2019年11月30日土曜日

(1803)  ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(1-2) / 100分de名著

 
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(K0944) 「面倒くさい」「別にいい」等の口癖増加 <認知症>
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☆☆
この小説は、この解説を見る限り、登場人物が比較的少なくありがたい。普通は、メモしながら読んでも、すぐ訳が分からなくなる。「カラマーゾフ的生命力」をもつ、父と3人の子、プラス1。その描き分けが興味深い
☆☆
 

第1回  2日放送/ 4日再放送
  タイトル: 過剰なる家族
 
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~0025
 


【テキストの項目】
(1)  「父殺し」のテーマの背景
(2)   秘められた壮大な構想
(3)   小説を織りなす四つの層
(4)   物語の時代背景
(5)  「著者より」に記された宣言
(6)   破天荒な父フョードル・カラマーゾフ
 
(7)   二人の母、三人の兄弟
(8)   場違いな会合

(9)   引用に示唆される父殺し
(10) 影の主人公スメルジャコフの誕生
(11)“金そのもの”に取りつかれた去勢派という存在
(12) 父親は誰か
 



【展開】
(1)  「父殺し」のテーマの背景
(2)   秘められた壮大な構想
(3)   小説を織りなす四つの層
(4)   物語の時代背景
(5)  「著者より」に記された宣言
(6)   破天荒な父フョードル・カラマーゾフ
 以上は、既に書きました。
 
(7)   二人の母、三人の兄弟
 長男ドミートリーは最初の妻アデライーダとの間に生まれた子、二度目の妻ソフィアとの間に生まれたのがイワンとアリョーシャでした。三兄弟はしばしば真・善・美の象徴と捉えられ、真はイワン、善はアリョーシャ、美はドミートリーだと解釈されます。おそらく、美と、真+善を分かとうという作者の狙いがあったのでしょう。
 
(8)   場違いな会合
 第1部第2編「場違いな会合」でカラマーゾフ家の面々が一堂に会します。一家が抱えるさまざまな難題に、ゾシマ長老を含めた会合でなんとか解決の糸口を見つけようとします。しかし、ドミートリーが登場するにおよんで会合はたちまち紛糾し、ついにはドタバタ劇と化してしまいます。
 
(9)   引用に示唆される父殺し
 フョードルはゾンマ長老に、イワンをカール・モール、ドミートリーをフランツ・モールと紹介します。二人は、シラーの『群盗』に登場する兄弟です。兄カールを陥れ、そのいいなづけを奪い取ろうとした邪な弟フランツの問い(「何がいちばん重い罪だ」)に牧師モーゼルは「一つは、父殺し、もう一つは、兄弟殺しです」と答えます。
 
(10) 影の主人公スメルジャコフの誕生
 カラマーゾフ下男のグリゴリーとマルファの間に六本指の子どもが生まれ、早世しました。赤ん坊を葬ったその日の夜中、リザヴェータ・スメルジャーシチャヤというあだ名で知られている神がかりの女が、たった今赤ん坊を産み落としたところを、グリゴリーは見ました。スメルシャコフの誕生です。作者は「焼きごて」という言葉を使いました。この言葉は「去勢」の意味も含み、スメルジャコフの運命に関りをもちはじめます。
 
(11)“金そのもの”に取りつかれた去勢派という存在
 去勢派と呼ばれる人々は、教会と性を否定し、神との純粋かつファナティク(狂信的)な一体化を求めるために、自らの性的器官を、文字通り「焼きごて」(ペチャーナ)やその他もろもろの方法で除去していました。やがて、その信仰は変質していき、性を封印することで神への純粋な信仰を守っていたものが、お金を集めること自体が神への進行の証となったのです。
 
(12) 父親は誰か
 スメルコフは神がかりの女リサセヴェータ・スメルジャーシチャヤにフョードルが産ませた子だという噂があると小説に書いてあるが、それ以上は書いていません。スメルジャコフは、名前は「パーヴェル」、父称は「フョードロヴィチ」、姓は「スメルジャコフ」です。彼の父がフョードルであることを意味する父称ですが、カラマーゾフの姓を名乗らせていません。スメルジャコフは、カラマーゾフ的な生の全体性から切り離された存在であることを意味しています。
 
