2018年9月23日日曜日

(1367)  ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」(4-2)(解説 4) / 100分de名著

 
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第4回  24日放送/26日再放送
  タイトル: 謎は解かれるのか
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 

ここでは、6つのテーマを取り上げます。

A)   ヨハネの黙示録
B)   笑い
C)   ホルヘとボルヘス
D)   アンチミステリー
E)   フィクションが導く真実
F)   「薔薇の名前」という「名前」
 

【展開】

A)   ヨハネの黙示録

 この小説は7日間の物語だが、その二日目に「だがいまや機は熟した。七つのラッパの音が、君の耳には届かなかったのか?」という謎めいた言葉が最長老の修道士アリナルドから語られていました。
 ヨハネの黙示録では「七つの封印が解かれ、七つの喇叭が吹かれると地上に激しい不幸と混乱が起こるが、 … 最後の審判が行われて新しい天と地が出現する」と記されています。
 この小説では、七つの喇叭に順次関係づけられながら、人が死んでいきます。謎解きに重要な影響を及ぼすのだが、喇叭の話だけでもずいぶん複雑になってしまいます。省略してあらすじを紹介してきました。
 

B)   笑い

 「アリストテレスの喜劇論が流布すれは、ついには神のイメージが転覆を免れられず、人びとは笑いによって神への畏怖を忘れてしまう」とホルムは嘆きながら述べます。
 「アリストテレスが笑いを、いわば有徳の力として、認識的価値さえ備えうるものとみなしている」とウィリアムは解釈します。
 笑いは真実を明かすものであり、それ故危険なものである。このような笑いに関する考察が、この小説に随所にちりばめられています。アリストテレスの喜劇論を封じ込めようとすることが、一連の事件発生の原動力になってきました。
 笑い、笑いと真実との関係なども省略しながら、これまではあらすじを追ってきました。
 

C)   ホルヘとボルヘス

 エーコは二十代のころから、たえずボルヘス(アルゼンチンの詩人・小説家)に影響を受けてきたが、その作家にモデルを採ったホルヘが悪役として描かれています。「登場人物は物語によって動かされるものであって、最初から人物像が決まって生まれてくるものではない」と後にエーコは説明しました。
 悪役ホルヘの裏にはボルヘスがいて、ホルヘを通じてボルヘスの思想が語られている。物語の進行の中に、ボルヘスもたえず存在してきました。
 

D)   アンチミステリー

 次々に人が死に、殺人の謎を追いながら物語が進行する。そして最後に意外な真犯人が明かになる、というのが通常のミステリーだが、この小説では殺人だったのは一件だけだったと最後にわかります。暴くべき殺人犯がいなかったことになります。この物語は、ミステリーを装ったアンチミステリーともいえます。
 

E)   フィクションが導く真実

 「理論化できないことは物語らなければならない」という動機で、エーコは四十代になってから「薔薇の名前」という小説を書きました。「たとえ論理的に解明できないことがあったとしても、現実の世界とは異なるもう一つの現実のなかであれば、それを明晰に表すことができる」。論理的に真実を追い求めたエーコがたどり着いたのが、この小説だといえるでしょう。
 

F)   「薔薇の名前」という「名前」

 “That which we call a rose. By any other name would smell as sweet.”
『ロミオとジュリエット』の有名なセリフです。ここからタイトル『薔薇の名前』が生まれたそうです。
 「バラはどんな名前で呼ぼうともよい香りがする。どんな名前で呼んでもバラはバラ」
 


<出典>
和田忠彦(2018/9)、ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)


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