2018年4月6日金曜日

(1199)  長者窮子の譬え/ 『法華経』(2-1) / 100分de名著

 
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第2回  9日放送/11日再放送
  タイトル: 真の自己に目覚めよ
 


【項目】

(1) 四大声聞が比喩を語る

(2) 長者窮子の譬え

(3) 失われた自己を回復する

(4) 真の声聞

(5) 薬草の譬え

(6) 過去との結びつき

(7) 声聞のふりをする

(8) 女性のいない仏土国?

(9) 寿命の違いに込められた意味

(10) 誰が『法華経』を広めていくのか

(11) ストゥーパ信仰から経典重視へ

(12) 地上から虚空へ
 
 

【各論】

今回は、「(2)長者窮子の譬え」を取り上げ、
次回は、「(7)声聞のふりをする」と「(12) 地上から虚空へ」を取り上げる
 

長者窮子の譬え

===== あらすじ はじめ

 幼い頃に父親のもとから家出して、20数年もあちこちをさまよいながら貧しい暮らしをしてきた男がいました。父親は我が子を捜し求めていましたが、遂に見つからずある町にとどまって生活し、そこで長者となり、豊かな生活を送っていました。しかし、その長者の心の中から幼いころに別れた息子のことが離れることはありませんでした。
 
 息子は日々の生活の糧を得るためにあちこちをさまよい続けましたが、いつのまにか父である長者が暮らす町へと足が向いていました。息子はその町に入ると、長者の家で生活の糧を得ようと様子を見に行きました。ところが陰から長者の様子を窺うと、あまりにも高貴であり自分とはかけ離れた様子に驚いてしまい、『ここは私のような者がくるところではない、もう少し身近なところで稼ごう。ぐずぐずしていると無理やり捕まえられて強制的に働かされるかもしれない。』と逃げ出そうとします。
 
 長者はその男の姿を見ると、一目で家出した息子であることに気づきました。そして使いのものにその男を連れてくるように命じます。ところが男の方は、捕まえに来たと思い込み、驚きのあまり気絶してしまいました。その姿に落胆した長者は、その男を目を覚まさせて解き放ち、自由にさせるように命じました。男はホッとして、出て行きました。
 
 長者は息子のことが忘れられず、使いを遣わしてこう話させます。『いい仕事があるけどやらないか。仕事は便所掃除やゴミ掃除だが他より倍の手当てが出るぞ』この話に飛びついた男は、長者の家に住み込みで下働きをはじめます。 長者は自らも下働きに身をやつし、男と一緒に仕事をし、さまざまな話をしながらまじめに働き続けるように諭します。
 
 そしてしばらくして、男がきちんと仕事ができるようになると、長者のすべての財産を保管してある蔵の管理をまかせ出し入れも管理させるようにしました。男は長者の財産すべてを把握し、理解しましたがあくまでもそれは長者のものであり、自分には関係のないものだと思っています。
 
 さらに時がたち、長者は男の心から卑屈さもなくなり、自分の寿命も残り少ないことを知って、多くの人を招き、さらに男も呼んでこのように宣言します。『この子は実は私の子供です。20数年も前に離れ離れになっていましたが、この地で再会したのです。私の財産はすべてこの子のものなのです。』と!男は驚くと共に、長者が時間をかけて自らの心を整え、すべての財産を譲り渡そうと常に願っていてくれた事に気づき、心に大歓喜をおこして父親に感謝するのです。

===== あらすじ おわり
https://blogs.yahoo.co.jp/ikiru_yoridokoro/12234558.html
 
 

 釈迦は説法を理解できなかった弟子たちのために「三車火宅の譬え」を語った(前回紹介した)。弟子である四大声聞(須菩提・魔訶迦栴延・魔訶迦葉・大目犍連。いずれも「釈迦の十大弟子」に数えられる優れた弟子)が仏さまのお説法を聴き、『私たちはこのように受け止めさせていただきました』と答えたのがこの「長者窮子の譬え」である(仏教用語では『領解』)。
 
 「この長者が仏さまであり、息子が私たちです。仏さまは常に『みんな我が子』であり、仏の得た悟り、悟りを得る道はすべて皆のものである、と説かれていたにもかかわらず、私たちは今の状況に安穏としておりました。」とこの譬えを通して四大声聞は懺悔し、新たな精進を誓った。
 


 今回の指南役である植木雅俊氏によれば、

===== 引用はじめ
 これは、『法華経』の中でも最高の譬え話だと思います。 … 若い頃、私はこの話を読んで鬱病を乗り越えました。大学に入学して物理学を学び始めた頃、私は極度の自己嫌悪と自信喪失でうつ病で落ち込んでいました。 … この息子は自分を大変卑下していました。そういう息子に対して、父親は「お前は最高のものを持っているのだ、ここにある財産はすべてお前のものだ」ということを何とか分からせようとする。『法華経』はここまで人間を信じているのかとうれしくなったのです。それで私は自己嫌悪と鬱病を乗り越えることができたのです。
===== 引用おわり
 


動画があったので紹介する(725秒)。
https://www.sokanet.jp/movies/bukkyomonogatari/jakhcj00000084b9.html
ここから一画面を転載した。
 


出典
植木雅俊(2018/4)、『法華経』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)




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