<出典>
亀山郁夫(2019/12)、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)


2019年11月29日金曜日

(1802)  日本を発信(7)  [Mythbusters] Naomi Osaka Doesn’t Need to ‘Give Up’ U.S. Citizenship to Play for Japan

日本国籍を選択
 


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(K0943) 自殺・安楽死・セデーション・尊厳死・平穏死・自然死 / 平穏死(A-19)<臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/11/k0943a-19.html
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☆☆
大坂なおみ選手が日本国籍を選択する手続きを行った。「五輪で日本代表となるために米国籍を離脱」という報道は、誤解を招く。東京五輪日本代表としてプレーするのに米国籍離脱をする必要はない。他に理由がある
☆☆
 
1.   大坂なおみ選手が日本国籍を選択する手続きを行った

2.   「五輪で日本代表となるために米国籍を離脱」という報道があるが、誤解を招く
 
3.   東京五輪日本代表としてプレーするため、米国籍離脱は不要だ
3.1.  オリンピック憲章
3.2.  日本の法律
 
4.   米国籍を離脱しようとする他の考えられる理由
4.1.  日本は海外に住んでいる国民の所得に課税しない
4.2.  スポンサーにとって日本人であることの方が魅力的
 
5.   日本人になるなるということ
5.1.  面倒で時間と費用のかかるプロセスだ
5.2.  日本代表の日本人として大坂なおみが活躍することを期待する
 

【展開】

1.   大坂なおみ選手が日本国籍を選択する手続きを行った
 日米両国の国籍を持つ女子テニス界のスター、大坂なおみ選手が22歳の誕生日を前に日本国籍を選択する手続きを行った。

2.   「五輪で日本代表となるために米国籍を離脱」という報道があるが、誤解を招く
 米CNNは「東京五輪のために大坂なおみ日本国籍選択」と伝え、英BBCも「世界3位の大坂なおみが五輪で日本代表となるために米国籍を離脱」と報じた。
 それに対して、アール・キンモンス大正大学名誉教授は、自ら日本国籍を取得した経験をもとに、それらは誤解を招く報道であると主張する。


3.   東京五輪日本代表としてプレーするため、米国籍離脱は不要だ

3.1.  オリンピック憲章
 日本も従っているオリンピック憲章が「同時に2つ以上の国籍を持つ競技者は、どの国を代表するのか、自身で決めることができる」と規定している。

3.2.  日本の法律
 日本が正式には多重国籍状態を認めていないものの、実際には、人々が2つの国籍を持つことは可能である。一方の国籍を離脱しなかった場合の罰則もない。
 

4.   米国籍を離脱しようとする他の考えられる理由

4.1.  日本は海外に住んでいる国民の所得に課税しない
 日本はほとんどの国と同様に海外に住んでいる国民の所得には課税せず、日本国籍は課税面で米国より有利である。

4.2.  スポンサーにとって日本人であることの方が魅力的
 大坂のスポンサーの多くが日本企業であり、日系アメリカ人であるよりも日本人である方が魅力的である可能性が高い。
 

5.   日本人になるということ

5.1.  面倒で時間と費用のかかるプロセスだ
 特に、大坂選手のように高額所得者は、米国の所得税を回避するためではないこと、米政府が支払うべきだと考える税金のすべてを彼女が支払っていることを米政府に納得させなければならないなど、実に「面倒で時間と費用のかかるプロセスだ」

5.2.  日本代表の日本人として大坂なおみが活躍することを期待する
 東京五輪をはじめとするテニストーナメントにおいて、日本代表の日本人として大坂なおみが活躍することを期待している。
 

<出典>

  原文 英語と(関連記事の)日本語

[Mythbusters] Naomi Osaka Doesn’t Need to ‘Give Up’ U.S. Citizenship to Play for Japan
http://japan-forward.com/mythbusters-naomi-osaka-doesnt-need-to-give-up-u-s-citizenship-to-play-for-japan/
 
【神話を斬る】大坂なおみは東京五輪日本代表としてプレーするため、米国籍離脱は不要だ
http://japan-forward.com/japanese/大坂なおみは米国籍を離脱する必要はない/
 

