2017年3月26日日曜日

(823)  「ほんとう」を問い続けて / 宮沢賢治スペシャル(4-2)

 
「学者アラムハラドの見た着物」「ポラーノの広場」「マリブロンと少女」「銀河鉄道の夜」
~ 『100分で名著』 227() 22:25 22:50 Eテレ 放映 ~

 
前回からの続き。今回は、内容。

(1)    人が何としてもさうしないではゐられないこと~「学者アラムハラドの見た着物( P.84

(2)    ほんとうの場所を探し求めて~「ポラーノの広場」( P.85

(3)    「まこと」を希求する芸術~「マリブロンと少女」( P.92 – P.93

(4)    未完の最高傑作が秘めているもの~「銀河鉄道の夜」( P.94

(5)    お戒壇巡り( P.98

(6)    永遠の未完成これ完成である( P.103

 
<各論>

(1)    人が何としてもさうしないではゐられないこと~「学者アラムハラドの見た着物( P.84

人はまことを求める。真理を求める。ほんたうの道を求めるのだ。人が追い求めないでゐられないことはちゃうど鳥の飛ばないでゐられないとおんなじだ。おまへたちはよくおぼえていなければならない。人は善を愛し道を求めないでゐられない。それが人の性質だ。

 
(2)    ほんとうの場所を探し求めて~「ポラーノの広場」( P.85

「ポラーノの広場」とは、昔話に語り継がれている幻の場所。野原のつめくさの花に書かれた番号を数えていくとたどり着けるとされている場所です。…ところが、番号を数えて行きついたのは、見栄っ張りの大人たちによる酒盛りの場でした。…「ぼくらはぼくらの手でこれからそれを拵(コサ)へようではないか。」と、…誓いを立てます。

 
(3)    「まこと」を希求する芸術~「マリブロンと少女」( P.92 - P.93

マリブロンは「いゝえ私はどこへも行きません。いつでもあなたが考へるそこに居ります。すべてまことのひかりのなかに、いっしょにすんでいっしょにすゝむ人人は、いつでもいっしょにゐるのです。」と言います。「まことのひかり」とは真理探究への道という意味でしょうか。

 
(4)    未完の最高傑作が秘めているもの~「銀河鉄道の夜」( P. 94

「ほんたう」を求め続けた賢治の集大成であり最高傑作、それが「銀河鉄道の夜」です。
 
===== あらすじ はじめ

一、 午后の授業

銀河系の仕組みについての授業。天の川について先生に質問されたジョバンニは、答えを知りつつ気もそぞろに答えることができない。…

二、 活版所

放課後、ジョバンニは活版所で活字拾いのアルバイトをする。仕事を終えたジョバンニは、パンと角砂糖を買って家へ急ぐ。…

三、 家、

家に帰ると牛乳が未だ配達されていない。病気の母親と、ラッコ漁に出たきり帰ってこない父のことやカムパネルラのことなどを話す。…

四、 ケンタウル祭の夜

牛乳屋(牧場)に行くが、出てきた老婆は要領を得ず、牛乳をもらえない。途中で、同級生のザネリたちに会い、からかわれる。…

五、 天気輪の柱

 天気輪の柱の丘でジョバンニは一人寂しく孤独を噛み締め、星空へ思いを馳せる。

六、 銀河ステーション

 突然、耳に「銀河ステーション」というアナウンスが響き、目の前が強い光に包まれ、気がつくと銀河鉄道に乗っている。見るとカムパネルラも乗っていた。

七、 北十字とプリオシン海岸

 北十字の前を通った後、白鳥の停車場で20分停車する。二人はその間にプリオシン海岸へ行き、クルミの化石を拾う。…

八、 鳥を捕る人

 気のいい鳥捕りが乗車してくる。彼は、鳥を捕まえて売る商売をしている。…

九、 ジョバンニの切符(以下、全体のおよそ半分にわたり章立てはない)

    アルビレオの観測所の近くで検札があり、ジョバンニは自分の切符だけが天上でもどこまででも行ける特別の切符であると知る。

    鷲の停車場のあたりで、鳥捕りが消え、青年と姉弟が現れる。彼らは、乗っていた客船が氷山に衝突して沈み、気がつくとここへ来ていたのだという。…

    (さそり)の火を眺めながら、かおる子は「やけて死んださそりの火」のエピソードを話しはじめ、ジョバンニたちは、黙ってそれを聞く。…

    天上と言われるサウザンクロス(南十字)で、大半の乗客たちは降りてゆき、ジョバンニとカムパネルラが残される。… カムパネルラは…「あすこにいるの僕のお母さんだよ」といい残し、いつの間にかいなくなってしまう。

    一人丘の上で目覚めたジョバンニは町へ向かう。今度は牧場で牛乳をもらい、川の方へ向かうと「こどもが水へ落ちた」と知る。…ジョバンニは胸がいっぱいになって、牛乳と父の知らせを持って母の元に帰る。

===== あらすじ はじめ
Wikipedia 『銀河鉄道の夜』より作成

 
(5)    お戒壇巡り( P.98

本堂の地下にある真っ暗な回廊を歩き、途中にある「極楽の錠前」に触ってまた地上に戻ってくるという長野県善光寺のお戒壇巡り。人は、まったく光のない暗闇を歩く中で、自分の心に押しとどめてきたことや、亡くなった人の声を聞いたりするといいます。ここに、現実の世界から母の胎内に回帰し、闇を経験することでまた新たに生まれる、という意味合いを見ることもできるでしょう。銀河鉄道に乗って宇宙の闇を旅し、カムパネルラは亡くなり、ジョバンニは再び生の世界に戻ってくる。「銀河鉄道の夜」は、闇を経験することで救われるとするこの「行」と共通の構造を持っているのです。

 
(6)    永遠の未完成これ完成である( P.103

 詩人は苦痛をも享楽する。
 永遠の未完成これ完成である

 理解を了へばわれらは斯る論をも捨つる
 畢竟ここには宮沢賢治1926年のその考えがあるのみである

(賢治の芸術に関する理論書「農民芸術概論綱要」の終わり)

 

引用:
山下聖美(2017/3)、『宮沢賢治スペシャル』、100de名著、NHKテキスト

 
 


4月は、
三木清『人生論ノート』 理想こそが現実を変える
講師:岸見一郎

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