論』の目的ではありません。
 醒めて考え、理解しようとすることは、人間がそうとは知らず再び大災厄の濁流に呑み込まれる危険に堰を立てる最初の一歩です。起きたことを理解する、とはそういうことでしょう。ましてやゆ、人間はすでに「絶対的」な災厄を経験したのですから。
 

(2)   核兵器 ―― 冷戦時代の幕開け

 「核兵器という遠距離まで届く大量殺戮の道具は、抗争を全地球的規模に拡大する役を果たした。
 戦争が大量破壊的なものとなるのは、もう不可避なことであった。

 このような条件における戦争は、一連の奇襲戦となるであろう。ここにおいて無防備な大衆は、遠くから発射された強力なロケットにより全滅させられるだけである。人間はもはやほとんど戦闘員ではない。彼は、機械の外僕となり被害者となる。
 

(3)  「凍結」と「解凍」―― 戦争の腐乱死体

 「相互確証破壊」理論によれば、双方が相手の先制攻撃を受けても確実に同等の反撃ができるようにしておけば、全面破壊は相互的になり、それが先制攻撃を無効にします。
 核兵器が戦争を「不可能」にした「冷戦」は、戦争を「凍結」していました。この状態は約40年間続き、ソ連や東欧諸国が崩壊して、終わりました。
 冷戦という「凍結された戦争」が解凍されると、ユーゴ内戦のように、あちこちで形のない抗争が噴出しました。「戦争の腐乱死体」と呼ばれています。戦争はもはや以前の姿ではなく、形の崩れた異様なものになったのです。
 

(4)   グローバル市場化と戦争の変容

 冷戦終結後、余剰人員となりリストラされた元軍人などが、「経験を生かした」軍事会社を起業し、軍事行動や諜報活動までを民間企業が請け負うようになりました。軍事行動そのもののアウトソーシング(外部委託)です。
 そうした会社にとって戦争は、新たに切り開いた、あるいは開放された「市場」です。これはいわゆる「戦争の民営化」という事態を引き起こします。
 

 以下は、次回に書きます。
 
(5)  「テロとの戦争」
(6)   非対称的戦争と「セキュリティ国家」
(7)   人権と「ホモ・サケル」
(8)   ベローナを見よ
 

<出典>
西谷修(2019/8)、ロジェ・カイヨワ『戦争論』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)

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