  新聞記事

日本国籍を選択
【JAPAN Forward 日本を発信】 産経新聞(2019/11/25)
https://www.sankei.com/column/photos/191125/clm1911250007-p1.html
 

<前回>
(1771)  日本を発信(6)  Japan Braces for What Could Be Strongest Typhoon in 51 Years
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/10/1771-6-japan-braces-for-what-could-be.html

 
 

2019年11月28日木曜日

(1801)  ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(1-1) / 100分de名著

 
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(K0942)  GPS機能なしで位置情報を得る方法 /高齢者の見守り(3) <見守り>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/11/k0942-gps3.html
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☆☆
100de名著が小説のとき、テキストは、物語の筋の紹介と解説からなっている。解説とは何か。作品を四つのレベル「象徴層⇔歴史層⇔物語層⇔自伝層」において読み解くというのが、興味深い。著者の頭もこうなのか?
☆☆
 

第1回  2日放送/ 4日再放送
  タイトル: 過剰なる家族
 


【テキストの項目】
(1)  「父殺し」のテーマの背景
(2)   秘められた壮大な構想
(3)   小説を織りなす四つの層
(4)   物語の時代背景
(5)  「著者より」に記された宣言
(6)   破天荒な父フョードル・カラマーゾフ
 
(7)   二人の母、三人の兄弟
(8)   場違いな会合
(9)   引用に示唆される父殺し
(10) 影の主人公スメルジャコフの誕生
(11)“金そのもの”に取りつかれた去勢派という存在
(12) 父親は誰か
 



【展開】

(1)  「父殺し」のテーマの背景
 「父殺し」のテーマこそは、ドストエフスキーがひとりの人間として長く抱え込んできた自伝上の秘密と、同時代のロシアがはらんでいた問題とを一つに結ぶ最大の、そしてもっとも切実なテーマでした。
 ドストエフスキーは「二つの傷」を抱えていました。一つは、彼が17歳のとき父親を殺人によって失っているという事実。もう一つは、28歳のときにある反体制的な会合に加わった罪で逮捕され、死刑判決を受けたという経験です。
 
(2)   秘められた壮大な構想
 書かれたなかった第二の小説も含め、二つの小説でもって、自らの二つの「傷」の治癒というテーマを、歴史的なレベルへ押し上げるかたちで実現しようとしていたに違いないのです。その企ては、自らの人生上の問題の解決という側面を持つと同時に、十九世紀のロシア社会が直面した、もろもろの危機と矛盾の解決を目指すものでもありました。
 
(3)   小説を織りなす四つの層
 この小説がはらむ「複雑かつ巨大な構想」を深く理解するために、作品を四つのレベルにおいて読み解く方法を提示する。
 象徴層⇔歴史層⇔物語層⇔自伝層
 私たち一般読者は主としてこの「物語層」を中心に物語を追いかけていきます。「自伝層」は、作者が自分自身の人生から何をどのように切り取り、それをどう意味づけているかを明らかにする部分です。「歴史層」は、作者の歴史認識を示す部分で、小説全体と歴史的事実の関りを示唆する部分と定義することができるでしょう。「象徴層」は、それら三つの層におけるさまざまなドラマを支配する複数の原理の対立とその解決を考える層といえます。
 
(4)   物語の時代背景
 この小説に記される出来事は、1866年と推定します。1861年に農奴解放がありました。それ以降に書かれたドストエフスキーの小説のすべての中心的テーマの主役を金が担い始めます。1866年には、アレクサンドル二世の最初の暗殺未遂事件が起きました。政治テロルがクライマックスを迎える、先駆けとなった事件です。
 
(5)  「著者より」に記された宣言
 『カラマーゾフの兄弟』には「第二の小説」があると宣言されました。「全体として本質的な統一を保ちながら」二つの小説に分化しました。『カラマーゾフの兄弟』は、アレクセイ・カラマーゾフからすると、たんに「青春のひとコマ」にすぎません。
 
(6)   破天荒な父フョードル・カラマーゾフ
 フィヨードルは、極度のアルコール依存、お金への執着、女好きと、「分別のない非常識人」です。しかし、お金に対する欲望、性的な欲望、お酒を飲んで快楽を味わいたいという欲望、それらはすべて、生きているからこそ人間のうちに生まれてくる欲望です。ドストエフスキーはけっして貶めることなく、むしろ肯定的に描いています。
 
 以下は、後ほどかきます。
(7)   二人の母、三人の兄弟
(8)   場違いな会合
(9)   引用に示唆される父殺し
(10) 影の主人公スメルジャコフの誕生
(11)“金そのもの”に取りつかれた去勢派という存在
(12) 父親は誰か
 
<出典>
亀山郁夫(2019/12)、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)


2019年11月27日水曜日

(1800)  東アジア情勢と日本(藪中三十二、岡本行夫)

 
      最新投稿情報
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(K0941)  延命治療の非開始または中止 / 平穏死(A-18)<臨死期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/11/k0941-18.html
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☆☆
久しぶりに講演を聴きました。流石のスピーカー、新聞やテレビやインターネットで流れている情報と、質が違います。これを聞いて明日の私の行動が変わるわけではありませんが、折に触れて聞いておきたい話です
☆☆
 

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24回新現役宣言フォーラムin関西
テーマ「東アジア情勢と日本」
ゲスト:薮中三十二氏(元外務事務次官・立命館大学客員教授)
ホスト:岡本行夫新現役ネット理事長
開催日時: 20191126日(火)1815分~2015
開催場所: 綿業会館(大阪市)
主催: NPO法人新現役ネット
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1.   挨拶(岡本行夫氏)

1.1.  国際事象は、30年周期
1.2.  グローバリゼーション
1.3.  独裁者、独裁的手法
1.4.  IT革命による変化が極めて大きい
1.5.  地球温暖化
 
2.   講演(藪中三十二氏)

2.1.  大きな枠組みが崩れようとしている
2.2.  世界は今、危険状態に入っている
2.3.  中国
2.4.  北朝鮮
2.5.  韓国
2.6.  今後の日本
 
3.   対談(岡本氏の質問に藪中氏が答えて)
 
4.   質疑
 


<覚書>
 
1.   挨拶(岡本行夫氏)
 
1.1.  国際事象は、30年周期
 例えば、
  キューバ危機(1962)~ソ連崩壊(1991)
  欧州経済共同体(EEC)発足(1958)~ベルリンの壁崩壊(1989)
  中国 経済開放(1991)~経済成長率が5%以下に下落(2020)
  ロシア連邦建国(1991)~クリミア侵攻(2014)
 
1.2.  グローバリゼーション
  絶対貧困率を下げた 30% 11%
  格差が拡大した。10%の人が90%の富。下位50%の人の富が1%
  移民・難民問題が多発
 
1.3.  独裁者、独裁的手法
  ロシアのプーチン、中国の習近平、北朝鮮の金正恩は、今後長らく独裁者であり続けるだろう
  アメリカのトランプ大統領、トルコのエルドアン大統領などは、独裁的手法を取り続けるだろう
 
1.4.  IT革命による変化が極めて大きい
  トランプ大統領は、「グローバリゼーションでアメリカの労働者が職を失った」と言っているが、それはわずかだ。1740万人いた労働者は、10年間のグローバリゼーションで40万人が職を失った。その後、2000年から10年間で、500万人のアメリカ労働者が職を失った。その原因は、グローバリゼ―ションではなく、技術(IT、ロボットなど)だった
  2006年以降急速に進化したディープラーニングなどITの飛躍的進歩が、人の職場を奪っている
  ソマリアで19人のアメリカ兵が殺害されて以来、人がいなくてもできる戦争を志向している
  今日の「2TBUSB」の記憶容量は、1995年台の「1.45MBのフロッピーディスク」を富士山の高さまで積み上げたより大きい
  中国では2025年には26億台(1人当たり2台)の監視カメラを設置し、顔認証ですべての国民の動向を把握できるようにする。なお、全国民は、全国民に対してスパイになるよう、法律で定められている
  ツイートは似た人を集める機能がある。国民は、いくつかの集団に分断される
  SNSで得られる断片的な情報では、建設的な意見は構築されない
 
1.5.  地球温暖化
 すさまじい勢いで温暖化が進んでいる。
 北極、南極、氷河の氷が全部解けると海面は60m上昇し、多くの都市が水没する
 
 
2.   講演(藪中三十二氏)
 
2.1.  大きな枠組みが崩れようとしている
大きな枠組み
  アメリカ中心 国際協調
 トランプ大統領は、アメリカさえよければそれでよい。国際協調に関心がない
  自由貿易 WTO
 トランプ大統領は、2国間交渉しかしない。WTOも離脱する可能性がある
  同盟関係 NATO、日米同盟
 トランプ大統領は、経済問題のディールの材料としか考えていない。アメリカがプーチンや習近平と話をつけるから、軍事同盟がなくても大丈夫だと言う。「対アメリカ貿易黒字」「防衛費の少なさ」で、ドイツをやり玉に挙げている。今は、日本に矛先が向かっていないが、いつまでこれが続くか分からない。日本もドイツと同じ状況だ。ただ、嘉手納基地と横須賀基地とは、アメリカの世界戦略で非常に重要な役割を果たしている
 
2.2.  世界は今、危険状態に入っている
   リーダー不在の世界
   軍備拡大に入った世界
   混沌の世界 イラン/シリア
   香港/北朝鮮
 
2.3.  中国
 中国は、日本との関係を改善しようと舵を切った。中国は信用できないという人が大多数だが、「交渉に応じて取るべきものは取る」、今は日本にとって絶好のチャンスだ。
 「東シナ海を平和・協力・友好の海にするため前進することで一致した」(2018/10/26)という方向に向かっている。尖閣諸島の2008年合意は、残念ながら条約に至らなかったので反故にされた。今は、沖縄トラフについても中国は軟化している。
 韓国がGSOMIAで後退した。アメリカの圧力だという声があるが、中国の影響の方が大きい。韓国は、徴用工問題で中国と共闘して日本に対抗するつもりだったが、あてが外れた。中国は日本との交渉により「徴用工は、終わった問題だ」と認識しているからだ。因みに、アメリカの韓国への影響が大きいとされているが、これだけもたついたのは、韓国への影響力が大幅に弱まっているからだ。
 
2.4.  北朝鮮
 トランプ大統領は、金正恩とディールした。北朝鮮は「テストしない」と約束し、アメリカは「首を取りにいかない」と約束した。北朝鮮は、アメリカに到達する大陸間弾道弾を開発したが、大気圏再突入の技術は完成しておらず、テストをしない限りアメリカが核攻撃を受けない、だから「テストしなければアメリカには核の脅威がなく安全だ」という理屈だ。韓国や日本が核攻撃されることについては、関心がない。
 交渉の順番(①米朝会談をする、②平和条約を結ぶ、③朝鮮半島を非核化する)は北朝鮮の思惑通り。朝鮮半島の非核化については、何も詰めておらず、実現の見通しがたっていない。ここを変えていかないと非核化は進まない。
 
2.5.  韓国
 韓国がこだわり続けているのは、「日韓併合条約が不法だ」という主張で、ここは日本も譲れない。1965年に「もはや無効である」という玉虫色表現でいったん収めたが、韓国はそれをまた蒸し返しにきている。
 日本としては、譲れないものは譲れない。徴用工問題でも「現金化するな」と言い続けるしかない。
 
2.6.  今後の日本
 日本は、総じてアジアの国々から信頼され、期待されている
  日本力 文化・伝統・技術
  外向力
  防衛力
 アジアにおける共生で、日本が何をするかが問われている
 
 
3.   対談(岡本氏の質問に藪中氏が答えて)
2030年に、アジアは平和になっているか混乱しているか。世界情勢も含めて教えてください」
 これまで世界を支えてきたシステム(「アメリカ中心 国際協調」「自由貿易 WTO」「同盟関係 NATO、日米同盟」)が崩壊する。
 「共通価値観がない」まま「世界のリーダーが不在」になり「力むき出しの軍拡」が進む。
 北朝鮮はマネージブルになってる。決定的な影響をもつのが中国だ。「国内が大混乱」になっているか、「大国アメリカとうまく渡り合えている」か。
 日本が先頭に立って新しいシステムを構築できれば、平和なアジアになる可能性がある。
 

4.   質疑
 (略)